宿木雪樹

想像の切れ端。│KIRIN あの夏に乾杯 特別賞受賞│Freee 給付金をきっかけに Power to スモールビジネス賞受賞│会社の仕事→https://yadorigiya.com/ │個人の仕事/趣味文→http://calmwestwood.xsrv.jp/

この初夢を、正夢に。

「うっわ、なんも見えん」  蜜柑の繊維を取ることに集中していた視線を上げると、カズが伸ばした腕の向こう、少し開かれたカーテンの向こうが、ただの白になっていた。つ…

3週間前

秋晴れのラブレター #1年後の私へ

この時期は、これからやってくる冬をつよく感じるね。 いつ雪が降るんだろう、もう暖房つけていいのかな。 答えがない、自分の力でどうにもできないものに、どきどきする季…

1年前

次は乾杯する前に

ジュリという女性がいる。 眠そうに脱力した瞳と、めったに笑わない物憂げな唇がチャームポイントだ。ショートヘアからのぞく大振りなアクセサリと、たるんとした花柄のシ…

1年前

沈むふたり

朝ごはんを片付けたあと、鼻にしみついた食材と油、塩分の香りを覆うように、ファンデーションの甘い香りに沿う。乾燥した唇に、いつもより鮮やかな赤を描く。 鏡に映った…

1年前

給付金バースデー

31歳の誕生日、父からおもむろに封筒を渡されて「え、なになに」と笑った。「なんでしょう」と父は早口で答えた。 「封筒だったら……札束!?札束でしょ!」 冗談を飛ば…

1年前

かなしみの音色

ある秋雨の日、十七歳のわたしは音楽室でピアノを弾いていた。ドビュッシーの『夢』だ。窓に流れる何本もの雨の道を見ていたら、なぜだか指が思い出してしまったのだ。 重…

1年前