宿木雪樹

Netflixと漫画と音楽を酒で流し込めば、明日もお仕事頑張れる女です。ふだんは他者の声を文章にする仕事をしてますが、ときどき趣味で自分の声を書きます。【noteの実績】KIRIN あの夏に乾杯▷特別賞受賞、freee 給付金をきっかけに▷Power to スモールビジネス賞受賞

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「天空のマイルストーン」あらすじ

天空に浮かぶ島々に都市を築き、人が暮らす世界。かつて巨大な一つの島に建国されていた大国の地面が突如四方に割れ、多くの命が奪われた日があった。生き残った人々は、それを『厄災の日』と呼ぶ。時を経て、かつて大国の中心地だった小さな島は『セントラル』として復興に勤しむと共に、二度と同じ悲劇を繰り返さないための研究を重ねていた。そして厄災を止める手段を突き止めた国は、5名の若者にその使命を託す。彼らは厄災の日の痛みを自ら経験した共通点と、それぞれ異なる特殊な能力を持つ。国の命運と自分自

    • 「天空のマイルストーン」第3話

      ■■シーン1【警戒】 〇豪奢な彫刻を模した柱がいくつも並び、高く天井が広がる城の大広間。しかし、その隅々は薄汚れており、蜘蛛の巣が張っている。その中央の王座に座るのは、頬がややこけた疲れた顔の初老の男。服装は高級なものだが、どこかサイズが合っていない。その前にひざまずいた黒服の男が、ひざまずいたまま話し出す。 キシュウ「島の先端に着陸した飛行艇に乗っていた船員5名のうち2名を確保しました。飛行艇はセントラルの王家の紋章がついておりましたが、船内も確認したところ、目立った武器

      • 「天空のマイルストーン」第2話

        ■■シーン1【急襲】 〇夕暮れの中を飛ぶ飛行艇。コクピットにいるウルが艇内アナウンスのフォンを右側から引き出し、アナウンスのスイッチを押す。 ウル「そろそろ最初の島への着陸準備に入る。センターからの指示通り、準備をクルー全員進めろ」 〇ラウンジスペース。タイリは設置されたベッドに切り替わるシートで爆睡している。フィスはきらびやかな服をカバンに詰め込み、鼻歌を歌う。フッカはそのカバンの中身を興味深げに見ている。 フッカ「フィスかわいい服いっぱい持ってるね!」 フィス「そり

        • 「天空のマイルストーン」第1話

          ■■シーン1【厄災の日】■回想1:モノローグ 〇楕円形の窓に映る上空から見た街並が、突如爆発する。その窓に張り付く、幼子の手のひらのシルエット。 モノローグ「あの日、地面が割れた。まるで焼き菓子を雑に食べたときのように。街は砂煙を上げ、爆発し、ところどころで柱のように水が噴き出した。私はそれを飛行艇の窓から見下ろしていた。だから、あの日どれだけの悲鳴があったのかを、知らない。」 ■回想2:燃える街の中、上がる悲鳴 ひどく傷ついた少女をおぶり、足を引きずりながら阿鼻叫喚

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          Creepy Nuts ONE MAN TOUR「アンサンブル・プレイ」@ZeppSapporoの重たすぎるライブレポ

          【注意事項】【Intro】Zepp SapporoにCreepy Nutsが来る!正直言ってここ最近ほぼCreepy Nutsのことしか考えてなかった。 10月2日にキモイべ(※)ライブビューイングでシアターの大画面に映る彼らを履修済みであはったものの、同じ空間で、同じ酸素を吸い、彼らがそこで音楽を奏でて存在するとなると、もう話は全く別次元になる。今回私は、地元の友達と二人でこの伝説の夜に挑むことにした。 さて、コロナ禍どころか6年間ほどスタンディングライブ参戦がなかった私

          秋晴れのラブレター #1年後の私へ

          この時期は、これからやってくる冬をつよく感じるね。 いつ雪が降るんだろう、もう暖房つけていいのかな。 答えがない、自分の力でどうにもできないものに、どきどきする季節だね。 その怯えを抱いては、「このままでいいのかな」なんて漠然とした不安に襲われるよね。 でも、大丈夫だよ、それ毎年のことだから。 もし例年のごとく忙殺されているならば、まずは晴れた日に散歩してください。 紅葉がとてもきれいだし、空気がおいしいから。 ひとりで行くことをおすすめするよ。 あなたを大好きな旦那さ

          次は乾杯する前に

          ジュリという女性がいる。 眠そうに脱力した瞳と、めったに笑わない物憂げな唇がチャームポイントだ。ショートヘアからのぞく大振りなアクセサリと、たるんとした花柄のシャツなどの組み合わせが似合ってしまう。ずるいくらいにしゃれた女性だ。 ジュリと出会ったのは大学時代。身に余るウェットな大恋愛を抱えていたのがふたりの共通点だった。はじめから意気投合して、豊かな語彙力を盛大に無駄遣いした恋愛話を交わした。極めてロジカルでドライ。けれど情で非合理的な判断に至ることもある。強いようで、弱

          沈むふたり

          朝ごはんを片付けたあと、鼻にしみついた食材と油、塩分の香りを覆うように、ファンデーションの甘い香りに沿う。乾燥した唇に、いつもより鮮やかな赤を描く。 鏡に映ったわたしは、老いと若さのあいだで揺れている。少しだけ弾力を失った耳たぶに、十年前の誕生日にもらった小ぶりなパールのピアスをつけたら、目じりが熱くなった。 「できたか」 リビングのソファに座ったあなたは、じれったそうに足を組み替えて訊いてくる。もうスマートフォン上の薄い情報のチェックも終わり、特に何もやることがないよ

          給付金バースデー

          31歳の誕生日、父からおもむろに封筒を渡されて「え、なになに」と笑った。「なんでしょう」と父は早口で答えた。 「封筒だったら……札束!?札束でしょ!」 冗談を飛ばしながら中を見たら、本当に札束が入っていた。 「え」 「まぁ給付金だから、受け取って」 生まれてはじめて、父から誕生日プレゼントをもらった。 *** 私には父との思い出がほとんどない。そんなこと言ったら父は悲しむかもしれないが、一緒に過ごした時間が少なすぎたと思う。 父は元大学教授で、私の数百倍仕事人間だ

          かなしみの音色

          ある秋雨の日、十七歳のわたしは音楽室でピアノを弾いていた。ドビュッシーの『夢』だ。窓に流れる何本もの雨の道を見ていたら、なぜだか指が思い出してしまったのだ。 重いドアが荒々しく開かれる音におどろいて、演奏を止める。 「ミワコちゃん、たいへん、どうしよう」 倒れるような勢いで部屋に入ってきたヒマリの声は、声量こそ小さいけれど、鋭い痛みに満ちていた。 「クルミちゃんが、死んじゃった」 わたしの頭のなかではまだ『夢』が流れていて、その言葉をしっかりと受け止めるまで、粉の舞

          colors ―色と、ことば―

          色。 言葉や文章が好きな人にとっては、なんとも厄介で愛しい対象ではないでしょうか。それを表現するならばなんとも単純なものだけれど、さまざまな角度から切り取って、あらゆるエピソードと重ねて語ることができるのだから。 今回、そんな色をテーマとして、言葉を編む皆さまと、写真を撮る皆さまを、noteでつないだコラボレーション企画を行いました。 colorsとは企画「colors」は、KASUMIさんが旗揚げした札幌のフォトコミュニティから生まれました。私たちは主に外で撮影活動を

          青より青く。

          海を見たいなあ。 夏梅(なつめ)から深夜にメッセージが届いた。僕は急いでレンタカーを手配し、夏梅に予定を確認する。ここから海までどれくらいの距離があるのか、見当もつかないのに。 まだ日が昇りきらない薄明るい田舎道。青紫の住宅街は、ひっそりと静まり返っている。夏梅の家の近くまで迎えに行くと、すっぴんの夏梅がするりと音もなく助手席に座る。 「久しぶり、けんちゃん。元気?」 春ものの薄手のセーターと、ロングスカート。淡い色に包まれて輪郭すら溶けてしまいそうな夏梅は、にっこり

          生まれてきてくれてありがとう

          18歳の誕生日のとき、独り暮らしを始めたばかりの松戸の六畳ワンルームで、当時交際したてだった彼氏から言われたひとことだ。 閉めたカーテンの隙間から春の陽ざしがぴんと筋を通し、真新しくて安っぽい白の壁と天井に一筋の直角を描いていた。埃がきらきらと輝いている。 その光景を、わたしは胸、腹あたりに密着する他人の体温と呼吸を熱く感じながら、不思議そうに眺めていた。 「生まれてきてくれてありがとう」 18年間、日数にして6,570日間。わたしは自分が生まれたことに感謝をされたこ

          消えない泡 #あの夏に乾杯

          北の夏は短い。 盆だというのに吹き込む夜風は涼しく、虫の声も秋を感じさせる。リビングの窓の網戸には、大きな黒い虫が張り付いて離れない。蛍光灯の光に引き寄せられてか、夕飯のカスがこびりついた皿の山に用があってか。 「おい」 テレビの前の父親に目を向ける。むっくりとした猫背のラインに、グレーのTシャツがぴったり張り付いている。野球観戦後そのままのチャンネルで垂れ流されるCMでは、最近人気の俳優が爽やかな笑顔をこぼし、ビールを飲み干している。 「一杯、どうだ」 夕飯の時か