ケイ

短編小説、ショートストーリーを書いています。作品名には『二重カギカッコ』をつけています…

ケイ

短編小説、ショートストーリーを書いています。作品名には『二重カギカッコ』をつけています。受賞歴はプロフィールにまとめました。創作のほか、旅行記、SUBARU乗りのカーライフについても書きます。テーマは「本」と「旅」。アイコンはリト@葉っぱ切り絵さん。

マガジン

  • 短編小説、ショートショート

    短編小説、ショートショートはこちらにまとめています。創作作品はタイトルに『二重カギカッコ』をつけています。

  • 呑みながら書きました投稿まとめ

    3ヶ月に1回の「呑みながら書きました」通称呑み書きに投稿した記事をまとめます。自分の好きなものについて、飲みながら推敲せず一気に書いています。誤字少なめ、尻切れ多め。

  • 視聴感想

    ドラマ、映画、アニメなど映像作品の視聴感想をまとめます。

  • 商店街シリーズ

    駅に続く商店街を中心に、行き来の中でちょっとずつ関わりあう人たちの出来事をそれぞれの視点で書くショートストーリー集です。

  • 旅行記

    日本各地に出かけた記録をまとめていきます。

最近の記事

  • 固定された記事

『ヨーグルト』

「また!ない!」 大声を上げて、冷蔵庫の扉を力いっぱい閉めた。 ドカンと大きな音がして、私の身長より高い冷蔵庫が揺れた。 中からはガシャガシャンと激しく瓶が当たる音と、ゴロンと何かが転がる音がした。 力加減を間違えた。 一瞬焦って黙った私に、リビングから「食べた」と声が聞こえた。 反省の色もない、落ち着いた低い声。 わざとだ。 怒りが湧き上がりながらも、冷蔵庫をそっと開けて被害状況を確認する。 ドアポケットから飛び出したスパイスの小瓶がいくつか、ラップのかかったお皿に

    • 8月、日当たりについて考える

      7月も充分に夏感はあるのですが、やっぱり夏の盛りといえば8月。 せっかくだから夏らしいことをしよう、夏休みを楽しもう、とどこかワクワクする気持ちにもなります。 猛暑続きですが、幸いオフィスのデスクワークなので、日中はそれほど影響を受けません。 今まで、居住空間は日当たりこそ大事だと思っていました。 自室の窓の向かいに隣家の壁や窓が迫る光景は、薄暗くて窮屈なイメージでした。北向きの部屋は寒くて湿っているイメージです。 いまの職場は北向きです。 窓が大きいので、薄暗さは感じず

      • #創作大賞2024 #エッセイ部門 の応募作品として、能登の話を書きました。 景色も目的も会う人も変わってしまったけど、能登を巡る旅に出る準備は進めていきます。 https://note.com/ksw/n/nfef7d4a6d35b

        • 『ドングリ』

          コロン。コトン。コツン。 小さな爆弾のような形をした実が次々と落下する中で、僕はドングリを拾い集めていた。 なるべく重くて穴が空いていないもの。色、ツヤ、形にこだわって選別する。 特別大きくて存在感のあるドングリが目に飛び込んできた。表面についた土汚れを親指で軽くこすり取ると、ツヤのある濃い茶色が太陽を反射してキラッと光った。 家に帰ると父が庭のバケツに水を張って、僕が持ち帰った戦利品を投入した。沈んだドングリだけを拾い上げる。特別大きなヤツも残っていた。 植木鉢に

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        『ヨーグルト』

        • 8月、日当たりについて考える

        • #創作大賞2024 #エッセイ部門 の応募作品として、能登の話を書きました。 景色も目的も会う人も変わってしまったけど、能登を巡る旅に出る準備は進めていきます。 https://note.com/ksw/n/nfef7d4a6d35b

        • 『ドングリ』

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          よそ者の居心地

          近所に古民家レストランができました。 新しく造成された住宅地ではなく古くからの集落なので、昔からの蔵のある家や立派な門構えの家がところどころに点在している地域です。 いわゆる過疎地域でもあるのだけど、昨今の移住ブームでたまに県外からの移住者がやって来ることもあります。 長年ここで暮らす人たちの間では「こんなところに若い人がレストランを開いた」「なんでこんな何もない田舎に」と、珍しい話題として噂されています。 みんな気になりつつ、特に年配の方たちにとっては得体の知れない感じで

          よそ者の居心地

          7月に入って、やること目白押し

          7月になりました。 2024年も後半戦。 年度で見るとまだ前期の途中なので、ここでうっかり今年はまだまだと油断していると、9月過ぎてあっという間に「今年も残りあと…」ってなるのです。 気持ちの区切りと引きしめをしておきたいところです。 今月は、note創作大賞2024の締め切りが控えています。 エッセイ部門に応募する一本を書きました。まだざっくりとした状態なので、読み直すたびに気になる箇所だらけです。 このあと地図も追加して、締め切りまで文章のブラッシュアップを繰り返します

          7月に入って、やること目白押し

          東京四ツ谷のnote会場に来ています。

          東京四ツ谷のnote会場に来ています。

          これが私の応援歌 #呑みながら書きました

          バス待ちの一本。 最近あらゆるものが値上がって、マイラバーであるサッポロ黒ラベルよりも10円安い、サントリー生ビールを飲むことが増えてしまいました。 最初にこのストレートで思い切ったパッケージをみたときはキャンペーンとか一時的な何かかなとすら思っていた。それが今やビールコーナーの定番になって、CMもバンバン流れて、すっかり見慣れたよね。 さて、3ヶ月に1回の呑み書きです。 東京行きの高速バスに揺られながら、今回も私の好きなことについて書いていきます。 周囲に迷惑にならない

          これが私の応援歌 #呑みながら書きました

          もしものときの話

          私の身に突然なにかあったときの話。 成人したときからこの意志に変わりがないので身内には繰り返し伝えているのだけど、臓器提供はオールOKです。 年齢を重ねるごとに身体も劣化して機能低下しているので、需要があるかは定かではないですが、それでももし生きて使えるところがあればぜひぜひ活用してください。 「本人が生前から強く希望していました」って皆さんで口を揃えて言ってもらって大丈夫です。 このたび転職して、新しい保険証になって、改めて記入欄に書きました。 運転免許証は証人ふくめて意

          もしものときの話

          能登のルーツを巡る旅

          私のルーツの一つは、能登半島の先にある。 父方の祖母が能登出身だった。 兄弟の多い祖母は19歳で結婚して、育った家を離れて金沢で暮らし、父は金沢で生まれ育っている。 私が長年金沢の方言だと思ってた祖母の言葉は、今思えば能登由来の言葉だった。力強さや荒さも含めて心地良く、幼少期からたびたび触れていたから懐かしさも伴って今もすごく好きだ。 私の記憶にある初めての能登の思い出は唐突に始まった。 金沢の叔父、つまり父の弟にあたる人が、当時まだ幼かった私と妹を連れてある日急に車で出か

          能登のルーツを巡る旅

          6月に入っての所感、書くことをしよう

          どこまで話したっけ、ってnoteを振り返ってみました。 そうそう、今年に入って、このご時世だというのに安定した正社員の仕事を辞めてしまったんですよね。 年末に上司に退職の意志を伝えて、ほぼ同時に次の仕事の面談をして決めて、次があるからってことで引き止めからも逃れ、送別会や餞別も要らないからと、なる早なる伏せで退職したのでした。 お世話になったし仲良くしてもらったし、何より自分で自分の生計が立てられていたのは良かったので感謝しています。スバルを買えたのもおかげさまでした。 でも

          6月に入っての所感、書くことをしよう

          コンテスト・文学賞 応募作品一覧

          ようこそ、ケイです。 主に1万字以下の短い小説を書いています。 作品を書いて公開するようになってから、noteなどで主催されるコンテスト、出版者などが公募する文学賞に応募しています。 数が増えてきたので、ここに一覧でまとめました。 応募作品一覧《記載例》・賞タイトル(媒体) 『作品名』 【受賞結果】 ※(媒体)がないものはnoteか公募、【受賞結果】がないものは落選または審査中です ・ショートショートコンテスト「家族」(SSG)『身寄り』【ベルモニー賞】 ・ヒューマンドラ

          コンテスト・文学賞 応募作品一覧

          オフィスカジュアルに彷徨う

          前職は制服だったし、そのさらに前職はラフ寄りのカジュアルだったので、いわゆるオフィスカジュアルにあんまり慣れていないです。 ジーンズがダメなのは分かります。前々前職くらいのときに多かったスカートはほとんど手放してしまったので、いま試着して鏡を見ても自分っていう感じがしなくなってしまいました。 ブラウスとパンツ?も組み合わせがいくら見ても自分に合うものが分からなくて迷います。 制服、楽だったなぁ。 男性はスーツがあるからいいなぁ。 女性のオフィスカジュアルってスーツだとちょっと

          オフィスカジュアルに彷徨う

          空いた日は手紙書き

          もともと筆不精なのと、最近ではすっかり手軽なLINEやショートメッセージなどで近状連絡をする習慣がついてしまったので、手で書く手紙がなかなか進みません。 ご年配の親族などとの連絡は今も変わらず手紙か電話が主流なので、空いた日にまとめて進めます。 写真の現像(これも膨大なデータから選ぶところからなので準備に時間がかかる)、写真の裏に日付とコメント(1枚1枚手書き)、手紙の下書き(iPad)、便箋に清書、封筒に宛名書き、手紙と写真を入れて封をして切手を貼って、投函。 ざっと書

          空いた日は手紙書き

          映画『悪は存在しない』の不穏

          現在上映中の映画『悪は存在しない』を観てきました。 正直に言うと、私にとっては大変難しい映画でした。 この映画に興味がある方は、ぜひ予告以上の内容を知らない状態で劇場に行って、まずはそれぞれ自分の感想を持って欲しいというのが一番です。 このnoteの中でもネタバレに当たる部分には触れないよう心がけます。 舞台が長野県の自然に囲まれた里山が舞台です。湧き水を汲み、野草を採り、薪を割り、野生動物が身近な生活に、都会からの計画が持ち込まれて変化が起こります。テーマが身近に感じられ

          映画『悪は存在しない』の不穏

          『縁側と猫』

          近くにいた母親と兄弟たちの温もりはかすかに記憶に残っている。 僕が物心ついたときには生まれたときの家族とはすでに離れ離れになっていて、毛の色が違う別の猫たちと一緒にねぐらで暮らしていた。 人間が誰も住まなくなった空き家は、僕たち猫が身を隠すのにちょうどいい。庭は草むらになっていて、行き来をしても外からは気付かれない。木造の扉や雨戸は朽ちて、あちこちに空いた隙間から出入りできる。 僕たちは気ままに軒下で雨宿りをして、南向きに張り出した縁側で日向ぼっこを楽しむ。 「あら、今日

          『縁側と猫』