『オムライス 600円』
その店に一歩足を踏み入れてすぐ、しまった、と思った。
薄暗くて狭い店内は大きさの揃わない机と椅子が不揃いに並び、それぞれ統一感のない柄のクロスがかけられている。
壁には古い映画のポスターやどこかの風景写真、あるいは有名アニメのイラストが無秩序に貼られていて、その合間を埋めるように色褪せたジグソーパズルがかけられていた。場違いな予感に足が止まった。
他に客がいる様子もない。
「いらっしゃいませ!」
人の気配を察したのか、店内から待ちかねたように元気の良い声がかけられて、私は逃れ