ショパン ワルツ第7番嬰ハ短調 楽曲分析
今回はショパンのワルツ第7番Op64‐2の楽曲分析をしていこうと思います。有名な子犬のワルツと共に出版されたこの作品は、このワルツはそこまで技巧的でなく、またメロディの出来栄えもよいので彼の作曲したワルツの中では人気の高いものの一つです。ではどのような構成をしているのか、早速見ていきましょう。
1 概要
作曲されたのは1846年~1847年にかけてとされており、ショパン晩年の作品です。第6番、第8番と共に一つにまとめられOp64として1847年に出版されました。この1847年という年は、当時交際相手で会ったジョルジュ・サンド(1804~1876)との関係が終焉を迎え、パリに戻った時期でもあります。
このOp64以降、ショパンの生前に出版されたのはチェロソナタト短調Op65のみだったので、結果的にこのOp64の3曲はショパンの生前に最後に出版されたピアノ独奏曲となりました。その後はショパンの作曲活動も低調となり、死の前年にはイギリスへ演奏旅行に出かけたりしましたが、死因となった肺結核に常に悩まされていました。この演奏旅行後は徐々に衰弱していき、1849年10月17日に39歳でその人生を閉じることになりました。
今回紹介するワルツ第7番はA-B-C-B-A-Bという構造をとっており、複合3部形式に近い形です。メロディには半音階が使われていますが、和声はショパンの作品の中ではシンプルになっており、とても明快です。
では、実際に楽譜を見ていきましょう。
2 構造
3/4拍子 Tempo giusto(正しいテンポで) 嬰ハ短調
A(0:10~)
giustoはもともと、「ちょうど」、「正しい」というイタリア語です。この作品はワルツでありながらところどころマズルカ風のリズムを組み込んでいます。主題部はAの5小節目でイ長調になったあと、すぐに嬰ハ短調に戻ります。するとまたすぐにホ長調へと転調し、嬰ト短調を経て嬰ハ短調へと戻ってきます。この部分は転調が多く、主調である嬰ハ短調があまりおもてに出てこないので、調性感が曖昧になっています。主旋律は半音階的な部分もありますが、左手の和音は単純で偶成和音があまり用いられていません。
この楽譜でよく目にするrinfという指示がありますが、これはrinforzandoという言葉の略です。意味はその音を強調してという意味です。これはイタリア語のrinforzareという言葉から来ています。
再びAのメロディが再現されます。後半の部分は変化していますが、特に特筆すべき点はありません。緑色のハイライト部分が反復進行風の和声和声進行になっているくらいでしょう。
B(1:06~)
BからはPiù mosso(より速く)となりテンポが少し速くなります。piùは英語でmoreに当たる言葉で、mossoはイタリア語のmuovere(動く)から来ています。直訳すればより動かしてとなります。この部分がこの作品における一番技巧的な部分です。もつれないように演奏しましょう。和声は非常にシンプルでショパンの作品の中でもかなり簡素な和声です。2回目はpp(ピアニッシモ)となり、音量を落として再現されます。 音量のコントロールに注意しましょう。
C(1:37~)
Cの部分では同主調変ニ長調となり、テンポもPiù lento(より遅く)になります。dolceの指示がありますので柔らかく演奏しましょう。メロディは装飾がほぼなく、とてもシンプルなものになっています。和声に関しては構成音の変位(楽譜の青い丸で囲った部分)が頻繁に出現しており半音階的です。
Cもメロディが繰り返されますが、メロディにおいては単純な繰り返しではなく少し変化しています。最後は音量を落としながら音を下っていき、rall.(だんだん遅く)して再びBが再現されます。
B(2:22~)
2回目のBは1回目と変わりありません。特に述べることは無いでしょう。最後にD.C. al fineとありますが、これは曲の冒頭に戻り、fineにたどり着いたら曲を終了するという意味です。なのでもう1度AとBを繰り返して終わる、ということになります。
3 終わりに
いかがでしたか?
ショパンの作品の中ではかなりシンプルな曲の構造をとっており、わかりやすい作品になっています。彼のワルツの中ではそこまで技巧的な作品ではないので、ショパンのワルツに挑戦してみたいという方にはおすすめしたい1曲です。
以前に子犬のワルツの楽曲分析も行っていますので、よければ合わせてご覧いただければ。
それでは、ご覧いただきありがとうございました。
よければ他の記事もご覧ください。
また作曲もしています。
合せてご覧いただけたら幸いです。
またスキ、コメント等非常に励みになりますので、よかったと思った方ぜひお願いいたします。
皆様の応援の力が励みになります。コンテンツの充実化に努めてまいりますのでよろしくお願いいたします。