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仕事のこと

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2019年7月の記事一覧

忘れられない、夏の失敗

忘れられない、夏の失敗

忘れられない、忘れてはいけない失敗があります。

私は福祉の専門学校を卒業して、小規模作業所の職員として雇用されました。当時、その作業所では障がいがある人と一緒に無農薬の野菜を作っていました。専門学校を卒業したばかりの私は誰よりも下っ端で、利用者の皆さんから農作業のイロハを教わっていました。

私がその作業所で正規職員としてお世話になるのと入れ替わりに、一人の女性利用者がその作業所を退所して一般企

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猛暑の中での仕事

猛暑の中での仕事

猛暑がやってきました。すでに暑さに負けている私です。

さて、私が経営する事業所では、障がいのある利用者の皆さんに日中活動の場を提供しています。そこでは多種多様のプログラムがあります。中には常に外で仕事をしなければいけないプログラムがあります。

そのプログラムを担当するのは、受注グループです。そのグループでは情報誌と大手運送会社のメール便の個配をしています。毎日、午前午後、それぞれ30分から1時

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「しない」という支援、そのための約束

「しない」という支援、そのための約束

障がいのある方の支援をしています。もう30年以上も経ってしまいました。何年続けていても、ついおろそかになってしまうことがあります。大事なことを忘れないためにここに書き留めます。

私たち支援者は、支援計画を作成し、支援計画に基づいて障がいのある利用者の支援をします。利用者の希望を聴き、それを書面にしてチームでぶれることなく支援をします。

支援計画は支援者間の共通認識だけでなく、利用者と支援者間の

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責任を取るとは…五感をはたらかせること

責任を取るとは…五感をはたらかせること

五感をはたらかせないと支援はできません。五感をはたらかせて、目に見えない状況を把握します。

グループホームは一人で勤務します。2階建てのホームに障がいのある人が6人生活をしています。一人で全体を把握するにも限界があります。それでも事故が起きてはいけないので常に五感を張り巡らせて緊張しています。

私はリビングで入居者とふざけていても緊張しています。台所でお皿を洗っている時は、目はリビングに向け、

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私を育ててくれた人

私を育ててくれた人

25年ほど前になります。まだ私が現場に出ていた頃の話です。

毎年、春から夏にかけて、養護学校の3年生が実習に来ます。その年の実習生は、ダウン症という障がいの他にいくつもの障がいがある男子生徒でした。

彼に発語はありません。一人で歩くこともできませんでした。食事やトイレをはじめとして、日常生活動作と呼ばれる行動はすべて介助が必要でした。そのような障がいを一般的には「重度」と言います。私はその彼と

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缶つぶし大会の思い出

缶つぶし大会の思い出

地域の小学校から福祉教育の一環として、福祉施設と交流したいのですが…、という依頼が来ることがあります。地域との結びつき、特に学校とは積極的にかかわりたいと思っているのでありがたいお話です。学校からは、子どもたちが企画した交流会に参加するのはどうでしょう、と提案があります。しかし、交流と言われても具体的に何をして良いのかわかりません。

障がいのある人たちの中には、場面が変わることが苦手な人がいます

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相手の関心に関心を持つ(メル友編)

相手の関心に関心を持つ(メル友編)

03月19日のnoteにメル友ができました、という記事を書きました。今でも定期便や事務連絡、不思議な連絡のメールをもらいます。

定期便は、毎朝6時の「おはよう」と、22時ごろの「おやすみなさい」のメールのやりとりです。周りからは「恋人同士か!」っと突っ込まれています。

事務連絡は、日中活動の持ち物の確認であったり、「明日、歯いしゃ、しことやすみ」などの日中活動に関係する連絡です。

不思議な連

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仕事の重みを再認識する日

仕事の重みを再認識する日

今日は年に一度のご家族向け事業説明会がありました。法人のサービスを利用してくださっている方々のご家族や代理人向けに事業報告や事業計画、決算報告、福祉制度の動向などをお話しました。

日本の障害福祉サービスは、障がいのある方のご家族の働きで開拓され発展してきました。高度経済成長期は税金が大量投入され、福祉施設がたくさんできました。しかし、高度経済成長の終焉とともに国は、障がいのある方は、まず家族やそ

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されたくない支援

されたくない支援

障がいのある方の支援場面において、支援者は常に利用者にとって最善であることを考えて支援をしています。しかし、反対にその最善を尽くそうという行為が人権侵害につながったり虐待になってしまうことがあります。その背景にはパターナリズム的な考え方が潜んでいます。

障がいのある方の支援をする者は「支援者」と呼ばれます。以前は「指導員」でした。さらにその前は「先生」でした。しかし、残念ながらいまだ指導者が抜け

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注意しない工夫とは

注意しない工夫とは

障がいのある方が学校や日中活動に行くためのサポートに通学通所支援事業というのがあります。必要な時間帯だけヘルパーが付き添ってくれる制度です。しかし、ヘルパー不足で十分に機能していません。また、サービス中にトラブルも多く、ヘルパーも困っていることがあります。

困りごとのひとつにバスの中ですぐにボタンを押してしまうというのがあります。

あるヘルパーが言っていました。
「座れるときは一緒に座って、ボ

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皆さんにいたわっていただいています。

皆さんにいたわっていただいています。

先日、活動中につい腰をかばうような仕草をしてしまいました。それ以来、利用者の皆さんがとても心配して気にかけてくれます。

 利用者「痛いの?」
 私「うん、ちょっとね」
 利用者「痛風?」
 私「ちがう、腰痛」
 利用者「病院は?」
 私「行ったよ」
 利用者「薬は?」
 私「飲んでる」
 利用者「(湿布は)貼ってる?」
 私「貼ってない」
 利用者「どうして?」
 私「かゆくなっちゃうから」
 

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謎の「パンツ」画

謎の「パンツ」画

昨日は、私が経営する社会福祉法人クローバーの利用者が描いてくれた絵画作品の特集でした。そのnoteとFBにいただいたコメントがとても嬉しかったので、今日はその返事を本文で書くことにします。

このnoteに仕事のことを書き始めたとき、Top画に使ったのが「パンツ」でした。

利用者の中には衣服にこだわりを持つ人がいます。気に入った服を毎日着たい、季節感よりも好きな服を重視したい(昨日もジャンバー着

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演出することが仕事かもしれない

演出することが仕事かもしれない

私が、Topに使っている画像について、「面白い!」という声をいただきました。ありがとうございます。私がTopに使っている画像は、私が経営する社会福祉法人クローバーの利用者が描いてくれた絵を、アプリを使ってTop画用に加工したものです。今日は利用者が描いてくれた絵をたっぷりお届けします。

使用している絵は描き方が2種類に分かれます。

一つは、作品展用に描いた絵です。これは比較的最近の作品で、画材

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あ〜恥ずかしい

あ〜恥ずかしい

長野県で福祉事業に携わっている方とお話をさせていただきました。「人材不足、人材不足と言っていても仕方がないから、10年、20年先を見て活動しています。」そんなことをおっしゃっていました。小中学高生を巻き込んだ事業を考えているとのことでした。

私ができてこなかったことは人材育成です。目先の支援に追われるばかりで長期的なプランが立てられませんでした。

しかし、まったく人材育成ができなかったわけでは

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