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現代ダークファンタジーバトル小説『不死の狩猟官』連載中[不定期更新] ──儚い命、あり…

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現代ダークファンタジーバトル小説『不死の狩猟官』連載中[不定期更新] ──儚い命、ありふれた絶望。

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  • 『不死の狩猟官』全話

    現代ダークファンタジーバトル小説『不死の狩猟官』第1話から最新話まで公開中[不定期更新]──儚い命、ありふれた絶望。

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不死の狩猟官 第1話「クソったれな人生」

あらすじ 面接官と思しき背広の初老の男性は机に肩肘をつき、目の前に座る黒スーツの青年にいかにも興味がないといったような目を向ける。 面接官「十八歳。高卒ねぇ……君、資格は持ってる?」 霧崎「特にないっす」 面接官「うーん。君も知ってると思うけど、数十年前に東京に不死者が現れてから景気は最悪だからねぇ」 霧崎「つまり、正社員にはなれないってことすか?」 面接官「残念だけど。今後の活躍をお祈りしてるよ」 霧崎「そうっすか……」 霧崎はプリン色の頭を下げて一礼すると、肩を落と

    • 不死の狩猟官 第32話「鼠は駆除しないといけないね」

      あらすじ 前回のエピソード 霧崎、二階堂、東雲、天満たちは新居にて互いに顔を合わせた後、レイに呼ばれ、東京本部第三強襲課執務室に集められていた。 四人は背すじを伸ばしながら、執務机の前に横一列に並ぶ。 レイは執務机の前のチェアに腰かけながら、霧崎の横から順にひとりひとりの顔を一瞥する。 レイ「君たちが京都の新人だね」 二階堂「はい。本日から第三強襲課に配属された十等狩猟官の二階堂 閃です!」 東雲「同じく本日から第三強襲課に配属された十等狩猟官の東雲 京です」 レイは執

      • 不死の狩猟官 第31話「ルームシェア」

        あらすじ 前回のエピソード 波乱の京都出張から東京に戻った霧崎は、休む間もないまま、東京港区の一画にそびえる高層タワーマンションの前に来ていた。 霧崎「これが社宅……俺の新居?」 まるでホテルみたいなマンションだった。 巨大な大理石の支柱に支えられ、ガラスのバルコニーが備え付けられた部屋がずらりと建ち並ぶ。 霧崎はそんなタワーマンションを見上げながら、レイに今朝言われたことを思い出す。 早朝。 東京本部第三強襲課執務室── 霧崎は京都出張から戻ったと伝えるために第三強

        • 不死の狩猟官 第30話「名は風魔 雪花」

          あらすじ 前回のエピソード 某日深夜── 霧崎とナギが京都に出張している間、国家不死対策局東京本部第三強襲課執務室の中では、ある密談がおこなわれていた。 レイは執務机の前のチェアに腰かけながら、クリアカップの上から突き立てられたストローからアイスコーヒーを啜り、目の前にボサッと突っ立つ白髪の中年男性を見上げる。 レイ「それで調査のほうはどうだったかな」 相良「レイが言ってた通りだ。どうやら社内に鼠が紛れ込んでる」 レイ「詳しく聞こうか」 相良「これを見ろ」 相良はそう言

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        不死の狩猟官 第1話「クソったれな人生」

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        • 『不死の狩猟官』全話
          33本

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          不死の狩猟官 第29話「死ぬのは怖い」

          あらすじ 前回のエピソード 激しい戦闘によってもくもくと立ちこめていた砂煙が晴れ、ようやく視界が広がると、二階堂・東雲ペアと霧崎・天満ペアが睨み合うように対峙するその中間地点に、片目に十字線を浮かばせた白髪の女子が銃を片手に静かに立っていた。 二階堂と東雲と霧崎は、その人物に見覚えがあるらしく、声を揃えて、こう言った。 二階堂「ナギ教官!」 東雲「やっぱりか」 霧崎「ナギ先輩!」 天満「ナギ……?」 天満だけはひとりキョトンとしていたが、隣の霧崎の様子を見て、どうやらそ

          不死の狩猟官 第29話「死ぬのは怖い」

          不死の狩猟官 第28話「白髪の十字眼」

          あらすじ 前回のエピソード 元四等狩猟官と名乗る天満の登場により、霧崎vs二階堂・東雲ペアによる戦闘はいっそう激化した。 古めかしい瓦屋根の平屋の前では、四人の影がすばやく入れかわり立ちかわり交錯し、玉砂利がガシャガシャと擦れる音がうるさく響く。 東雲「ちっ、あのおさげ髪の女、相当厄介だぞ!」 二階堂「分かってる。何よ、あの銃の使い方は!」 二階堂・東雲ペアは思いのほか苦戦を強いられていた。なぜなら、天満の戦闘方法があまりに異質だからだ。 通常、拳銃を使用する場合、対象

          不死の狩猟官 第28話「白髪の十字眼」

          不死の狩猟官 第27話「油断したら死ぬ」

          あらすじ 前回のエピソード 黒スーツの少年は、軒先に無惨に転がる男の死体を見下ろしながら、気だるそうに刀を鞘にしまう。 東雲「死んだか」 二階堂「それにしても、こんな人間そっくりの化物、初めて見た」 短い黒髪を結った白道着の女はそう言って、興味深げに死体を見下ろしながら、刀を鞘にしまう。 東雲は死体に背を向け、鞘に収めた刀を肩に掛け、古びた瓦屋根の建物へ歩み出す。 東雲「俺は宿舎に戻るぞ」 二階堂「さて、私も帰りま──」 二階堂もまた死体に背を向け、宿舎に戻ろうとし

          不死の狩猟官 第27話「油断したら死ぬ」

          不死の狩猟官 第26話「二階堂と東雲」

          あらすじ 前回のエピソード 霧崎はタコ焼を購入した後、京都支部の門の内側に戻り、タコ焼をつまみながらしばらくナギの帰りを待っていた。 しかし、ナギが帰ってくる様子はなく、タコ焼が乗っていた船皿も遂には空になってしまった。 霧崎は空になった船皿を持ちながら、広い庭園内をキョロキョロと見回す。 霧崎「どっかにゴミ箱ねーかな」 しかし、パッと見るかぎり、趣が感じられる風流な庭園にゴミ箱があるようには見えない。少なくとも、目に見える所にはないみたいだ。 霧崎は気だるげに頭をかく

          不死の狩猟官 第26話「二階堂と東雲」

          不死の狩猟官 第25話「たこ焼き」

          あらすじ 前回のエピソード 京都支部の門の先に許可なく立ち入ったら命の保証はできない。 そう聞かされた霧崎は門を抜けた先にて足を止め、引きつった表情をしながら振り向く。 ナギは涼しい表情をしながら、霧崎を見上げる。 ナギ「冗談」 霧崎「いやいや、笑えないっすよ……」 霧崎は苦笑いしながら、無口のショートカット女子を見下ろす。 ナギは無表情のまま門を抜け、霧崎の横に出たところで足を止めた。 ナギ「でも、霧崎君は特殊な体質だから、京都支部内ではあまりフラフラしないほうがい

          不死の狩猟官 第25話「たこ焼き」

          不死の狩猟官 第24話「京都」

          あらすじ 前回のエピソード 第三強襲課に訪れた一週間ばかりの平穏は過ぎ去り、またいつもの忙しい日々が今日から始まろうとしていた。 見渡すかぎりガラス張りの巨大な駅舎の中から、黒スーツ姿のナギと霧崎が姿を現す。 駅前広場に降り立った二人の視界にまず飛びこんだのは、赤と白を基調とした大きなランドタワー。 次に視界に飛びこんだのは、地図を手にした外国人観光客たち。和服を着ている外国人たちの姿もチラホラと見える。 霧崎は初めて目にする街の雰囲気に思わず感嘆の声をあげる。 霧崎「こ

          不死の狩猟官 第24話「京都」

          不死の狩猟官 第23話「フルスコア」

          あらすじ 前回のエピソード 翌朝、第三強襲課の執務室に黒スーツを着た二人の男女が呼ばれた。 ひとりは色素が薄い黒髪ショートカットの女子。 襟元までキュッと結ばれた黒ネクタイ、シワひとつないジャケット、よく磨かれた黒い革靴、こまやかな性格がよく表れた小柄な女子が背筋を伸ばしながら執務机の前に立っている。 もうひとりは眼帯をつけた白髪まじりの中年男性。顔に刻まれた古傷の数々、狩猟官としての古参ぶりが伺える厳しい男は入口付近の壁に寄りかかっている。 レイはチェアに腰をかけながら、

          不死の狩猟官 第23話「フルスコア」

          不死の狩猟官 第22話「これで敵に近づいた」

          あらすじ 前回のエピソード 霧崎が次に目が覚めた時、そこは自室のベッドの上だった。 黒スーツを着たままスマートフォンを握りしめながら寝落ちしていた格好だ。 部屋はうす暗い。窓から街路灯の光がうっすら覗きこんでいる。 霧崎「やっば。今日は午後から飲み会だっけ」 霧崎は急いでベッドの上からガバッと起き上がると、そのまま洗面台に向かい、緩めていたネクタイを上げ直し、慌てて家を飛び出す。 目的地周辺の麻布十番駅に着くまでにはそこまで時間は掛からなかった。 霧崎は改札を抜け、階

          不死の狩猟官 第22話「これで敵に近づいた」

          不死の狩猟官 第21話「反撃開始といこうか」

          あらすじ 前回のエピソード 狩猟官三名の訃報はすぐにレイの耳に届いた。 高層ビルがひしめく夜の港区の中でもひときわ高い高層ビルとなる国家不死対策局の窓からは明かりが煌々と漏れ出す。 まるで不夜城のように夜に輝く国家不死対策局の内部では、眼鏡をかけた黒スーツの若い男が慌ただしく息を切らしながら第三強襲課の執務室に向かっていた。 眼鏡の男は第三強襲課の執務室の前に着くと、レイの返事を待つより先に慌てて部屋に飛びこむ。 「し、失礼いたします。急報です。第三強襲課の狩猟官三名が

          不死の狩猟官 第21話「反撃開始といこうか」

          不死の狩猟官 第20話「焼肉だよ」

          あらすじ 前回のエピソード 午前中に用事を済ませた霧崎は、赤坂駅からやや離れた場末にある古めかしい木造アパートの一室に上がりこむ。 霧崎は帰宅すると、玄関の物置に自宅の鍵を置き、狭い六畳間の室内に向かう。 フローリングの床はうす汚れたカーペットで覆われ、最低限の家具と電化製品だけが並べられ、いかにも一人暮らしの男の部屋という感じだ。 霧崎はスーツ姿のままベッドの上にもたれこみ、ふぅとため息をつきながら白い天井を見上げる。 霧崎「平和だ。少し前まではこれが日常だったんだよな

          不死の狩猟官 第20話「焼肉だよ」

          不死の狩猟官 第19話「休息」

          あらすじ 前回のエピソード 魔都品川区奪還作戦が無事に終了した後、第三強襲課の各員には一週間の特別休暇が付与され、各々は思い思いに休暇を過ごしていた。 しかし、休日であるにも関わらず、プリン色の髪の若い男は黒スーツにて赤坂駅の構内に来ていた。 霧崎「壬生先輩が言ってたロッカーってのはどこだ」 平日早朝の赤坂駅には慌ただしく動き回る人々で溢れていた。大勢の人々がスマートフォンを手に持ち、早足に行き交う。時には観光客も訪れている。地図を手にした人たちが周りを見渡しながら自信

          不死の狩猟官 第19話「休息」

          不死の狩猟官 第18話「醤油派? ソース派?」

          あらすじ 前回のエピソード 第三強襲課の執務室から出た黒上はレイの背を追い、エレベータに乗りこむ。 エレベータの扉が閉まると、レイはおもむろにジャケットの内側からいかにも格式が高いフルメタルのブラックカードを取りだし、操作盤の前にかざす。 すると、ボタンを押していないにも関わらず、操作盤にB1と表示され、エレベータが動き出した。 黒上は思わず、おや、と目をみはる。 黒上「本当に地下があるなんて驚きました」 レイ「地下の存在は一等狩猟官にしか知らされていないからね。ところで

          不死の狩猟官 第18話「醤油派? ソース派?」