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不死の狩猟官 第21話「反撃開始といこうか」

あらすじ
前回のエピソード

狩猟官三名の訃報はすぐにレイの耳に届いた。
高層ビルがひしめく夜の港区の中でもひときわ高い高層ビルとなる国家不死対策局の窓からは明かりが煌々と漏れ出す。

国家不死対策局 夜景 Copyright © 2023 不死の狩猟官


まるで不夜城のように夜に輝く国家不死対策局の内部では、眼鏡をかけた黒スーツの若い男が慌ただしく息を切らしながら第三強襲課の執務室に向かっていた。
眼鏡の男は第三強襲課の執務室の前に着くと、レイの返事を待つより先に慌てて部屋に飛びこむ。

「し、失礼いたします。急報です。第三強襲課の狩猟官三名が殺害されました。被害者はキルスティン三等狩猟官、黒上四等狩猟官、霧崎十等狩猟官です。も、申し遅れました。私は事務課の尾上です」

レイは執務机の前のチェアに腰をかけながら冷静に事務員に視線を向ける。

レイ「どういうことかな。三課の皆は今日は飲み会のはずだよ」
尾上「は、はい。その飲み会おわりの帰路に襲撃された模様です」

事務員の男はレイに萎縮しながらそう答える。
レイは執務机の上で両手を組み、普段と変わらない落ち着いた口調で言葉を続ける。

レイ「犯人は」
尾上「それが不思議なことに、目撃情報も物的証拠もいっさい見つかっておらず……判明しているのは被害者三名は斬殺されたということだけです。それも的確に心臓もしくは首が斬り落とされていました」
レイ「なるほど。どうやら敵は対狩猟官に慣れているらしい」
尾上「対狩猟官……」

レイは執務机の上に置いてあったアイスコーヒー入りのクリアカップを手に取り、ストローに口をつける。

レイ「聞きたいことが三つあるんだ」
尾上「は、はい!」
レイ「一つ。ナギちゃんと相良君は現場にいたのかな」
尾上「音無 凪 二等狩猟官と相良 惣介 二等狩猟官は現場には居あわせておりませんでした」

レイは氷のような冷たい表情でストローからアイスコーヒーをすする。

レイ「二等狩猟官との交戦は避けたみたいだね」
尾上「……」
レイ「二つ。キルスティンちゃんは二本目の剣を抜いたのかな」
尾上「いえ、キルスティン・アルバーン三等狩猟官は剣を携行せずに外出しておりました」

若い男の事務員は背すじを伸ばしながら緊張した面持で答える。
レイは桜色の唇をストローから離し、アイスコーヒーが入ったクリアカップを執務机の上に置く。

レイ「三つ。不死殺しの刀は今どこに」
尾上「そ、それが……現場には残されておりませんでした」
レイ「そう。ご苦労様。報告はもういいよ」
尾上「承知しました。では」

若い男の事務員はそう言って、丁寧に一礼すると、恐るおそる事務室を後にした。



事務員がいなくなった後、執務室に静寂がただよう。
静か過ぎるがゆえに、時計の針の音がうるさい。
眩しい港区の夜景が見える窓辺を背に、レイは執務机の上で手を組みながら冷たい表情を浮かべる。

レイ「敵の狙いは霧崎君で間違いない。でも、不死者にしてはあまりに回りくどい。それに三課の情報を知り過ぎている」

レイはおもむろにチェアから腰を上げると、背後にそびえる大きな窓ガラスの前に立ち、不敵な笑みを浮かべながら夜景を遠望する。

レイ「やってくれたね。敵は内側にもいるらしい。でも、誰が敵であろうと、私の邪魔はさせないよ」

そう口にし終えた後、あまりに奇妙な事が起きた。
窓ガラスから見える景色は暗い夜だったはず。しかし、どういうことだろうか、いまは窓ガラスの先から赤みがかった夕陽が見えるではないか。
それだけではない。執務机の上に置かれていた飲みかけのアイスコーヒーが、まるで新品のように、クリアカップのふちまで並々と注がれている状態に戻っているではないか。
レイは執務机の前に向き直ると、引き出しから一丁の拳銃を取り出し、執務室の出口に向かってゆっくり歩を進める。

レイ「さて、それじゃあ、反撃開始といこうか」

第21話「反撃開始といこうか」完


第1章 魔都品川区奪還篇 完結 
第22話「これで敵に近づいた」


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