不死の狩猟官 第32話「鼠は駆除しないといけないね」

あらすじ
前回のエピソード

霧崎、二階堂、東雲、天満たちは新居にて互いに顔を合わせた後、レイに呼ばれ、東京本部第三強襲課執務室に集められていた。
四人は背すじを伸ばしながら、執務机の前に横一列に並ぶ。
レイは執務机の前のチェアに腰かけながら、霧崎の横から順にひとりひとりの顔を一瞥する。

レイ「君たちが京都の新人だね」
二階堂「はい。本日から第三強襲課に配属された十等狩猟官の二階堂 閃です!」
東雲「同じく本日から第三強襲課に配属された十等狩猟官の東雲 京です」

レイは執務机の上から、アイスコーヒーが注がれたクリアカップを取り上げると、ストローに口をつけながら、背広姿のおさげ髪の女を見上げた。
天満は反射的に姿勢を正し、慌てて口を開く。

天満「今日から第三強襲課に配属された四等狩猟官の天満 ゆらです。よろしくお願いします!」
レイ「聞いてるよ。元大阪支部第一防衛課だってね」
天満「はい。もう二年も前のことですが」
レイ「期待してるよ」

レイはそう言うと、執務机の上にぽんとクリアカップを置いた。
霧崎はやや眉をひそめながら、そっと手を上げる。

霧崎「あの〜、俺たちが今日ここに集められたのはただの顔合わせ、ってことはないっすよね?」
レイ「察しがいいね」

レイはそう言うと、執務机の引き出しから一枚の資料を取り出し、机の上に置いた。
資料にはある女の写真と経歴がまとめられている。
肩につかない程度に切り整えられたくせ毛まじりの黒髪が片目にかかり、マフラーが口元まで覆い、暗い印象がする女だ。
四人は執務机の上に置かれた資料をしばらく覗きこんだ後、セーラー服の二階堂が恐るおそる口を開いた。

二階堂「この方は誰なのでしょうか」
レイ「風魔 雪花。第二諜報課の一員だよ」
二階堂「第二諜報課の方と私たちにどういう関係があるのでしょうか?」
レイ「君たちには彼女の尾行を頼みたいんだ」

レイはそう言うと、チェアのひじ掛けに肘を立てかけ、四人を一瞥する。
東雲は眉をひそめながら、横から割りこむように口を開いた。

東雲「部署は違えど、同じ仲間なのに、どうして尾行する必要があるのでしょうか」
天満「仲間いうても、国家不死対策局は一枚岩やない。彼女は敵かもしれへんということや。少なくとも三課にとっては」
レイ「話が早くて助かるよ」
霧崎「でも、もし本当に敵だった場合はどうするんすか?」

霧崎はひとり緊張感がない面持をしながらそう言って、レイの青い瞳を見つめる。
一拍の間の後、レイは執務机の上にて両手を組み、いつものポーカーフェイスのまま、こう言った。

レイ「鼠は駆除しないといけないね」

レイの言葉に誰も返事ができなかった。
ちくたくと時計の針の音がよく聞こえる。
彼らは化物の始末なら幾度もしてきただろう。しかし、狩猟官の始末には慣れていないのだろう。
四人はしばらく押し黙ったのち、戸惑いと不安が混じった表情を見せながら静かに執務室を後にした。

第32話「鼠は駆除しないといけないね」完

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