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『不死の狩猟官』全話

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現代ダークファンタジーバトル小説『不死の狩猟官』第1話から最新話まで公開中[不定期更新]──儚い命、ありふれた絶望。
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不死の狩猟官 第1話「クソったれな人生」

あらすじ 面接官と思しき背広の初老の男性は机に肩肘をつき、目の前に座る黒スーツの青年にいかにも興味がないといったような目を向ける。 面接官「十八歳。高卒ねぇ……君、資格は持ってる?」 霧崎「特にないっす」 面接官「うーん。君も知ってると思うけど、数十年前に東京に不死者が現れてから景気は最悪だからねぇ」 霧崎「つまり、正社員にはなれないってことすか?」 面接官「残念だけど。今後の活躍をお祈りしてるよ」 霧崎「そうっすか……」 霧崎はプリン色の頭を下げて一礼すると、肩を落と

WEB小説『不死の狩猟官』あらすじ

あらすじ エピソード 第1話「クソったれな人生」 第2話「仲間を見捨てる奴はクズ」 第3話「一万円、貸してくんない?」 第4話「おい、そこのプリン頭」 第5話「そんなのってねーよ」 第6話「京都からアイツらが帰ってくる」 第7話「新人、死にますよ?」 第8話「本を奪えたら君たちの勝ち」 第9話「エンティティリスト」 第10話「作戦開始といこうか」 第11話「先輩、目を貸してください」 第12話「黒い魔女」 第13話「発動条件」 第14話「真価」 第15話「大事なもの」 第

不死の狩猟官 第2話「仲間を見捨てる奴はクズ」

あらすじ 前回のエピソード 翌朝、霧崎はレイに新調してもらった四つどめカフスボタンの黒スーツとガラス加工が施された光沢感が美しい革靴を身につけ、さっそく国家不死対策局に出勤していた。 ビル内の間取と部署については前日に説明を受けていたので、出社するにあたってさほど道に迷うことはなかった。 霧崎はエレベーターから降り、ひとつの部屋の扉の前に立つ。 霧崎「たしか、第三強襲課の執務室はここだよな」 少し緊張しながら木目調が美しい執務室の扉をノックする霧崎。 レイ「どうぞ」

不死の狩猟官 第3話「一万円、貸してくんない?」

あらすじ 前回のエピソード 霧崎が肉塊の不死者を討伐した次の日の朝、レイは国家不死対策局の大会議室に招聘されていた。 ガラス張りの見晴らしがよい大部屋の中央には、飾り細工が施された格調高い机とチェアが入口に向かってコの字になるように並ぶ。 その部屋の中央にて背筋を伸ばして立つ黒スーツ姿のレイ。周囲にはレイを取り囲むように明らかに位が高いと思われる黒スーツ姿の老輩たちがチェアに深々と腰かけている。 上官「レイ一等狩猟官。率直に聞こう」 レイ「は」 上官「第三強襲課に入局した

不死の狩猟官 第4話「おい、そこのプリン頭」

あらすじ 前回のエピソード 霧崎とキルスティンは後部座席の車窓から流れる荒廃とした風景を眺める。 霧崎「品川区も変わっちまいましたね」 キルスティン「なに、おじさんみたいなこと言ってんの」 霧崎「いや、昔テレビで見た品川区は綺麗なオフィス街だったんで」 キルスティン「あれから二十年か……月から原初の不死者がやって来たせいで」 霧崎「ブラッドムーン事件でしたっけ?」 キルスティン「うん」 霧崎は車窓から顔を離し、キルスティンの顔を覗く。 霧崎「その原初の不死者っていうの

不死の狩猟官 第5話「そんなのってねーよ」

あらすじ 前回のエピソード 霧崎「生きてたんすね……」 キルスティン「きりっちと目つき悪男のおかげでね」 黒上「誰が目つき悪男だ」 身動きできず短機関銃を構えたまま不機嫌そうに眉をひそめる黒上。 四ツ目の不死者は尾の先から血を流しながらキルスティンを睨む。 四ツ目の不死者「貴様、まだ生きていたか」 キルスティン「こんくらいで死んでちゃ三等狩猟官は務まらんよ」 剣を片手に四ツ目の不死者と対峙するキルスティン。 黒上「あの女、真正面から戦うつもりか……?」 キルスティ

不死の狩猟官 第6話「京都からアイツらが帰ってくる」

あらすじ 前回のエピソード 魔都品川区における救出作戦から一週間後。 黒上は第三強襲課の執務室の扉をノックする。 黒上「失礼します」 扉を開けると朝陽を背にチェアに腰かけながらアイスコーヒーを口にするレイがいた。 レイ「定刻ぴったりだね」 黒上「第二諜報課 四等狩猟官 黒上 改、ただいま参りました」 背筋を伸ばして敬礼する黒上。 レイは執務机の上にゆっくりアイスコーヒーを置く。 レイ「第二諜報課は生真面目な人が多いって聞くけど本当みたいだね」 黒上「第三強襲課の課

不死の狩猟官 第7話「新人、死にますよ?」

あらすじ 前回のエピソード 翌朝、羽田空港内に併設されたオシャレな喫茶店の窓際にてソファに腰かける黒スーツの男女の姿があった。 優しげな雰囲気が印象的な金髪センターパートの優男はおもむろにスーツの内側から一枚の写真を取りだし、写真にキスをする。 「マイハニー。パパ、東京に帰ってきたよ」 男の向かい側では、雪のように白い肌に色素が薄い黒髪ショートヘアがよく似あうボーイッシュ女子がソファの上で体育座りし、ハチミツがたっぷりかかったホットケーキをほおばりつつ静かに本を読む。

不死の狩猟官 第8話「本を奪えたら君たちの勝ち」

あらすじ 前回のエピソード 訓練二日目の朝。 霧崎と黒上は黒スーツ姿にて昨日と同じ廃工場の前で待っていると、じゃりりと砂利を踏み鳴らしながら一台の黒塗りの高級車が二人のもとにゆっくり向かってくる。 霧崎は鞘から刀を抜き、黒上はジャケットの内側から銃を取りだす。 霧崎「来たか」 黒上「油断するなよ」 車は二人の前で停まり、後部座席から黒スーツ姿のナギと壬生が降りる。 壬生は肩から大太刀を提げながら感心したようにうなずく。 壬生「気合い十分って感じだ」 ナギ「……」 隣

不死の狩猟官 第9話「エンティティリスト」

あらすじ 前回のエピソード 翌週。 無事に二週間の訓練を終えた霧崎は黒スーツ姿にてエレベーターから降り、第三強襲課が置かれている高層階に出る。 ガラス張りの高層ビルの内窓から見えるライトアップされた美しい港区の夜景を見下ろしながら廊下を歩く霧崎。 執務室と事務室を通り過ぎ、角部屋の前に着く。 霧崎「会議室ってのはここか」 扉に手をかけようとしたところ、後ろからちょんと背中に優しく指が当たる。 振り向くと、くりくりとした大きな翡翠色の目が顔の近くにあるではないか。 キル

不死の狩猟官 第10話「作戦開始といこうか」

あらすじ 前回のエピソード 翌朝、港区と魔都品川区の境界線上に大きく立ちはだかる巨大な壁の前にて、四台の黒塗りの高級車が一列になったままゆっくり停まる。 けた外れに大きい壁の前にはまるで城門のように重厚な鉄製の門がそびえる。 門の横には狩猟官と思しき武装した黒スーツの男女が背筋を伸ばして敬礼している。 最後列に位置する車の後部座席の窓が開く、窓から吹きこんだ風がクリーム色のポニーテールを揺らす。 レイ「作戦開始といこうか」 がらがらと大きな音を立てながらゆっくりと開く門

不死の狩猟官 第11話「先輩、目を貸してください」

あらすじ 前回のエピソード まるで瞬間移動でもしたかのように音もなく仮面の不死者の背後から姿を現すキルスティン。しゅたっと地面に着地するやいなや、仮面の不死者の身体が八つ裂きになる。 しかし、決して血は出ない。 仮面の不死者は黒い霧となって四散するも、すぐに黒いわだかまりが集まり、両目がくり抜かれた白い仮面が姿を現す。 仮面の不死者「おそろしく速い業だ」 キルスティン「やっぱり身体を斬ってもダメか」 立ちこめる黒い霧を観察するキルスティン。あることに気づく。霧はただ法則

不死の狩猟官 第12話「黒い魔女」

あらすじ 前回のエピソード 一方、その頃、魔都品川区の中央エリア── 無人の廃墟ビルが建ち並ぶゴーストタウンと化した魔都品川区を一望する超高層ビルの屋上。 レイは欄干の上に手を置きながら、ナギは肩から狙撃銃を提げながら、眼下に広がる荒廃とした風景を見下ろす。 レイ「戦況はどうかな?」 ナギ「はい。A班 黒上キルスティンペアはすでに交戦中。B班 霧崎壬生ペア、C班 相良は侵攻中です」 レイ「今のところ問題はなさそうみたいだね。一種のほうはどうかな?」 ナギ「周囲数十キロを見

不死の狩猟官 第13話「発動条件」

あらすじ 前回のエピソード 黒い魔女は床に転がった血だらけの男の生首の上に座りながら、迫りくる壬生に向けて片手をかざす。 黒い魔女「シャーク」 刹那、死体のように青白い手のひらから、デロデロに腐った三匹の鮫が大口を開けながら壬生に向かって勢いよく飛び出す。 壬生はすばやく三匹の鮫を斬り捨て、黒い魔女の懐に飛びこむ。 次の瞬間、大太刀が黒い魔女の心臓を貫く。 壬生「やったか?」 黒い魔女「言ったでしょ。君じゃアタシは殺せないって」 無造作に伸びた白銀の髪が妖しくうご