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愛の証


少しずつ、暖かくなってきました。

梅が咲き、桜が待ち遠しくなってきましたね。



前回、「そして、ゆりは咲く」では、我が家に伝わる
ご先祖さまの不思議なお話を書きました。


今回も別の、不思議なお話を、ご紹介したいと思います。



私をとても可愛がってくれた祖母には、お姉さんがいました。


しっかり者で、智恵さんといいました。

智恵さんには、とても優しいご主人がいました。



ご主人は、第二次世界大戦で戦地へ行き、命だけは助かって
帰国することはできましたが、ひどく体を悪くして、担架のようなものに
乗せられて帰ってきたそうです。


帰宅後も、療養生活を送ることになりました。



しかし、だんだん体が衰弱し、ついに入院することになりました。


ある日、付き添ってくれている智恵さんに

ご主人は優しい眼差しでこう言いました。



「智恵ちゃん。いつもありがとう。」

それからご主人は、智恵さんの顔を、しばらくじっと見つめていました。


そして…。


「智恵ちゃんの鼻に、何か…。 黒いものが、ついているね。」


「心配しなくていいよ。僕がとってあげるからね。」



それからしばらくして…。

ご主人は智恵さんを残して、旅立って行かれました。



当時智恵さんは、鼻の病気にかかっていました。

おそらく、副鼻腔炎だったと思われます。

当時は内視鏡手術もありませんので、
智恵さんは悩んでいました。


でもそのことを、余命いくばくもないご主人には
話してはいませんでした。



しかし、死の近いご主人の目には、
副鼻腔炎が黒い形となって、見えていたのでしょう。



ご主人が亡くなり…。

悲しみに打ちひしがれていた智恵さんでしたが、
気がついた時には、不思議なことに
鼻の症状は、すっかりよくなっていました。



その時、ご主人の優しい眼差しと、あの言葉を思い出したそうです。

「智恵ちゃん。いつもありがとう。」

「僕がとってあげるからね。」


愛する人が、健やかに生きてゆけるように…。


愛する人が、美しいままで過ごせるように…。



ご主人は旅立つ時
智恵さんの苦しみも一緒に、もって行ってくれたのかもしれません…。


それはまるで、ご主人の

深い愛の証だったかのように…。




今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。



この春は花粉が多いと聞きました。皆さま、ご自愛くださいませ。


               💗感謝💗 天海瑠璃








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