清春

物書きが好きな一般人

清春

物書きが好きな一般人

マガジン

  • フラない

    青春したいだけでフラグは立てたくない、短編まとめ

最近の記事

  • 固定された記事

はじめに

こちらに掲載されているのは、魔法のiらんど様で公開している「青春したいだけでフラグは立てたくない」という作品の短編のまとめです。本編とあわせて楽しんでいただけると幸いです。 【リメイク前のフラない】https://maho.jp/works/16743963567764273151 【リメイク後のフラない】https://maho.jp/works/15591043235068264962 また、フラない以外の短編も掲載していく予定です。

    • 雷雨も君となら平気(空×祐希+ナツキ)

      「うっわ、雨すご……」  海悠学園内の一階廊下。外ではそれはもう、滝のように激しい雨が降っていた。これから絶対にびしょ濡れになるであろう靴と靴下のことを思うと溜め息が出る。  今日は雨が降らない予報じゃなかったっけ。……まあ仕方ないか、当たらないこともある。私の場合折畳み傘がいつもカバンの中に入ってるから天気予報が外れようが当たろうがどっちでもいい訳だが。なんて考えながら一年の生徒玄関に歩を進める。  雨が強いけど弱まるのを待ってるのは時間が惜しい。それならさっさと帰るのが一

      • 「早く帰ってこいよ」(芳野×祐希)

        「は?帰省するってマジ?」 「うん、そう」  寮内でいつも通り、3階と4階の階段の踊り場で芳野と話しており私が土日の間帰省することを話すと芳野が素っ頓狂な声を上げて驚いた。  そんなに驚かれるとは思ってもみなかったため私も少し驚く。 「なんだ、寂しいのか?」  ニヤリと笑ってみせる。もちろん冗談のつもりだ。  だが芳野はハッとし、口を少し開いては閉じてを繰り返して​──── 「……そうだよって言ったら、早く帰ってきてくれんのか?」  ​────期待してるような

        • Happy birthday~7月14日~(ナツキ×祐希)

           まだ真夏日ではないが、外を歩けば汗がじんわりと滲む季節となった。 「ナツキさん……今日はなんだか暑いな」 「……うん」  そう静かに頷くナツキさんだが顔は涼しげで全く暑そうには見えない。だが、初めて出会った春の時より少し伸びた後ろ髪をヘアゴムでくくりあらわとなったうなじには汗が浮かんでいた。やはり暑いのだろう。  なぜこんな暑い日にわざわざエアコンの効いた寮を出ているのかというと、本日お誕生日様であるナツキさんの誕生日会のために準備を進めているのだが時雨さんが「あち

        • 固定された記事

        はじめに

        マガジン

        • フラない
          13本

        記事

          Happy birthday~6月3日~(時雨×祐希)

           学校から帰宅し、ローファーをすぐさま脱ぎスリッパに履き替えてロビーに出る。玄関とロビーをつなぐ扉のすぐ横には百均で売ってるホワイトボードがあり、黒い線で二つにばつんと区切られている。その片方に在室とプリントされたシールの貼られたマグネット、もう片方には外出とプリントされたシールの貼られたマグネットが隅っこにいる。藤村時雨のマグネットが在室枠に白いるのを確認して、私は自分の名前のマグネットを外出枠から在室枠へと移動させて足早に階段へと向かった。  たんたんと2階へと上がって

          Happy birthday~6月3日~(時雨×祐希)

          QUIKSILVER(芳野×祐希)

          「辻さんって穂積くんと付き合ってるの?」  私はこの手の話題が振られる度に、勢いよく首を横に振って芳野に変な噂がつかないよう一生懸命に弁明するようになった。  そんなわけないだろ、私と芳野じゃ釣り合うわけない。えー本当かなぁ、でもまあとりあえずそういうことにしておくね。……そのような会話。  正直、頭を抱えてしまう。  芳野の耳にも届いてる話題だが当の本人はいつもの猫を被ったキラキラした爽やか王子様、なんてオーラを振りまきながら曖昧に笑うだけ。私だけ頑張っているのがな

          QUIKSILVER(芳野×祐希)

          アポロ的恋慕(琳×祐希)

           祐希は、驚くほど俺のことを異性として見ていない。 「可愛い」「癒される」という言葉ばかり並べてて、でも祐希が笑っているから俺も同じくにっこり笑顔を浮かべて「ありがとう」と言うのだ。 「大好きだよ」と言っても「私も琳のこと好きだよ」と恐らく俺とは履き違えた意味で返される。 「愛してる」と言っても「愛してるよゲームっていうやつか?」なんて言うんだから、もう。  そういうところも好きだから俺は甘い。間違った捉え方をしててもそれを俺が肯定してしまうのだから祐希に本心が通じることはな

          アポロ的恋慕(琳×祐希)

          うそつきのヒメゴト(芳野×祐希)

          「ちょっと練習相手になってくれよ」  芳野がそう言い出すものだから、私は初めこそ何の? 演技の? そうか、でも私じゃ芳野の相手が務まらないと思うんだが、などと渋ったが「俺様が中途半端な演技する訳にはいかねえんだよ」と真面目な顔をするものだから気圧されてしまった。  仕方ないな、いいよ。と言えばそのまま芳野の部屋に手招きされ、部屋に入ればベッドに押し倒された。  何が起きているのか私が一番よくわかってない。呆けた頭を現実に引き戻すも混乱は収まらない。 「​よ、芳野!」 「あ?」

          うそつきのヒメゴト(芳野×祐希)

          深夜一時の命令(時雨×祐希)

           ふと目が覚めた。カーテンの閉じきった部屋とはいえ、部屋は真っ暗。スマホを開いて、現在の時刻を確認​───なんてことはせず、のっそり起き上がる。寝ぼけた目で、覚束無い足取りで部屋を出て向かうのは共用スペース。おそらく水を求めているのだろうが、半分意識がない状態で本能的に動いていた。壁にゴツゴツ肩をぶつけながらもなんとか共用スペースに辿り着くと、誰かに体を支えられた。そこでようやく意識が定まり、なぜか共用スペースに小さく明かりが灯っていることに気がつく。そして体を支えてくれた「

          深夜一時の命令(時雨×祐希)

          アンドロメダ(松江×祐希)

           ここ最近、どうも調子が悪い。  動悸がし、顔が火照りやすくなり、どうも脈が安定しない。……なぜか、祐希を前にすると。よくわからないまま日々を過ごす。  ある日の晩、祐希と外に出た。星が綺麗に見えると楽しそうに話している姿を見て「じゃあ少し外に出てみるか」と、つい誘ってしまった。上に何も羽織らずラフな格好のまま外に出ようとした祐希に自分のパーカーを被せて外に出ると、満天の星空が広がっていた。思わず魅入った。灯りが多い住宅街ですらこれだ。きっと住宅街では無い、何も無い所ならもっ

          アンドロメダ(松江×祐希)

          甘くてあたたかい、そんなもの。(ナツキ×祐希)

           二月十四日。本日はバレンタインデーだ。……だからと言って何かをする訳でもない。昨年の私なら。だが今年は陽乃と亜都に友チョコなるものを渡したいと思って、用意した。正直かなり緊張している。本命チョコを渡す女子はきっとこんな気持ちなんだろう。いや、私が渡すのは友チョコだが。  そして。ついにやってきた昼休み。時雨さんお手製のお弁当と、可愛らしいパッケージに一目惚れして買ったオランジェットをしっかり持って、陽乃と亜都との待ち合わせ場所に向かおうとした。  そう、向かおうとしたのだ。

          甘くてあたたかい、そんなもの。(ナツキ×祐希)

          れっつらくっきんぐ(芽吹・ナツキ・時雨)

           ……………………………………暑苦しい。  そんなスッキリとしなくて、拭いきれない不快感に侵食されていくことに耐え切れず目を覚ました。夏に近づいてる、というよりも最早夏だ。昼間は25度を軽々超えた気温で、学校が蒸し暑かったなぁと朧気に思い返す。  それから、ベッドの上で何度か寝返りを打ってベスポジを探す。見つかったので目を瞑る。しかし、どうしても寝付けない。冬場あんなに優しくしてくれた布団だというのに、夏場は随分と厳しい。俺とナイスな夜を明かそうよ、なんてアホみたいなことを考

          れっつらくっきんぐ(芽吹・ナツキ・時雨)

          静かに、こぼれる。(琳×祐希)

          私は、弥生からストレス発散を向けられていた。 それは弥栄学園……名前は違うが、海悠学園の中等部版の学校にいた頃から続いている。 初めてストレス発散を向けられたときは、辛かった。 普通に痛かったし、なんで私がこんな目に合うんだとも思った。 悲劇のヒロインぶっていた、と言ってもいいだろう。 私が先生に頼ろうとしてないのが悪いのに、ただされるがままになっていた。だから弥生たちは抵抗しない私にストレス発散をしていて――――そんな自分の立場に酔っていたのかどうなのかは今の私には知る由も

          静かに、こぼれる。(琳×祐希)

          甘味と甘美(芳野×祐希)

          新寮三階の一室。ここは松江の部屋。だが部屋の主である松江はコンビニに出かけている。 芳野はテーブルに広がる私が買ってきた饅頭やみたらし団子を頬張っていた。 あんこや和菓子、抹茶が大好物である芳野は和菓子関係には味にうるさい。だが口にあったようだ。私は胸を撫で下ろす。 「近くに和菓子専門の店ができたらくてな、興味があったから買ってきた。芳野の映画出演のお祝いも兼ねて」 「おいおい、そんないちいち祝ってたからどうすんだよ。俺様はこれからどんどん有名になるぞ?実はCMに出ること

          甘味と甘美(芳野×祐希)