アンドロメダ(松江×祐希)

 ここ最近、どうも調子が悪い。
 動悸がし、顔が火照りやすくなり、どうも脈が安定しない。……なぜか、祐希を前にすると。よくわからないまま日々を過ごす。
 ある日の晩、祐希と外に出た。星が綺麗に見えると楽しそうに話している姿を見て「じゃあ少し外に出てみるか」と、つい誘ってしまった。上に何も羽織らずラフな格好のまま外に出ようとした祐希に自分のパーカーを被せて外に出ると、満天の星空が広がっていた。思わず魅入った。灯りが多い住宅街ですらこれだ。きっと住宅街では無い、何も無い所ならもっと素晴らしい星々の輝きが見れただろう。
ふと、祐希の方を見てみると同じように感動しているようだ。感嘆がこもった声が零れている姿がたまらなく愛しかった。
 ……愛しい?
「一人じゃ外に出れなかった。ありがとうな、松江」
 夜空に浮かぶ三日月のように目を細めて微笑む祐希。心臓がどくんと弾む。それからは速いテンポで鼓動が刻まれ、顔に熱が集まるのを感じた。今が夜でよかった。もとより、祐希はもう夜空にまた視線を向けているためこちらの現状に気づいていないが。
 ああ、なるほど。愛しいのか。
 俺はいつの間にか友人である彼女にそれ以上の感情を抱いていたのか。
 すとん、と。自分のなかで腑に落ちた。決して俺の体調が悪いわけではなく、ただの恋の病とやらだったとわかれば納得がいく。
 ……なんて、烏滸がましい感情を抱いているんだ、俺は。自分に嫌気がさす。俺なんかに好かれても祐希は嬉しくない。友人でいてくれることにすら、疑問だと言うのに。
「……祐希、もう中に入ろう。藤村先輩たちが心配するぞ」
「それもそうだな」
 女性をこんな時間に外に出していることの罪悪感が芽生え、早く寮の中に戻ろうと促す。祐希はくるりと方向を回転させ、軽快な足取りで地面を蹴っていて、寮へと向かっていた。だが、なぜか。
「……松江?」
 気づけば祐希の手首を自分の手が、しっかりと握っていた。自分の手は大きいし、指も長い方ではあるが、やはり女性である祐希の手首は簡単に一周出来てしまった。
 なぜこんなことをしたのか自分でもよくわからない。祐希がぽかんとした顔をしていた。愛らしいな、とつい思ってしまった頭を切り替えて、つかんでしまった手首を離した。少しだけ、名残惜しい。
「……なんでもない。すまない、驚かせた。俺如きが引き留めるようなことをして申し訳ない」
「いや、別にいいんだが……松江、何か寂しそうな顔してるぞ」
 苦笑いで、茶化すように祐希は言った。あながち間違いじゃない気がしてしまうが口には出さず「そんなことない」とだけ呟き、祐希にまた早く中に入ろうと促した。
 今度は、祐希の手首を掴むことはしなかった。
 

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