草川信とゆりかごの歌

私が何歳になっても傑作だと思う童謡のひとつに、草川信(くさかわ・しん)作曲の『ゆりかごの歌』がある。

ゆりかごなんていう言葉は、今の若い世代にはほとんどなじみがないかもしれないが、この歌は赤ちゃんを慈しむ気持ちにあふれた名曲である。

そして、この歌の歌詞は、詩人の北原白秋が書いたものである。

【1】
ゆりかごの うたを
カナリヤが うたうよ
ねんねこ ねんねこ
ねんねこよ

【2】
ゆりかごの うえに
びわの みがゆれるよ
ねんねこ ねんねこ
ねんねこよ

【3】
ゆりかごの つなを
きねずみが ゆするよ
ねんねこ ねんねこ
ねんねこよ

【4】
ゆりかごの ゆめに
きいろいつきが かかるよ
ねんねこ ねんねこ
ねんねこよ

以上、4番まで歌詞があるのだが、音程とメロディの確認をしよう。

高音のドから始まる。

ドーレドラファ    ソーラソ
レーファレドファ    ラードラソ
ラーララーソラ     ドードレード
ラードラソファー 

草川信は、長野市出身の作曲家だが、ピアノだけでなくヴァイオリンの腕も素晴らしい。

明治、大正、昭和の3つの時代を生きたが、戦後まもなく55才で亡くなった。

私たちは、チューリップの歌やかたつむりの歌など、幼稚園や小学校低学年で歌う歌なら慣れ親しんでいるが、ゆりかごの歌は、めったに歌わないだろう。

この歌をほとんど聴かずに育ったママさんが、子育てで悩んでいるとき、この歌を聴いたなら、どんなにか癒されることかと思うのである。

イヤイヤ期の子どもを前に家事に追われ、言うことを聞かない子どもの前にイライラすることはあるかもしれないが、ふとこの歌を口ずさめば、かつての我が子のかわいい寝姿を思い出すことができる。

それだけではない。

子育てをしていなくとも、自分の幼い頃を思い出し、愛情いっぱいに育ててくれた親の顔を思い出すことだってできるのである。

歌詞の中に出てくるカナリヤや木ネズミ、びわの実は、赤ちゃんが眠るゆりかごの周りの風景に優しくマッチする。

世の中は、子どもの虐待が、今もどこかで起こっているかもしれないが、この歌がBGMで流れたなら改心するのでは?という気がする。

久しぶりにヴァイオリンで弾いてみて、そう感じた。



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