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小説『下界の神様奮闘記』

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神様の世界である「天界」から、人間の世界である「下界」へ落とされた「元」神様。元神様は、下界の年齢でいうと50歳くらいのおじさんである。慣れない下界で奮闘しつつ、下界へ落とされた… もっと読む
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『下界の神様奮闘記』第0話「あらすじ」

神様の世界である「天界」から、人間の世界である「下界」へ落とされた「元」神様。元神様は、下界の年齢でいうと50歳くらいのおじさんである。慣れない下界で奮闘しつつ、下界へ落とされた本当の理由へ迫っていく。

次話・第1話「プロローグ」はこちらから!

『下界の神様奮闘記』第1話「プロローグ」

前話・第0話「あらすじ」はこちらから!

俺は神様。あ、いや、「元」神様かな今は。

 今、「下界」にいます。下界っていうのは、人間界のことね。神様の世界である「天界」から落とされました。クビになったんです神様。意味分かんないでしょ? あるんですよ、神様の世界にもクビとか。

 只今、下界で途方に暮れています。下界の年齢でいったら50歳くらいだもん、俺。元神様だから下界のことはよく知ってる。得体の

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『下界の神様奮闘記』第2話「神様のお仕事」

前話・第1話「プロローグ」はこちらから!

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 神様には数多の種類が存在する。唯一神だとか、あるいは火の神だとか水の神だとか。とりわけ、日本という国には八百万の神がいるという。

 それとは別に、下界に最も近しい神が存在する。それが「区域担当神」だ。

 世界各国、それぞれの区域に割り振られた神様がいる。ここ日本でいえば

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『下界の神様奮闘記』第3話「天界での神様」

前話・第2話「神様のお仕事」はこちらから!

 俺は下界の年齢でいえば18歳で区域担当神になったから、勤続年数はかれこれ30年は超えている。いわばベテランの域に入っているといえるだろう。

 そして、国別でいえば日本に所属し、その中でも俺は九州のそこそこ大きい区域を任されている。俺より上の奴や、俺より年下でも、いわゆるエリートと呼ばれる奴などは、日本の中でも重要性の高い首都圏や都内を任されている。

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『下界の神様奮闘記』第4話「出会いと別れ」

前話・第3話「天界での神様」はこちらから!

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天界では下界のように、たとえば3月で辞める、4月から入社する、などといった通例はなく、退神や入神のタイミングは存在しない。
 つまり、毎日のように退神、入神が発生する。

今日も誰かが退神するようだ。あの神様は、確か神村さんだったっけ。
 神村さんとはあまり話したことがない

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『下界の神様奮闘記』第5話「新神教育奮闘記」

前話・第4話「出会いと別れ」はこちらから!

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「本日から数日間お世話になります、新神の神楽です。よろしくお願いします」

「あ、あぁ……。担当の神山だ。よろしく」

なんでよりによって俺なんだよ……。担当はいくらでもいるだろ……。あれかい? 神手不足かい? 下界でいうところの人手不足かい? いつから天界も神手不足になっ

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『下界の神様奮闘記』第6話「天国から地獄へ」

前話・第5話「新神教育奮闘記」はこちらから!

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 俺もこう見えて一応神様である。何が起きたのかくらい、一瞬で把握出来た。

「神山さん、私が……」

「うん、わかってる。……やってしまったんだな?」

 ただでさえ、下界で起きる事に対して、そこに神様が意図的に力を加えることは、天界では最もやってはいけないことの一つであ

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『下界の神様奮闘記』第7話「下界での出会い」

前話・第6話「天国から地獄へ」はこちらから!

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「大丈夫ですか?」

視界がはっきりしてきた。俺に声を掛けてくれているのは、若い人間の女性だ。よく今の状況の俺に話しかけたな。外のゴミ箱に半身突っ込んだ50過ぎのおっさんだぞ。それも若い女性が……。

「とりあえず出ましょう! 引っ張りますよ!」

「あ……、いや……、大

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『下界の神様奮闘記』第8話「優しさと矜持」

前話・第7話「下界での出会い」はこちらから!

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「自己紹介がまだでしたね。私は鳥居凪沙と申します。美大に通っていて、将来は多くの人に愛される絵をたくさん描く画家になりたいと思っています! そうですね……、みなさんの心のキャンバスに素敵な絵を描けるような画家といいますか。私の絵で一人でも多くの人を笑顔にしたい! あ、人だ

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『下界の神様奮闘記』第9話「働く神様」

前話・第8話「優しさと矜持」はこちらから!

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「はい! よろこんでぇぇぇっ!」

4番テーブルは生ジョッキ追加、2番テーブルはお皿がたまってきたからそろそろバッシングに行かないと。あ、5番テーブルは新しくお客さんが座ったからお冷とおしぼり出さないと……。

結局、元神様なんて経歴を言い出せるわけがなく、完全無職扱いのホ

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『下界の神様奮闘記』第10話「出掛ける神様①」

前話・第9話「働く神様」はこちらから!

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「今度の休日、気晴らしにどこか遊びに行きませんか? 絵を描くための道具も買いに行きたいので!」

鳥居家にお世話になって早一ヶ月。晴人くんを除いて良くしてくれるため、思いの外、下界での生活は悪くはなかった。それでも、いつまでも鳥居家にお世話になるわけにはいかないし、なにより早く

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『下界の神様奮闘記』第11話「出掛ける神様➁」

前話・第10話「出掛ける神様①」はこちらから!

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 良い子なのにどこか抜けていて、そして絶妙に空気の読めないお人好しな凪沙ちゃんの提案で、結局遅めのモーニングを取ってから再び繁華街へ向かった。

 入ったファミレスでの気まずさに最後まで気付いていなかったのは凪沙ちゃんだけだった。だいぶ天然なのかな? 

 繁華街

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『下界の神様奮闘記』第12話「出掛ける神様➂」

前話・第11話「出掛ける神様➁」はこちらから!

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「晴人もまだ学生だから頻繁には買えないので、たまに自分へのご褒美で買ってたり、誕生日やクリスマスなどに私や親が買ってあげたりしてるんです。物を大事にする子だから、長く綺麗に使ってくれるんですよ」

そうなのか。今まで接してきた印象からそんな雰囲気は微塵にも感じなかったけ

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『下界の神様奮闘記』第13話「出掛ける神様④」

前話・第12話「出掛ける神様➂」はこちらから!

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 俺は晴人くんに対して何か特別な感情があるわけでは無いし、何かしてあげることで貸しを作る気があるわけでもない。また、晴人くんが俺を邪険に扱ってくることを気にしているわけでもない。あ、ちょっとは気にしてるけどさ……。

 けれど、まぁ少しでも円滑な関係を構築しておくことで

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