『下界の神様奮闘記』第1話「プロローグ」

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俺は神様。あ、いや、「元」神様かな今は。


 今、「下界」にいます。下界っていうのは、人間界のことね。神様の世界である「天界」から落とされました。クビになったんです神様。意味分かんないでしょ? あるんですよ、神様の世界にもクビとか。


 只今、下界で途方に暮れています。下界の年齢でいったら50歳くらいだもん、俺。元神様だから下界のことはよく知ってる。得体のしれない50歳くらいのおじさんなんて、危険すぎて近寄ってくる人間なんかいないよね普通。


 元神様だって腹は減る。どうにかして食い繋げなければ。下界では労働することでお金を得て、食っていくんだっけ。元神様、働きます。しかし、見た目には草臥れた50代のおじさんなんて雇ってくれるところなんてあるのかしら? 


 住まいも探さなければ。天界にいた頃は下界の天候を操ってた俺も、下界に降りてしまえば雨風にさらされる存在だ。50代のおじさんなんて、すぐにくたばってしまうだろう。野良猫の方がよっぽどたくましいのではないか?


 下界のことはよく知ってるはずだが、いざ下界に降りてくると、何をすればよいのかさっぱり分からない。生活習慣病に詳しい医者の割と多くが、実は自ら生活習慣病を患っているように、知っていることと出来ることとはまた別の話なのだ。


 まずは「ここ」から出ないといけないな。ちょっと臭いし。しかし、脱力感からか身体が言うことを聞いてくれない。幻聴も聞こえてきた。女の人の声が聞こえる。疲れているのか……。


 さて、これからどうしようか。


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