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#推薦図書

『悲しみよ こんにちは』

『悲しみよ こんにちは』

短くも長い人生を歩んでいると、人との関わりの中で他者にこんな気持ちを抱くことがあります。

自分とは全然ちがうタイプだけれど妙に惹かれる

8割くらいは好きだけど、残りの2割はどうも受け入れられない

嫌いじゃないけど、一緒にいてなぜかもやもやする

そんな相手とは思いのほか仲良くなったり、対立したり、絶交してしまったりといろいろですが、こうした感情というのは、言い表すことが難しく、心にわだかまり

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世界とひきかえに愛した自分

世界とひきかえに愛した自分

半額シールのついた大トロのパックを手に取りながら、著者はふと絶望する。
「人生って、これでぜんぶなのか」

自分を取り巻く世界がとても小さなものに思えたり、反対に、とてつもなく大きく感じられたりすることがある。

たとえば一日の大半をベッドの上で過ごした時。重い腰を上げてやっとの思いでコンビニに行き、「袋いらないです」がその日初めての発話だった時。その自分の声が、お世辞にも人の声とは言えないほど情

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今日見つけたいい言葉

今日見つけたいい言葉

春服の準備もままならないのに、突然あたたかくなりました。

私は花粉に侵された目をこすりながら遅くに起き、窓を開けると、季節の変わり目を示す香り豊かな風が部屋に入ってきて、すっきりとした心持になりました。その匂いはどこか、ジンジャーエールを思わせるさわやかさがあって、のどが渇いていることを思い出しました。

パジャマのまま『古今和歌集』「仮名序」の冒頭のことをふと考えていて、もういちどじっくり読み

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『詩のこころを読む』

『詩のこころを読む』

詩そのものよりも、その詩についてうれしそうに熱をこめて語る著者の文章に、ひどく感動してしまいました。

一編の詩が「すばらしい」ということを、なんて果てしない想像力とうるおいのある言葉で表現してしまうのかしら。

いい詩には、ひとの心を解き放ってくれる力があります。いい詩はまた、生きとし生けるものへの、いとおしみの感情をやさしく誘いだしてもくれます。どこの国でも詩は、その国のことばの花々です。

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