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【詩集】自分探しの迷子

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迷わなければここにいなかった
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通り雨の中の私

通り雨の中の私

「申し訳ございません」
 もう何度同じ台詞を繰り返したかわからない。その言葉にもう最初の意味は残っていない。「謝って済むと思ってるのか」その台詞だってもう何度聞いたかわからない。聞いたとしても聞いていない。途中からはもう聞いた振りをしている。僕はここにいる振りをしながらもうここにはいないも同然なのだ。

 何が悪かった? もうあまりに昔のことで思い出せないな。確かなあやまりというのはなかったと思え

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創作寿司

創作寿司

 寿司職人になりたくて僕は日々修行の中にいた。ティッシュをシャリに見立てて握る。わさびに見立てた消し屑を入れて、ネタに見立てた付箋を乗っけて。「へいお待ち!」イカだよ。タコだよ。ハマチだよ。「へいお待ち!」僕は休む間もなく握り続ける。寿司職人は忙しいんだ。「へいお待ち!」寿司職人になるために、私は厳しい修行の中に立っていたのです。シャリに見立てたティッシュを握り、消し屑のわさびを程良く挟み付箋のネ

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