白山 律

詩と小説を書きます。

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  • 詩集

    今までに書いた詩をまとめています。

  • 短編小説

    これまでに書いた小説をまとめています。短めなのですぐに読めると思います。気軽に読んでみてください。

  • エッセイ

最近の記事

宇宙と、それに見合う価値について

君に命の輝きがありますように。 いつか、この星が壊れて無くなっても、 君はきっと無事で、まるで何もなかったかのように笑っているんだと思う。 ここから見えるあの小さな星は、今日もここであなたを見つめている。 明日も、きっと晴れる。 雨が降ったのは、どのくらい前だったかな。 今ここに届いている光は、何万年も前の光だと言うよ。 過去を思い出して、小雨。

    • 手に収まるほどの飛行機

      昼下がり、ふと、窓の外を眺めていると、丁度飛行機が飛んでいるのが見えた。 真っ青な空に、白く細く伸びる飛行機雲。まるで写真の一枚のようだと私は思った。 今日は水曜日だが授業を入れていないため、1日休みの日だった。大学生は人生の夏休みと言われるわけだ。 外で声がしたので顔だけ窓から出して上から眺めると、数人の学生が自転車でこのアパートの前を通り過ぎていった。 今日は昼から古本屋に行って面白そうな本を探そうと考えていたのだけれど、思ったより起きるのが遅くなってしまい、なん

      • 親愛なる君へ捧ぐ

        真っ暗な宇宙に、君がやってきて、呟く。 それは小さくて僕には聞こえなかったけど、それで良いのだと思う。 ありがとう、ここまできてくれて。 君が君でいてくれてありがとう、と僕は思う。 僕を忘れてくれてありがとう。 僕を探さないでくれてありがとう。 君ではない君と、いつまでも静かに見つめ合える。 だからこの宇宙の星はいつまでも眩しく綺麗に輝いて。 この流れ星もない閉鎖的な空間で。

        • 自然と人工の共存

          散歩をしていると、電信柱の電線に鳥が3羽、間隔に並んでいるのが見えた。 何だか可愛く思え、しばらく眺めていたのだが、あまりにも動かないので少し心配になってきた。 私はスマホを取り出し、写真を撮ってからその鳥を拡大して観察してみた。 …普通の鳥だが、どうも生き物の感じがしない。 自分の気のせいかもしれないし、どこにそう感じるのかと言われれば困ってしまうのだが…。 スマホから顔を上げ、鳥の方をまた見ると3羽のうち1羽がこちらを見つめていてギョッとした。 やるなら来い。

        宇宙と、それに見合う価値について

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        記事

          また繰り返す

          夜は誰にでも来る、ということを、すっかり忘れていた。 そして、それ以外の「平等」を私は知らないことも。 薄暗い路地裏のゴミ箱の上で、猫が欠伸をした。

          また繰り返す

          負の衝動

          溢れてくることがある。 それは、まるで傷口から流れ続ける血のように、 いつまでも止まることはないんじゃないかと、 そう思わせるに十分なほどで、 私は怖くなって、覆ってしまいたくなるけれど そんなことでは効果がないような 私は何もできないような気がして 立ち竦んでしまうのだ。 流れた血は、どこへ行く? 地面に染み込んで、何になる? 血の止まらない傷を抑えながら、 それでも歩こうとしていて。 その答えが見つかるまで、倒れなければ良いなと思いながら。

          負の衝動

          SNS疲れの人たちのための宿

          その日の仕事が終わり、自分の部屋に戻ってきたオオノは、大きく伸びをし、机の上のパソコンを開いた。 オオノは、ある宿泊施設を経営している。 デジタルデトックスの店。すなわち、スマホ、特にSNSに振り回されていると感じている人たちに対し、社会の喧騒から離れてリラックスしてもらう趣旨のものだ。 一応断っておくが、これは病院ではなく、あくまでサービス業である。本当に真剣に悩んでいるのであれば専門の病院に行って処方してもらったほうがよほど効果的だ。 ここでは様々な体験をし、楽し

          SNS疲れの人たちのための宿

          僕のたった一つの

          ”悲しみの海”を眺めている。 足元には白く優しい砂浜。 穏やかな波の音。 海の上には大きな満月が浮かんでいる。 僕は、この海の中に棲む生物を想像する。 小さな蟹たちの泡が、波に揉まれて消えていく。 あるいは、岩穴に潜む鱓。 あるいは、水中でひっそり漂う海月。 波が大きくなった気がする。 まるで僕を呼んでいるみたいだ。 やっと、ちゃんと向かい合う時が来たのかも知れない。 足を浸ける。冷たいけれど、不思議と心地良かった。 この海を、怖いと感じていたのはいつ

          僕のたった一つの

          主観的多様性

          カフェで、男性2人が話をしている。 男1:…というわけでさ、最近規制が強くなったじゃん。その、多様性とか言って女性を性的な文脈で使ってはならないとか。面倒臭くなったんだよね。俺もある程度考慮に入れて入れているはずなんだけど、どうしても批判する人が一定数いてさ。これは性的だとか何とか。どうしても批判が来るんだよな。 男2:ほぉ。 男1:それで俺、考えたわけ。過激に批判した人たちを集めて、そこで話し合いをしませんかと。広告を作ってくだされば、報酬も出しますと。 男2:面白

          主観的多様性

          眠った後に行く世界

          気が付くと私は、白い部屋にいた。あたりには何もない。 「お久しぶりです。またお会いしましたね」 私の目の先には、スーツを着た羊が立っていた。 「…お会いしたことありましたっけ?」 私が恐る恐る尋ねると、その羊は 「ええ。しかし覚えていないのは仕方のないことですからね」 と言った。 「すいません。そもそもここはどこなんですか?」 と聞くと、 「ここは、夢の中です」 と答えが返ってきた。 「夢の中?」 「はい。現実世界のあなたは今眠っていて、この『部屋』に

          眠った後に行く世界

          夜、とそれに付随する感性

          乾いたそれの成れの果てに 君は何を思う。 運命を恨むか。 それすらも辛かろう。 この荒野に吹く夜風は 今日も冷たく まるでわたしたちを笑っているかのようで。 血の流れるトカゲに目を向けた私は どうして彼を見捨てることができようか。 呻く声がまたひとつ消えた。 灯りはまだ遠く、 夜明けは訪れない。

          夜、とそれに付随する感性

          深い海の先に

          海の近くを歩いていると、「こっちこっち」と声が聞こえた。そこには白い髭を生やした老人がいて、ちょうど防波堤の向こうから顔を出す形になっている。その老人が立っている場所は海のはずだが、向こうはどうなっているのか。 「僕ですか?」 「君以外に誰がいるんだ」 その老人は怪訝な表情で言った。 「え?本当に?」 「そうだ。早く乗ってくれ」 戸惑っていると防波堤の上に登るよう促した。言われるがまま登ると、その老人は海の上に浮かぶ潜水艦らしき何かに乗っていた。彼が足元の取っ手を

          深い海の先に

          優しい日に

          今日もまた、私は一人死にました。 まるで木漏れ日の中、動物たちが安心して眠るように、 私は一人死んだのです。 誰一人として同じ人間はいないように、 全く同じ私は存在しないのです、 もちろん、あなたも。 今日と明日の私は確かに違っていて、 今日はいつの間にか昨日になっている。 優しく抱きしめることができたなら。

          優しい日に

          流れる時間

          子供たちの笑い声が聞こえる。 野原に敷いたブルーシートの上で、持ってきたチーズを一口齧ると そのブルーシートが、風で少し靡きました。 時間がゆっくり流れているような気がした私は そっと後ろを振り返って この時間が平等に流れていることを確認しておきたかった。 また優しい風が吹きました。 その風がいつどこで生まれたものか誰も知らない。気にも留めない。 それでも 風が吹くその事象そのものにも 確かに意味はあるのだと悟りました。 それだけで 私が今ここにいても

          流れる時間

          果て

          人間は愚かだと認識させるには 十分すぎるほどの出来事が この世の中には沢山あって それはある意味、人間が発展しすぎたからかもしれない、 などと思ってみたりする。 厳しい自然界で生きる動物や植物の方がよほど、 真っ当に生命としての役割を全うしているという矛盾。 進歩したために後退してしまった人間の矛盾。 これはもう、簡単には止められない流れになっていて、 いや、もう止めることはできないのだろうね。 残念ながら、と苦笑いして肩をすくめる私。 今、どこへ向かっ

          変わらない空

          ふと、スマホから目を外して、 青空に一筋の雲をみた時、 私は途方もない寂しさを感じてしまって きっとそれは、 そこに懐かしさを感じたからだと思いました ふと、夏の風に当たったあの人の横顔とか、 夏祭りの喧騒とか、夜風に振り向いた瞬間とか。 この空は、全てを記憶していて、私をじっと見ていたのかもしれない このまま忘れてしまっても良いのかもしれないけれど、でも寂しさはあって。 自分を構築しているものの存在を忘れてしまうなんてね。 今の自分を支えていて、今の自分

          変わらない空