「ふくし」から読み解く私/エッセイ/自己紹介

 「福祉系の学部です」と言うと、「偉いね」と返されることが多い。そして友人のお母さんとか習い事の先生とか、上の世代になると「私の介護よろしくね」という言葉がつく。そのたびに私は「介護を勉強しようと思ったわけじゃないんだよなあ」となんだかモヤモヤするのである。

 本題に戻ろう。どうして福祉学を専攻しているのか。それは私が福祉の限界を感じたからである。詳しく説明しよう。少し長くなるが、自己紹介がわりにお付き合い頂きたい。

中学時代|自称「超がんばり期」

 自分でいうのはあれだが、本当に中学の時の自分はよくやっていたなあと思う。週7日ある吹奏楽部の部長、そして生徒会役員。勉強もしっかりやっていたし、成績も学校内でトップ層だったと思う。

 大変ではあったが、職員室に鍵を借りに行けば「疲れてない?困ったことがあったらいつでも言ってね」と先生に言われ。部活に行けば「先輩!仕事手伝います」と後輩に言われ。生徒会に行けば「仕事やっとくから部活行っていいよ」と会長に言われ。周りからの支えがあり、なんとか3年間を終えることができた。頑張ることの大変さと同時に、そんな私を支えてくれることのありがたさを感じた。そして、なかなかに充実していた「部活も勉強もそれ以外も頑張る」という生活を続けたいとの思いから、吹奏楽の強豪校で偏差値も高かった高校に進学を決めた。

高校時代1|もしかして私、頑張れない人間?

 受験勉強を必死にやったおかげで、希望の高校に進学することができた。なんでも全部頑張る、そんな高校生活を想像していた。しかし、実際は何も頑張ることができなかった。理由は色々とあるので、また別の機会に書こうと思うが、とにかく頑張れなかったのだ。頑張りたい気持ちは強くあった。なのに体がどうしても動かない。

部活の朝練を休むようになった。英単語テストの勉強をしなくなった。数学の追試に引っかかるようになった。提出物を出さなくなった。学校行事を休むようになった。

頑張りたい。なのに全然頑張れない。

それがこんなにも苦しいことだと初めて知ったのだった。

頑張ることは大変だけど素晴らしいことで、自分は応援してくれる人がいたから頑張れた。だから、自分も頑張っている人をサポートできる人になりたい。

これまでは、そう思っていた。

だけど、頑張れない人にもサポートは必要じゃない?と思うようになった、高校一年生のこと。

高校時代2|周りを見れば

以上のような流れを経て、私はいわゆる「頑張れない人」といわれるようなニート、不登校の支援に関心を持つようになった。そこから関連して福祉学に興味を持つようになった。ただ、この時期もまだ何も頑張れない状況は続いていた。

高校二年の夏のことだ。私は吹奏楽部に所属していた。吹奏楽にも夏の大会が存在する。この大会には人数制限があり、一団体55名までしか出場できない。私の担当していた楽器は、二年生が9名いて、そのうち2人が出場できなかった。当然私は練習を怠っていたので、メンバーには選ばれなかった。もう一人の子は、コンクールに出ないメンバーのリーダーをやってくれていた。

そのころ、私の頑張りたいのに頑張れない辛さがピークを迎えていた。

弱みを見せるのが苦手だった私は、いつも「練習なんてテキトーにやればいいじゃん」みたいな感じを出していた。頑張りたい気持ちを見せないようにしていた。だが、もうそんなこと言ってられない。誰かに相談してしまいたい。

お願い。誰か助けて

でも、相談するなんて、周りに頼るなんてできなかった。だって、周りの人を見ればみんな「頑張っている人たち」なのだから。隣には連日の会議で疲れているリーダー。別室には、合奏がうまくいかなくて必死に練習している同期。

私は、リーダーの大変さも、そしてコンクールメンバーの大変さも痛いほどよく分かる。だからそんな人たちを前にして「頑張りたいのに頑張れなくて辛い」なんて、死んでも言えないと思った。私はメンバーを応援しなきゃいけない、リーダーをサポートしなきゃいけない。そのために自分の心に蓋をした。

今の「福祉」

ここで少し休憩して、皆さんに問いかけてみたいと思います。
福祉と聞いて何を思い浮かべますか?

きっと、介護、高齢者、障がい者なんていうのが最初に出てくるのではないでしょうか。あるいは、性的マイノリティ、児童虐待、不登校、いじめ、貧困なんかも出てくるかもしれません。

ありがとうございます。全部正解です。

ただ私は、この福祉のイメージに限界を感じたんです。

高校時代3|きっと私は対象外

それまで私が調べてきた福祉の対象は、上にも書いたような「言い訳」があるような人たちだった。高齢者だから、障害者だから、貧困だから、支援される、といったように。

その構造が、当時の自分の置かれた状況とぴったり当てはまるような気がしたのだ。コンクールメンバーだから、リーダーだからサポートが必要である。だけど、私は言い訳が何もない。頼ってもいい「言い訳」がない。きっと私は、部活の中の福祉の対象外なのだ、と。

対象外なのにこんなにも辛い。そこで、今の福祉は「言い訳」がある人の支援はできているけど、何も持たない人の支援まではたどり着けていないのでは?そしてその中には、私みたいに思い詰めた人もいるのでは?と思うようになった。

どうしたら、みんなを福祉の対象にできるのだろうか。どうしたらみんなが頼りやすい言い訳を持てるのだろうか。そもそもみんなってなんだろう。「みんな」に含まれていないひとは本当にいないのだろうか?そしてみんなが支援されるにはどうしたら良いのか。そんなことを考えたくて、福祉を勉強している。

正直、四年間の学びで答えが出るような問いではないだろう。ただ、卒業しても考え続けられるようなヒントは手に入れられるはず。

最後までありがとうございました

長くなりましたが、自己紹介がわりに綴らせていただきました。
これからも、日々考えていることをメモ代わりに書いていきますので、よろしくお願いします。

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