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#ファンタジー小説部門
夢と鰻とオムライス 第1話
◇
飛んできたのは五百円玉だった。
よりによって一番攻撃力の高そうな硬貨の側面が、俺の眉間に命中したのだ。
鋭い痛みが目頭から眼球の裏へと伝わり、泣きたくもないのにじわりと涙が滲んだ。
「いってぇ……」
俺は両手で目を覆い隠した。痛みのせいで勝手に湧いてきた涙をそれとなく拭って、顔を上げる。
「なにすんだよ!」
渾身の力を込めて睨みつけると、ほんの一瞬だけ、兄はうろたえた表情を見せた
【連載小説】「北風のリュート」第1話(#創作大賞2024/#ファンタジー小説部門)
第1話:遠いうねり
そこは世界の蝶番のような場所だった。
東と西の大地の深くえぐれた裂け目は、太古の昔に一頭の巨大な龍がつけた爪痕だと伝えられている。底なしの谷から唸り声をあげて天へと疾風が舞い上がるのを風の龍と呼んでいた。竜巻と呼ぶものもいる。
七の新月の夜になると羽毛のような雪が降り始める。
北風がその大いなる翼で大地と地に棲む人々を翻弄するころ、北風に乗ってやってくるものがいた
【小説】好奇心は泡に消える
今日も砂の中から、光る糸を何本も見つけた。
キラキラしていて好きだけど、今拾った糸が、しまっているお菓子の缶に、はいりきれるかな。
糸の他に、石や海藻とはまた違う、ツルツルとしたものも拾った。
いつも人間界のことを教えてくれるカモメさんはこれを「プラスチック」と教えてくれた。
これも糸の次に、よく見つける。
こんなのじゃなくて、まだ見たことないものが落ちていないの?
一昨日行ったばかりだけど
【#創作大賞2024】骨皮筋衛門「第一章:我が名は骨皮筋衛門」(2252字)
第一章「我が名は骨皮筋衛門」
帳面町の犯罪発生率約0%。
この驚異的数字はある男の活躍により達成した数字である。その男の名前は骨皮筋衛門、令和のヒーローと呼ばれる潜入捜査官だ。首都東京から遠く離れた帳面町は元々のどかな地方都市であったが、骨皮家がこの地を支配するようになってから犯罪が極端に減った。
骨皮家は悪を憎み平和をこよなく愛する一族である。平民という立場でありながら時の権力者の懐刀とし
【連載小説】「執事はバッドエンドを導かない 」第一話(創作大賞2024・ファンタジー小説部門応募作品)
※この小説は、創作大賞2024「ファンタジー小説部門」応募作品です。
プロローグ
遠い昔、村に魔女がやって来ました。
村の少女が「病気の母を助けてほしい」と懇願すると、魔女はこう言います。
「かわいいお前のためだ。その願いをきいてやろう。けれど、お前も相応のものを払わねばいけないよ。私が持っているいくつかの呪いのうち、一つをお前が代わりに引き受けてくれるかい」
少女は何だかとても