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旅にまつわる音楽を聞きながら、記事をお楽しみ下さい♪

船を止めて乗った、クルーズ船からの景色

生まれて初めて船を止めてしまい、そうして乗った船からの景色は「ドナウの真珠」そのものだった。
王宮、くさり橋、漁夫の砦など、ブダペストを代表する観光名所は、ライトアップでより魅力的に見える。
暖色系のライトで統一されたその夜景は、ブダ側もペスト側も落ち着いた美しさを見せ、心が温かくなった。
星も見渡せる空は、ますます私を雄大な気分にさせてくれた。

「本当に、よく止めたわねぇ、理菜ちゃん!」
「一人なら、きっと諦めてました。先生のおかげです」

そう、本当にピアノの恩師、岩田先生のおかげなのだ。
路面電車でハンガリー語が分からずあたふたしていたら、そもそも最寄駅にすら辿り着けなかっただろう。

風が心地良い程度に私達の肌をなで、私も先生も、真夏の快適なヨーロッパの夜にご機嫌だった。
私は先生に予想されていたように、ヨーロッパの夏が大好きになった。

下船の時は、王侯貴族気分で……

開放的な気分は、下船してからも続いた。
下船場所は、ブダペストのシンボル的存在、国会議事堂の近くだった。
ハプスブルク帝国の皇女、シシィことエリザベートも、このような場所でいつも下船していたのかもしれない。
滑稽な乗船の時とは別人のように、私は先生と、王侯貴族のような気分で船を降り立った。

ライトアップされ、ますます豪華さを増した国会議事堂に向けて散策していると、川沿いのお花に囲まれたエレガントなレストランが、姿を現した。
「入りましょうか!」
「入ろっか!」
先生と私の声はぴったりと重なり、私はなんだか嬉しくなってしまった。

お花に囲まれたレストランで、ハンガリー料理三昧

こうしてペスト側から見るブダ側のライトアップも、神々しいものだった。
レストランに入り、私達がその夜景に見惚れていると、ボリュームたっぷりのグヤーシュやパプリカシュチルケが、姿を現した。
波のプールに揺れ、船に間に合うために必死で走ったからか、お腹は思った以上に空いていたようで、その美味しくボリュームたっぷりのハンガリー料理もあっという間に平げてしまった。

「理菜ちゃん、すごい早さね!私のお料理も、いる?」
先生の料理まで平らげてしまう、困った弟子であった。
ハンガリー料理に夢中になっていると、同時にライブ演奏が近くで始まった。
「私達がハンガリーに来たのを、お祝いしてくれているようですね!」

光の夜景と影のジプシー音楽

リストのハンガリー狂詩曲に出て来るような、怪しげなジプシー音楽が、なぜかこの堂々とした夜景にも馴染む。
「ハンガリーの王族とジプシーは、全くの別の世界で生きているはずなのに……」
早いパッセージを演奏するヴァイオリニストは、もはや人間という殻を完全に打ち破っているかのように、半狂乱的に演奏していた。
気付けば、鳥肌が立っていた。

「特別な夜」を増やそう

たくさん走り、「ドナウの真珠」の夜景に感動し、そしてヴァイオリンの演奏に心躍り出す。
なんとも特別な夜が、また1つ増えた。
「特別な夜の思い出」は数えきれないほどあるが、この「美しき夜のドナウ」の思い出は、人生においての「特別な夜の思い出」ベスト10に入る、そんな夜だ。

仕事や家事、育児に疲れ、ぐったり休む。それだけが夜ではない。あえて休暇を取って、特別な夜の思い出をたくさん増やして頂きたい。

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