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母と乳癌と私

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おふくろの味

何代も続く家庭の味。
小さい頃から慣れ親しんだ味。

食べられなくなる日は突然やってきて。
何回も聞いたはずの作り方をメモにとっていなかったことを、私は悔やんでいます。

奇跡的に、というか、動物の感でしょうか。
私は母が最期に作ってくれたご飯の写真を撮っていました。亡くなる2ヶ月程前だったのですが、ふと、撮りたいなと思ったんですよね。何度見返しても、もう戻りはしない日常の、私には作れない味がそこ

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頑張る理由って難しい

頑張る理由って難しい

母の為に頑張ってきた。そんな人生でした。

母に誉められるように勉学に励み、交換留学の権利を得て、名の知れた企業に入り、仕事に勤しむ。
幼い頃から家業や家事を手伝うのが当たり前。

「この子がいると助かるの」
嬉しそうに母が他人に私のことを自慢しているのを聞くのが誇らしかった。嬉しかった。

母が末期癌を患った時もそれは変わらなくて。
会社で働きながら、毎週2日間のお休みで実家の家事を行い、母の代

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忘れない、は難しい

忘れない、は難しい

後であれやろう、これやろう。でも、すぐ忘れてしまいます。

思い出せたりもするのですが、そのまま思い出せないことも多々あります。もしかすると忘れていることに気付いていない、そんなこともあるのかもしれません。

思い出させてくれる存在が傍にいてくれれば、と思います。

「死にたくない。死んだら忘れられてしまう。それが怖い。」

亡くなった母は口癖のようにそう言っていました。母の遺志を尊重したい、母の

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告知のある死と突然死

大切な人と永遠に会えなくなってしまう。

それはとても辛く悲しく耐え難い。時として人から生きる力を奪ってしまう、そんな出来事だと思います。私は母の死後、心を患いました。

死別は辛い。では、余命を宣告された死と突然死、どちらがより辛いか。

比べられるものではないと思いつつ、考えてしまいます。

私の母は乳癌の全身転移で3年の余命宣告を受け、実際は2年で逝去しました。その2年間、母がやりたいことを

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初めの一歩。

初めの一歩。

何事も始めなければ始まらない。

私は文章を書くこと、話すことが苦手です。

ですが、私の言葉が意図通りに相手に伝わりますように。練習しようと思います。

私は26歳の時、自分よりも大切だった母を亡くしました。最期に母に言われた言葉が今でも忘れられません。

「貴女のそういうところが嫌い」

その言葉の真意を知ることが出来ません。鎮痛薬の影響で喋ることが難しかったからです。その中で、母が辛うじて呟

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患者の目を見ないお医者様

患者の目を見ないお医者様

世の中には色々な人がいる、と感じます。

心は笑っていても無表情な人。時場所問わず感情が抑えられない人。

私は上記の2パターンが苦手なのですが、あくまで私の好みの話であって。各々事情はありますし、私だって他人のことをとやかく言えるほど立派な人間ではありません。

人と話すことが苦手な人もいるでしょう。目が見て話すことが苦手な人もいるでしょう。

でも、お医者様には患者の目を見て、向き合って欲しい

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