康永 健

小説「リハビリつれづれ」の作者です。理学療法士というリハビリの仕事をしています。 #リ…

康永 健

小説「リハビリつれづれ」の作者です。理学療法士というリハビリの仕事をしています。 #リハビリつれづれ #リハつれ #note小説 #コメディカル小説 #ほんわか系小説

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リハビリつれづれ 1

リハビリつれづれ                     康永 健 ※この作品はフィクションであり、登場する人物・団体・事件等は、すべて架空のものです。  プロローグ  "つれづれなるままに、日ぐらし、硯(すずり)にむかひて、心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。"  日本三大随筆の一つ、兼好法師の「徒然草」である。たしか、中学校の国語で学んだはずであるが内容は思い出せない。現代語訳は以下である。  "為すこともなく退屈な

    • リハビリつれづれ 投稿について

      9月から細々と続けて参りましたが、一身上の都合により小説投稿をしばらく休止しようと思います。 スキを付けて下さった皆様、ありがとうございました。 康永 健

      • リハビリつれづれ 16

         なんだか今朝は忙(せわ)しない。いつもであれば目覚ましを止めてからスヌーズ機能を活用して二度寝をするはずなのに二度寝で全然寝れる気がしない。そこで仕方なく出勤前の準備を行う。鏡の自分を見るとどこか違和感を感じる。そしてこの違和感は視覚的な問題だけではない。両耳の上部分を触るとジョリジョリとした違和感がある。いつもであれば洗面所の滞在時間なんて十分もかからないのであるが、今日は昨日美容院の人に教えていただいた通りに髪型のセットを試みるがなかなか決まらず、ワックスを多めにつけて

        • リハビリつれづれ 15

           私は少し緊張している。目の前にある建物の看板には“Wake me up”とおしゃれな横文字が並んでいる。入り口を入ると、ウッド調と白を基調とした明るい雰囲気の中に観葉植物が飾られている。中で座っている人たちが、どこか都会の雰囲気を漂わせているのは、大きな鏡の横にコートがかかっているのと、皆がファッション誌を読んでいるからであろうか。立って仕事をしている人たちは、甘いマスクとハサミを巧みに使いこなしている。本日私は髪を切るためにいきつけの床屋ではなく、みなとみらいの美容院を予

        • 固定された記事

        リハビリつれづれ 1

          リハビリつれづれ 14

          「ただいまー。」 「おかえりー。今日はちょっと遅かったね。」 「とりあえず風呂入る。今日の夕飯なに?」 「餃子。チンして食べてー。」 「はいー。」  私は手を洗い、弁当箱を出し、そのまま風呂場に向かう。毎日行っている一連の動作は脳みそが疲れていても、何も考えず行うことができる。シャワーを浴び、少しばかりリラックスしたところでお皿にぎゅうぎゅうになって入っている餃子を電子レンジに入れた。 「あっ、”あれ”忘れた。あそこのとこ入ってるから取ってー。」  ヨーグルトを食べようと座っ

          リハビリつれづれ 14

          リハビリつれづれ 13

           本日の臨床業務を無事に終えて、疲労が蓄積している脳みそを叩き起こしながらカルテを書いているところに、 “お疲れ様ですー!”と顔を出したのは、言語聴覚士の町田恵美さんである。  町田さんは臨床十年以上のベテランである。横浜緑野総合病院には言語聴覚士(ST)は二人いるのだが、一人が現在産休でお休みをとっているため、この病院のST業務を実質一人で行っているというとんでもないお方である。  STは主に飲み込みや、コミュニケーションの障害を有する人に対して介入を行うリハ職である。PT

          リハビリつれづれ 13

          リハビリつれづれ 12

           午後はアキレス腱断裂のおじさんと両TKAのおばちゃんのリハビリを行った後、次の患者さんである。  次の患者さんは誤嚥性肺炎で入院された、博識な山田さんである。 「山田さん、こんにちは。リハビリの中原と申します。このお部屋で、足の運動だったり、歩く練習を一緒にやっていきましょう。よろしくお願いします。」 「こんにちは、こちらこそよろしく。」  山田さんは、運動機能としてはだいぶ改善してきており、自宅内は伝って歩けるのではないかと考えられる。そのため現在ご家族と退院日の調節中で

          リハビリつれづれ 12

          リハビリつれづれ 11

           この後患者さん三人のリハビリを終えて昼休憩となった。  休憩室に入り弁当を温めようとすると、先に弁当を温めていた詩織がちょうど電子レンジから弁当を出すところであった。 「あれ、詩織の弁当今日小さくない?それで足りるの?」 「足りるか足りないかじゃないの。これで足らせてるの。」 「そうなんだ。あっ、このクッキー食べる?」  私はテーブルの上に置いてあったリハ医の中山先生が買ってきてくださったお土産を一つ取り出した。 「ほんっとに嫌味なやつだね。女は男と違って頑張らなきゃいけな

          リハビリつれづれ 11

          リハビリつれづれ 10

           次の患者さんは本を読むのがお好きな中野ウメさんである。 「おはようございます。よろしくお願い致します。」  と、小さな体から話される丁寧なあいさつは、私の背筋を伸ばさせる。 「お食事どうですか?食べれてますか?」 「昨日はね、完食しました。お魚のみぞれ煮がでたの。白身でね。タラだったのかしら?私は白身魚が大好きなの。昨日はご飯も全部食べちゃいました。」 「それはよかったです。ご飯を食べなければ力も出ないですから。今日の夜ご飯も白身魚だったらいいですね。」 「そうですね。でも

          リハビリつれづれ 10

          リハビリつれづれ 9

          「おはようございますー!」  本日も最初の患者さんは右膝の人工関節置換術をされた山口さんである。今日も山口さんと同室の田中さんと一緒に女子会をしながらリハビリ室に来室された。 「先生、おはようございます。今日はね、リハビリ室に一人で言っていいって看護師さんに言われたんだけど、ちょっと不安だったからお隣さんと一緒に来ちゃった。今日もよろしくお願いします。」  歩くことが不安であればおしゃべりする余裕などないと思うのだが、おしゃべりしながら歩けるようになったと前向きに捉えたいと思

          リハビリつれづれ 9

          リハビリつれづれ 8

           新しいことを始めるというのはストレスである。正式にはストレスというものはストレッサーに対応した状態であるため正しく心理用語を使うと、”新しいことを始めるというのはストレッサーであるため、心身の抑うつ的なストレス反応をもたらす”というのが正しい使い方である※18。ただ、私は心理学者ではないため、ここではごく一般的な使い方をしたいと思う。このストレスはマイナスな出来事の後に生じると考えるのは当たり前の話であるが、例えば新生活を待ち望んでいる引っ越しのようなイベントや、男女が永

          リハビリつれづれ 8

          リハビリつれづれ 7

          「ただいまー。」 「おかえり。お風呂空いてるよ。」  最寄り駅から十五分、築四十年の一軒家に私は両親、弟の優人との四人で住む。私が帰宅すると、大学生の優人と仕事終わりの父親はリビングでごろごろとテレビを見ており、母親は食事の後片付けをしている。私は、こびりついている疲労感をシャワーでなんとか洗い流し、母親の作ってくれた焼きそばを電子レンジで温める。  母親や実家のありがたみを感じるのは、社会人になってからである。学生の時は、母から小言を言われ、家族と同じ生活リズムで生活しなけ

          リハビリつれづれ 7

          リハビリつれづれ 6

           このあと背骨の手術をしたおじいちゃんと、お腹の手術をして体力が落ちてしまったおじさんのリハビリを行って本日の臨床業務は終了した。  ただ、ここで“はいさようなら”と帰れるわけではない。今日担当した患者さんのカルテを記入しなければならない。そして、今日はお昼にカルテ記入をさぼったため午前中の患者さんの分のカルテも書かなければならない。カルテは電子カルテであり前日の内容をコピー&ペーストができるのであるが、もちろん全部が同じ内容なわけではない。一日の臨床で疲れ切った心身を缶コー

          リハビリつれづれ 6

          リハビリつれづれ 5

           午後は両膝のTKA(人工膝関節置換術)のおばちゃん、肝臓の調子が悪くなったおじさんのリハビリをしたところで次の患者さんである。  山田寿和(としかず)さん八十五歳。身長百六十八センチ、体重四十・二キロの細身の男性で、二週間前に誤嚥性肺炎による、高熱のため入院となった患者さんである。肺炎自体は落ち着いてきたのだが、体力、筋力が落ちてしまったため、リハビリ介入となった。入院前の生活は奥様と二人暮らし。屋内伝い歩きで移動しており、家事は高齢の奥様が行っていた。また、近くに娘さんが

          リハビリつれづれ 5

          リハビリつれづれ 4

           この後、階段から転んで骨折してしまったおばあちゃん、交通事故にあったおじいちゃん、テニスをしていてアキレス腱を断裂したおじさんのリハビリをして、午前中の臨床業務は終了となった。私は売店で弁当を買い休憩室に向かった。 「おつかれー。あら今日は早いのね。」 「今日は小森さんに早く会いたくて早くお昼休憩にしました。」 「カルテ書く気分じゃなかったってことね。電子レンジ空いたからどうぞ。」 「ありがとうございます。」  小森さんはこの病院に勤務して二十年以上になるリハ助手である。リ

          リハビリつれづれ 4

          リハビリつれづれ あらすじ

          私、中原正人は、総合病院で働く若手の理学療法士である。 メスを持てない、注射を打てない、薬も出せない私は、本日もリハビリテーション室にやってくる病気を抱えた患者さんに理学療法を提供する。 医師ではない医療従事者であるコメディカルが書く、コメディ要素満載な新しい医療小説。

          リハビリつれづれ あらすじ