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解説 夫婦は共に敬い合うべし(第二説教集18章) #176

原題:An Homily of the State of Matrimony. (結婚の意義についての説教)

第18章に入ります。この章は部に分かれていません。分かれていないにしては長い説教です。聖句でいうテーマはこれでしょう。

妻たちよ、自分の夫に従いなさい。(略)柔和で穏やかな霊という朽ちないものを心の内に秘めた人でありなさい。(略)夫たちよ、妻を自分よりも弱い器だとわきまえて共に生活し、命の恵みを共に受け継ぐ者として尊敬しなさい。(ペトロの手紙一 第3章1,4,7節)

第18章のポイントは次の4点です。
①結婚の意義と夫婦のあるべき姿
②妻の夫に対する務め
③夫の妻に対する務め
④まとめと結びの祈り

まずは結婚の意義について述べられます。

神の教会と神の国は結婚によって守られて大きくなると言われています。これは神が祝福によって子を授けているという点においてのみ言えるのではありません。子が両親に信仰深く育てられることによって神のみ言葉を知り、神とその真の教えが覚えられて代々と受け継がれ、ついには多くの人が不死の永遠を享受することになるという点においても言えることです。

結婚の意義は、もちろん放縦な生活に至らないためでもありますが、子々孫々に信仰が受け継がれることによって結果的に多くの人間を救うためでもあると述べられ、その上で夫婦のあるべき姿について説かれます。悪魔に唆されて不和に陥ることを戒め、逆説的に理想の夫婦像を説いています。

いまみなさんの間には心地よく甘美な愛情がありますが、悪魔はそこにそれとは違った極めて不快で苦みのある不和をもたらします。(略)わたしたちは悪魔がどれほど鮮やかに結婚を欺いて貶め、叱り合うことも言い合うことも、嘲り合うことも責め合うことも、酷く罵り合うことも喧嘩をすることもない結婚がどれほど少ないかを知っています。

このようなことのない結婚生活が理想のものであり、そのために、夫婦それぞれに心に持つべきことが端的に説かれます。

夫は夫婦の一致を大切にして高め、愛を導いて創る者です。夫が横暴さを持たずに穏やかさを持てば、また妻に物事を譲ればこの教えのとおりになります。女性とは弱い生き物で、心の剛健さや堅固さを備えていません。男性に比べて心を早く取り乱し、愛情や意気が弱く軽率であり、幻想や空想にふけります。このことを男性はよく理解し、厳しくなりすぎずに、ときには目をつむる必要もあり、忍耐強くあらゆる物事を優しく説くべきでもあります。

この時代ならではの、女性を「弱き器」と公言して憚らない言葉ではありますが、一方で男性に対して女性を理解して庇護することの大切さを説いてもいます。このあと、妻と夫それぞれの務めについて詳しく述べられます。いつくかを紹介します。まずは妻の務めについてです。

妻は夫の言葉に従い、夫の意に沿い、夫の満足を求めて夫を喜ばそうと努め、夫の気分を害するあらゆることを避けるべきです。

夫は妻に厳しくあってしかるべしという意味でこう言っているのではありません。妻は夫の厳しさによく耐えるものとわたしは言いたいのです。

一貫して、妻は夫に服従するべきであると述べられており、この線が崩れることはないのですが、一方で妻についてはこのようなことも述べられています。

実際のところ女性はとりわけ結婚による不自由さや苦労を感じるはずです。自分の決めたことに従うという自由を捨て、住むところを移り、子どもを育てなければなりません。そのようななかで女性は大変な不安を持ったり大きな苦痛を伴う悲しみを持ったりします。そもそもそういうものは結婚をしていなければ持たなくて済むものです。

これは現代にも通じることで、これが16世紀の説教にあることにやや意外な感を持ってしまうのですが、夫の妻に対する務めについて説かれていることを見ますと、これを前提としているように思われます。女性をただ「弱き器」とみてのものではありません。

王が誉れを汚して王としての権威を下げれば、王は自身の誉れを失うことになります。これと同じように、隣にいる妻を蔑むなら夫は自身の権威が持つ気高さや美徳を汚して貶めてしまうということになります。

農夫がそこを耕せば果実を収穫することができます。これと同じように、夫が勤勉さをもって伴侶の心をよく説くようにすれば、つまり妻の心からよろしくなく生えてくる雑草を少しずつ抜くことに健全な考えをもって勤勉に取り組めば、時がきて夫婦の心を満たす香しい果実を得ないはずはありません。

妻は夫によく従い、夫は妻を理解するべきである。むしろ夫は妻を庇護しなくてはならない。そうして理想の夫婦となり、子々孫々に信仰を伝えていくことが結婚生活の意義である。このように説かれ、結びの祈りをもってこの章は終わります。


今回は第二説教集第18章「夫婦は共に敬い合うべし」の解説でした。次はこの試訳となりますが、一度にお届けするには長すぎるので、2回に分けてお届けします。


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