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解説 麦打ち場を麦で満たせ(第二説教集17章4部) #174

原題:An Exhortation, To be spoken to such Parishes where they use their Perambulation in Rogation Week; for the Oversight of the Bounds and Limits of their Town. (祈願節週間における教区の辺境の地域での巡回で行われる説教)

第4部に入ります。第17章は祈願節週間の説教となっているのですが、第3部までが一続きのもので、この第4部については表題も改めてつけられています。その名のとおり、辺境地域の巡回説教で用いられるもので、説教の文面から、当時の農村部に日常からあった問題をみることができます。第4部の聖句でいうテーマはこれでしょう。

そもそも、互いに訴え合うことが、あなたがたの敗北です。なぜ、むしろ不正を甘んじて受けないのですか。なぜ、奪われるままでいないのですか。(コリントの信徒への手紙一 第6章7節)

第4部のポイントは次の4点です。
①この説教の目的
②地境を動かしてはならない
③欺瞞や狡猾をもって富を貪ってはならない
④まとめと結びの短い祈り

はじめに、この説教の目的が述べられます。

第一義としては、肉体を食物や栄養で維持するためのあらゆる果実で野原が満たされているのを見て、全能の神の大いなるみ恵みを讃えてそれに感謝するためにわたしたちはここに集っています。(略)第二義として、わたしたちは自分たちに与えられている果実で満足することを覚えるために、いまここに集っているのです。わたしたちは他人が持っている果実をむやみに欲しがってはなりません。わたしたちは愛を破って相手のものを欲しがったり不満を言い合ったりしてはいけません。

農地が広がる地域で説教をしていることが想像できるくだりです。大地から得られる収穫について神に感謝し、それと同時に、他人の土地に踏み入って収穫を増やすことが戒められています。また、都市部と農村部に大きな差があったこともうかがえるくだりがあります。

わたしたちは自分の住む土地が境の向こうとは違うとして生活に不穏さを持ち、律法において持っているはずのものを空しく無駄遣いすることへと落ちてしまいます。自分がいまここにいるのはこの世の生におけるかりそめの短い間でしかないということを思い出すべきです。

都市部と比べて貧しい生活をしているとはいえ、それはこの世のことであり、信仰をもって生きれば来たる世では褒賞に与るということが述べられます。

さて、貧しい生活をするなかで、少しでも手取りを増やそうとして人々が狡猾になってしまうことが聖書からの引用をもって戒められます。

偽りの証しによって隣人である町の人々からその当然の権利や所有物を騙し取る者は、どのような呪いの中に落ちることでしょう。(略)聖パウロは「正しくない者が神の国を受け継げないことを、知らないのですか(一コリ6・9)」と言っています。この世の地境を変えて財産を少し増やし、それを代々受け継ぐことでわたしたちは何を勝ち得たいのでしょう。他人の土地に入って悪事を為すのではなく、自分の土地の地境や財産を保つことに専心しましょう。

地境を越えて結果的に他人の財産を奪うことを戒めるために、旧約聖書からも多くの引用がされています。

「あなたが受け継ぐ相続地、あなたの神、主があなたに相続させる地で、先祖が初めに定めた隣人との地境を動かしてはならない(申19・14)。」

「昔からの地境を移すな。それは先祖が定めたものだ(箴22・28)。」

「『隣人の地境を移す者は呪われる。』民は皆、『アーメン』と言いなさい(申27・17)。」

また、他人の土地を犯すのみならず、公共財にまで手を伸ばす行為についても戒められます。

強欲にも隣人の土地に鋤を入れて種を蒔く者もいますが、貪欲にも人がいま歩いている道にまで鋤が入られているのは嘆かわしいことです。そのような道は大昔から善良な民が広げて大きくしてきていて、時には隣人たちがゆったりと歩くために、時には収穫の時期に貧しい隣人たちの家畜を安全に小屋に連れて行くためにあるところです。

そもそも人は互いに憐れみ合って生きなければならない。貧しいからといって身勝手になってはならない。この世を正しく生きて、来る世での褒賞に与ろうと訴えられ、祈りの言葉をもってこの第4部は終わります。

みなさんは自身の富をもって、また自身の第一の果実をもって神を讃えるべきです。そうすればみなさんは麦打ち場を麦で満たし、搾り場を新しいぶどう酒で溢れさせることができます。(略)神はみなさんに平穏と平静を授けられ、みなさんのための蓄えがあるところで集まるようにとされます。そこでみなさんはひとりひとり、外敵が入ってくる恐れを持たずに神のぶどうの木の下に穏やかに座ることになります。


今回は第二説教集第17章第4部「麦打ち場を麦で満たせ」の解説でした。次回はこの試訳をお届けします。


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