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【説教集×英語学習21】 心の土を耕す #231

2024年5月5日(復活節第6主日、青少年の主日)



説教集より

Certaine Sermons or Homilies 1547-1571, Rickey and Stroup, 2nd ed, 1993, II, p246.

As for an example, though it be dry, though it bringeth forth weeds, though the soil cannot bear too much wet; yet he tilleth it, and so winneth fruit thereof: … 

例を挙げれば、その土地がやせていているとして、そこに雑草しか生えなくても、土にあまり水気がなくても、それでも農夫がそこを耕せば果実を収穫することができます。(第二説教集18章:全訳はこちら↓)


ヨハネのひとこと

土を耕すというのはなかなかの力仕事であり、なおかつ細やかさの要ることでもあります。鋤や鍬で土を掘り起こし、そこをならしつつ、石や草があれば取り除いてきれいな農地になります。肥料も施さないといけません。またそもそもそこに大木の切り株があったら、それこそ大変な力仕事になります。土を耕すのには強さと細やかさが要ります。

土づくりは農業や園芸の基本です。どんなに良い種を蒔こうと、また良い苗を植えようと、土が良くなければ十分には育ちません。日当たりがよくても、水があっても、土が良くなければ上に伸びにくく、根をしっかりと張りにくくなります。よい土で育つ植物は花の香しさも、実の甘さも、枝葉の輝きも違います。

土壌改良という言葉がありますがそのとおり、工夫して土をよいものにすることができます。もちろん力も細やかさは必要です。手間もかかります。また、必ずしもすぐによいものとはなりません。息の長い取り組みが求められることのほうがむしろ多くあります。しかし手をかけた分だけ収穫は約束されます。

花が咲かない、実がならない、そこにはいろいろな要因があるのかもしれませんが、そのとき、そもそもの土に目を向け、そこに愛をもって手をかける。「急がば回れ」とも言われますが、回ったぶんだけの収穫はあるはずです。相手の心に花を咲かせ実をならせたいと思うとき、相手の心の土を耕そうとする心がけをもって、今週も毎日を送りましょう。


英文の解説

文頭の as for はひとつで前置詞の働きをして「~に関しては」などの意味を持つものです。as for an example で「例をあげれば」の意味になります。これに続いて接続詞 though で始まる副詞節が三つ続きます。副詞節が三つ続くのですから等位接続詞の and が間にあったほうがいいとは考えられますがここにはありません。なくても文法的に問題はありません。

一つ目の副詞節 though it be dry の主語 it は(ここでは紹介していませんが)前文にある that ground を指します。三つの副詞節のうちここだけが述語動詞をみると仮定法現在になっています。他の二つは直説法で現在時制です。他と同じく従属接続詞 though に導かれているとはいえ、ここのところは和訳のニュアンスを変えないといけないと思います。より「仮定」の意味合いが出る和訳を考えたいところです。「その土地がやせているとして」と訳しました。

二つ目の副詞節 though it bringeth forth weeds の主語 it も、上述の it と同じく前文の that ground を指します。bringeth は現在でいう brings ですが、語尾に th を付すとしても発音するのに eth とする必要がありました。bring forth は現在でもよく使われる表現で「~をもたらす」の意味です。weeds は「雑草」です。三つ目の副詞節 though the soil cannot bear too much wet の構造は SVO です。bear は他動詞で「~を保持する」の意味、wet は名詞で「水気」の意味です。

仮定法現在と直説法の現在時制の違いに注意してここまでを訳すと、「その土地がやせていているとして、そこに雑草しか生えなくても、土にあまり水気がなくても」となります。ここまでが大きく従属節で、このあと主節になります。主節の前はカンマで十分なのですがセミコロンが使われているのは、①朗読者の問題として、そこにセミコロンがあるほうがわかりやすいというのと、②主節の前にあえて yet を置いて「譲歩」や「逆説」を際立たせているためと考えられます。

yet「それでも」he tilleth it とあります。he は(これまたここでは紹介していませんが)前文までの内容を受けての「農夫」です。tilleth は till の三人称単数現在形 tills の古い形です。till という語には他動詞で「~を耕す」の意味があります。it は前述の that ground です。等位接続詞 and で tilleth と winneth が結ばれ、he を共通の主語とします。この文の動詞が bring (eth)、till (eth)、win (neth) であるのが面白いところで、音読してみると調子の心地よさがわかります。また、果実を収穫するという意味合いのところで win を用いているのも興味深くあります。主節は「それでも農夫がそこを耕せば果実を収穫することができます」という和訳になります。


英文の見取り図


おまけ(復活節第6主日聖餐式)

今日の聖餐式では使徒書の朗読を担当しました(ヨハネの手紙Ⅰ 5章1節~6節、12分02秒付近から)。なかなかクリアな発声ができないでいます。もっと練習しないとです。よかったらぜひご覧になってください。



最後までお読みいただきありがとうございます。今後も主日のたびにこのシリーズを投稿していきたいと思います。引き続きご愛読ください。よろしくお願いいたします。


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