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【説教集×英語学習2】すべての人を愛せ #212



説教集より

Certaine Sermons or Homilies 1547-1571, Rickey and Stroup, 2nd ed, 1993, I, p39.

… but love all men, speak well of all men, help and succour every man as you may, yea, even your enemies that hate you, that speak evil of you, and that do hurt you.  

「力の限り、すべての人を愛し、すべての人についてよく言い、誰にでも救いの手を差し伸べましょう。そうです、あなたを憎んでいて、あなたを悪く言っていて、あなたに大きく害をもたらしている敵に対してもです。」(第一説教集5章3部:全訳はこちら↓)


ヨハネの勧話

すべての人を愛し、すべての人に対してよく言い、誰にも救いの手を差し伸べる。言葉にするのはさほど難しいことではありませんが、これを行うとなるとかなりのハードルがあります。

この説教文にありますように、その「すべての人」とは自分を憎む人、自分のことを悪く言う人、自分に害をもたらす人を含みます。いわば自分の「敵」とも言える人たちです。

自分はその人たちにさんざんな目に遭わされてきた。一方的に憎まれた、一方的に悪く言われた。一方的に危害を加えられた。こちらからすれば憎い存在。もっといえば、いなくなってほしい存在。そのような人たちに愛を向けるだなんて、そんなことができるか。そう思いたくなります。

しかしこう考えてもみたいところです。憎まれた、悪く言われた、危害を加えられた。これはひょっとしたら思い込みではなかったか。そしてもうひとつ。自分もひょっとしたらどこかで誰かに(図らずも)そうしてしまっていたかもしれない。またはそう受け取られてしまったこともあり得るのではないか。

人間社会はとかく難しい。そもそも人間という存在それ自体が複雑な内面を持っているというのに、それが何人も、何百人も、何万人も、もちろんそれ以上にも関わりあう。そして互いに日々、意図してもしなくても、影響を与えて与えられてという営みをしている。

友も敵もいる。そのなかに自分がいて、おそらくはその中で日々いろいろなことを学んでいて、人として成長することもできている。そうすると友はともかくとして、敵とは何だろう。ひょっとしたら自分の心の中で作り上げている偶像であるのかもしれないと思いたくなります。

我も人間なら彼も人間。みな同じ。困っているときに自分がしてもらいたいと思うことを他人にもしましょう。大きな愛を持たれた方にならい、その方により頼み、隣人を愛することができることを「人生の目標」として日々を送りたいものです。


英文の解説

命令文です。命じられている事柄は3つ。一つ目が love、二つ目が speak well of、三つ目が help and succour です。こういう場合、三つ目の help and succour の前に and があるのが通例ですが、ここにはありません。大学入試の英作文でこういう文を書いたら高確率で減点でしょう。ただしここでは、三つ目が help and succour で、もしこの前にも and があったらかなりうるさくもあります。文の調子を整えてこうしたのだと理解したいところです。

help and succour について。大きくは help の意味の中に succour も含まれているとみることもできますが、この語には relieve や remedy のニュアンスもあるので、help and succour とすることによって表現に深まりを持たせることができています。「救いの手を差し伸べる」と訳しました。またこの前の love や speak well of の目的語が all men であるのに、help and succour の目的語が every man であることも興味深いところです。ひとりひとりに救いの手を差し伸べるということになります。

as you may についてですが、ここは現代では as you can とされるところです。もっといえば、通例 as … as you can と使われる表現です。「力の限り」と訳しました。その次に yea がありますが、このあたりは省略の嵐です。省略を補うとこうなるでしょう。太字部分が省略されている語句です。ただ個人的には、省略されている原文のほうがかっこいいと思います。

… but love all men, speak well of all men, and help and succour every man as you may, and yea, love, speak well of, and help and succour even your enemies that hate you, that speak evil of you, and that do hurt you.

そして your enemies を修飾する形容詞節(関係詞節)が3つ続いています。現代英語で speak well of の反対表現としてよく用いられるのは speak ill of なのですが、ここでは ill ではなく evil が使われています。ill よりもはるかに悪辣で邪悪なニュアンスを持ちます。そのようなことを自分に対してしてくる人をも愛して大切にせよとここでは説かれています。

英文の見取り図

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