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【説教集×英語学習3】話すより聞く人になる #213

2023年12月31日(降誕後第1主日)



説教集より

Certaine Sermons or Homilies 1547-1571, Rickey and Stroup, 2nd ed, 1993, I, p95.


And he that speaketh what he will for his pleasure, shall be compelled to hear what he would not to his displeasure.
  

「自分が語りたいことを嬉々として語る人は、自分が聞きたくないことを聞いて不快な気持ちになってしまうものです。」(第一説教集12章2部:全訳はこちら↓)


ヨハネの勧話

とかく自慢話をする人がいます。辛辣に言えば、「マウントをとる」ためにどんどん自慢話をする人がいます。そもそもこれは好ましいことではないのですが、それでも、自分がそうしている自覚をもってそうしているうちはまだいいのかもしれません。悲惨なのは自分がそうしている自覚を持っていない場合です。

機関銃(という喩えは不穏当かもしれませんが)のようにしゃべりまくる人がいます。相手にぐうの音も出させず、「打ち負かそう」として矢継ぎ早に話す人がいます。好ましいことではありません。これにしても、自分にそうしている自覚があるうちはまだいいのかもしれませんが、その自覚がないととても悲惨なことになります。

この二つはなぜ悲惨か。それは一つには、ともに、「話す」ことに執着しすぎる余り、「聞く」ことを疎かにしてしまうからです。「聞く」ことを疎かにしてしまうと内にストックがなくなります。枯渇していきます。新しいものを取り入れないでしまっては成長が望めません。いつの間にか「つまらない」話をばかりしてしまいかねません。そこに気づかないでしまう。

もう一つとしては、いざ「聞こう」と思い立っても、なかなかそうできなくなってしまうからです。なんだ、聞こうと思って聞いても、まったく面白くない、人の話を聞くなんてつまらない、そう思ってしまうのは、「聞く」態勢になっていないからです。「聞いて学ぼう」という謙虚な姿勢をなくしてしまっているからです。

謙虚な姿勢を失うことの行きつく先は傲慢です。自らの過ちを認めないどころか、やがて自らが過ちを犯しているのかもしれないというところに思いを及ぼすこともできなくなる。必然的に視野は狭くなり、成長が閉ざされる。また、衝突を起こしやすくなります。盲目的に自身が正義であると疑わないでしまうことが引き起こす悲惨はとても大きいものです。

人間には話す以上に聞くことと見ることが求められます。口が一つなのに耳と目が二つずつあるのはそのためでしょう。そのように体が造られていることを活かすべきですし、そのように造られていることの意味をよく考えて生きる毎日を送りましょう。そこで得られるものはとても大きいはずです。


英文の解説

幹となる構造としては、主語が he、述語動詞が shall be compelled です。述語動詞の前にカンマがありますが、この説教集にはままあることで、主部が長いことからくるものであると考えられます。

主語 he を修飾するのが関係代名詞 that から始まる形容詞節で、カンマの前までがそれです。代名詞を関係代名詞で始まる節で修飾するというのも現代英語ではあまり馴染みのないことですが、やはりこの説教集では多用されています。この that は主格で、その述語動詞が speaketh であるのですが、もちろんこれは現代英語では speaks で、古い活用形が用いられています。なお、ここでは他動詞として用いられています。

what he will の次には speak が省略されています。同じように、he would not の次には hear が省略されています。前者のあとには前置詞句 for his pleasure があります。この前置詞 for が「目的、願望、要求」を表す「~のために」や「~を求めて」の訳語になるものであるのに対し、後者のあとの前置詞句 to his displeasure が「結果、因果」を表す前置詞 to に導かれているところが対照的です。pleasure と displeasure の対比も面白い。

compel は自発的にそうしたいと思いもしないことを外的な圧力をかけてその人にさせることを言います。一般的には oblige より強く、force より弱いとされています。ここでは、自分のことを話すことばかり好きで、他者の話を聞きたくなんてなく、いやいやながら聞くことになるという状況をよく表しています。compel はラテン語の compello に由来するのですが、pello には drive(駆り立てる)の意味があり、同根語に propeller(プロペラ)があるのが面白いところです。


英文の見取り図


おまけ(降誕日前宵祭)

所属している教会の降誕日前宵祭(クリスマスイブ礼拝)が YouTube で公開されていますので、ぜひご覧ください。私自身、洗礼を受けてはじめて出たのですが、とても厳かながら喜びに溢れた礼拝で感動しました。ちなみに43分すぎからの第6日課の朗読を担当しています。


最後までお読みいただきありがとうございます。久しぶりの投稿になってしまいました。今後ともどうぞご愛読ください。よろしくお願いいたします。

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