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解説 私もその中にいる(第二説教集1章1部) #69

原題: An homily of the Right Use of the Church or Temple of God, and of the Reverence due unto the same. (神の神殿たる教会堂を正しく使用することとそこに向けるべき畏敬の念についての説教)

第二説教集第1章の解説に入ります。この章は二部構成です。まずは第1部の解説をします。テーマを聖句で言えばこれでしょう。

二人または三人が私の名によって集まるところには、私もその中にいるのである。(マタイによる福音書 18章20節)

第1部のポイントは次の6点です。
①教会堂の使われ方が嘆かわしい
②神の神殿は本来キリスト教徒の心身をいう
③教会堂は神を讃える場である
④聖書にみる教会堂の使用
⑤御名によって集まるところに神はおられる
⑥まとめと結びの祈り

冒頭で教会堂の使われかたが望ましいものとなっていないということが訴えかけられます。

天の父なる神に仕えるべき場である教会堂に通うことはどんな人にとってもまさに本分であります。しかしそこにおいて近ごろあらゆる位階の人々に緩みや怠慢が見られているのみならず、無作法で敬虔さのない振る舞いも見られています。教会堂に集っていながらそのような振る舞いをするというのは神に対する大いなる反逆であります。

この説教においては教会堂の正しい使い方について、聖書の言葉を示しながら話が進められていきます。ただしその前に前提となる二つのことが確認されます。ひとつはそもそも神が人間の造った教会堂などにお入りになられるはずはないということです。

天と地の創り主であり天に座して地にその御足を置かれ、わたしたちの思慮など及びようもない永遠にあって偉大なる神は、人間の手で造られた神殿にはお入りになられようもありません(使7・48~49)。

もうひとつは、確かに神は神殿をお望みではあるものの、実はそれはいわゆる「箱物」としての教会堂ではなく、キリスト教徒ひとりひとりの心身であるということです。

確かに神はご自身のための神殿に大きな喜びを持たれています。また、そこにお住まいになり続けることもいたく喜ばれています。ただしその神殿とは、真のキリスト教徒の、すなわち聖書の教えに従って御心に適う人々の心と体であるのです。

この上にたって、教会堂とは、この神の神殿たる真の信徒たちが神を讃美するために集う場であり、それゆえに神の住まわれるところとなるとされます。この教会堂の望ましい使用のありかたについていろいろと教えが説かれていきます。聖書からの引用が多く用いられ、多くの例をもって人々を納得させようとしていることが伺えます。そのなかからひとつをここで紹介します。『使徒言行録』についてです。

第十五章では、使徒である聖ヤコブが使徒会議で「モーセの律法は、昔からどの町にも告げ知らせる人がいて、安息日ごとに会堂で読まれている(同15・21)」と言っています。

また、キリストご自身が教会堂で広く教えを説いていたということも聖書の引用から示されます。

「私は、世に向かって公然と話してきた。私はいつも、ユダヤ人が皆集まる会堂や神殿の境内で教えた。隠れて語ったことは何もない(ヨハ18・20)。」

キリストは神殿という教会堂で熱心に教えをユダヤ人に説かれた。ユダヤ人もまた熱心に教会堂に集まっていた。ユダヤ人でさえ熱心に神殿に集ってキリストの教えに耳を傾けたというのに、なぜあなたがたは、というところでの厳しい言葉が述べられます。

神の家に集い神に祈りを献げるべきであるということにおけるわたしたちの怠慢を、毎朝とても早く神殿に集まり、時には長い移動をしてまでそこに集まるユダヤ人たちの勤勉さと比べてみましょう。(略)わたしたちはこのようなユダヤ人と比べて、ただ自分たちの怠惰や怠慢を恥じるよりほかありません。(略)裁きの日のわたしたちへの罪の宣告を考えただけで恐ろしくなります。

真のキリスト教徒が集う教会堂に神がおられる。わたしたちはそれを忘れてはならない。心から神に仕えるために教会堂に集うべきである。そう訴えて祈りが唱えられ、第1部は終わります。

神の御前にあるあらゆる聖や義において揺るがぬ心をもって神に仕えれば、わたしたちは天上においてもこの世においても御恵みに与るという約束を持つことができます。「二人または三人が私の名によって集まるところには、私もその中にいるのである(マタ18・20)」と救い主キリストは言われます。


今回は第二説教集第1章「神の神殿たる教会堂を正しく使用することとそこに向けるべき畏敬の念についての説教」の第1部「私もその中にいる」の解説でした。次回はこの試訳をお届けします。

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