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【読書感想1】『会計検査事例100選』を読んで


概要

公的機関等の会計監査を独立して担っている会計検査院が実施した、各年度の検査報告の中から身近な話題のものや正しく知ってもらいたいもの約100件を選抜・解説した冊子。
発行:一般財団法人 公会計研究協会
価格:非売品(図書館で借りました)

手に取った理由きっかけ

 ダイレクトに受検者だったから気になって気になって!!www
 投稿済みの『コキ使われてもぉキレた!退職決意からの大収穫』で書き殴っていた通り。コロナ対策のあおりでやった地獄労働の一つがこの受検に係るものでしたから。
 どうぞ不正してくださいみたいな制度の検査結果を、あちらさん側がどうまとめているのか興味津々!
 令和4年度版および5年度版の2冊。自分が関わってた分野と、気になった省庁のものいくつかを物色させて頂きました。

感想

 つまみ食いならぬつまみ読みした中でも解説コメントが秀逸だったものから・・・。

<都道府県に委託した、職業訓練中の託児サービスで2000万の過大受給>
⇒この事例に対し意訳しつつ解説を引用すると 「14道府県が要領改正を見落として漫然と前例踏襲している。省は省で審査・確定の際に気付かないとか、杜撰としか言いようがない。目に余る無責任なお役所仕事」 ってブチキレのコメントに私、大笑い。

 国から県に、県から市へ、なんなら入札者(民間)へみたいな委託はよくあること。
 制度立案者から間を挟めば挟むほど、真意の質低下は否めない。
 公共制度は公平であるために支給要領の飲み込み方に、癖がいる。

 長年公務に関わってきた私から言わせてもらうと、要領改正の見落としは普通にただヤバイ。というか改正があれば新旧表とか改正内容だけまとめた通知って絶対セットで当然くるんよ。そこがポイントだと頭に入れて担当者が進めてないとかどーかしてる。
 14ヶ所も2000万分やらかすなんて、当事者意識が欠如する業務・組織体制だったんでしょうかねぇ。
 委託先は「委託元が最終ジャッジラインだし」とか「お金出すの国だし」って心理が働いているのでは? 委託事業ってそんなに件数なかったり一時的なものだったりするから、他にメインの仕事を抱えたなかで片手間にやってそうだし。知らんけど。
 で、委託元は委託元で「委託先が審査してあげてきたものだから」ってフィルターかかるから、案外チェックが甘くなりがち。本省は確実に激多忙の片手間でやってることでしょう。しかも現場=社会実情を知らないから怪しさセンサーめちゃ弱でピンとこないんだと思う。知らんけど。
 なーんかそんな気がする。
 当事者モラルが必要だし、通達の伝達経路・業務体制の見直しが原因解決になってくれたらいいなぁ。

<労働保険料の算定誤り:徴収不足4000万、過大徴収1700万>
⇒給与明細から引かれてる「雇用保険料」といわゆる「労災」の総称が「労働保険」です。4月~翌3月の一年度分をまとめて、会社が6/1~7/10の期間中に精算&前払いする仕組み。
 ぶっちゃけ、全事業所の全従業員の賃金台帳や全工事系の請負契約書等を全添付し全照会をするわけではないのでぇ、ほぼ自己申告。なので、だいたい11月以降になると労働局や労基がサンプリングチェック的なことしてるし、こんな風にさらに個別に会計検査院も入って二重に不正抑制しながら自己申告して頂いてるかんじ。

 ではここから意訳しつつ解説を引用しますと 「これまでは主に被保険者もれ(←いわゆる従業員の保険加入もれ)を指摘してきたが一括有期(←ざっくり建設関係の労災単品と思ってください)の算定誤りの指摘は初めてである。検査院調査官は定型案件でも常に新規の着眼点・検査対象・方法を探索し研究している。その一端が垣間見れる」 っていうドヤ顔見え見えコメントでまたまた私は大笑い。
 私が担当してない年度の検査ではその宝の山に手を付けられたんですね~、存在意義の威光を示すのになんか必死ですね~、という感想がまず浮かんですみませんwww
 
 限られた一年度期間中の確定申告に、入れ替わり立ち替わりする会社の事務担当者を相手に、どこまで鉄壁の正確さを貫けるか・・・という現実をちょっと思い出しました。
 ハナシはズレるんですが。
 とある大手企業さん、保険のたて方を変えたら実は高額な節税になることに気付いて・・・一応、やり方をお教えしたけど。全国各地の職安と労基を相手に(すみません、どうしても中には詳しくない担当もいるから。話がピンと通じない可能性もある裏ワザ的方法だった)手続きいっぱいしなきゃだし、取り組めたとしても翌年度以降になりそうだったのどうなったかなぁ。(これはその業種の多展開会社のとても特殊な例で、事務処理の規模的に担当者さんもちょっと上司に相談します状態に。申告制の税金ってこうやって?吸い上げられて?皆の役に立って?るのですね??をなんとなく感じた次第。うまく説明できてないけど・・・)

<同一申請代理人の助成金不正受給が発生、後追い調査で22件4300万も追加発覚>等
⇒こちらも上記同様、検査院の目の付け所が功を奏しました的な紹介事例でした。けどま、不正した人物が関わったの全部ほじくり返したら他にもわいて出てきますよね普通。
 あんまり詳しいこと言えないけど、不正者が出たからってエラーメッセージがシステムで出るように組まれてないし。必ずしも全てがクロとも限らないし。後追い調査もなかなか大変です。

 正直、様々な限界要因があって。
 グレーゾーンな申請に悔しい思いをしたり、目をつぶるとこは流したり、私もしてきました。(不正加担とかじゃ決してないですよ? 天に誓って! 逆に怪しいセンサーが働いて支給決定差し止め大成功の事例もありますし)

 あと、ほんと実際に事業所さんに「これしたら助成金もらえるからウチに任せませんか」って持ち掛ける奴ら山ほどいます。「勧誘の電話あったんですけど」って相談も受けましたね。ヘタ打ちゃ連座です。よくよく助成金の取扱元窓口に仕組みを尋ねて、持ち掛け相手をしっかり判断して下さい。
 従業員も、勝手に印鑑作られて勝手に名前使われてるとかありますからね。(こういう分野で印鑑や署名の省略をやるのは愚の骨頂だからな、政府!)(←印鑑やめましょう運動のさなかで迷惑した)

 これは不正ってわけじゃなくどうしようもなかった思い出なんですけど・・・。

 とある都内の弁護士事務所ォ。全国あちこちの会社をひっかけちゃぁ代理人になって助成金の分け前せしめてましたからね⁈ 私の許せないポイントは顧問契約みたいなのするから、実際に助成金受給するまでその事務所には会社から毎月お金が入るってんでわざと事務処理を遅らせてたとこ!! 支給決定がこない会社さんから「まだか!」って怒りの問い合わせがこっちに飛んでくるけど、調べたらうちの部下がちゃーんと代理人に「コレが不足してるから会社からもらって追加提出して下さい」って何度も何度も督促済みのばーっか!(というか代理人判明した時点で我々はあぁあの牛歩作戦弁護士な、で解決してる) 中には「なかなか連絡つかない弁護士で困ってたんでもういいです」って委託料払ってるのに自分で進めて完結したとこもあり。かわいそう。なんのための代理人委託料。最初から通さずにやれば助成金の100%が会社の雑収入になるのに。
 その事務所の人件費がそれで賄えてるのならこれもある意味では失業対策なの?
 あと雑な言い方すると、これ系の申請って本来は弁護士でなく社労士の専売特許的な分野なので、営業妨害というか市場侵害というか・・・。

 要領上では排除できない制度設計なんで、指摘通りなんらかの見直しに期待。

<実態を上回る助成:25事業主に対し約17億円も超過、見直しを要請>
⇒ほんとにただの制度設計ミス。これが、コロナで休業した皆さんの?会社の懐に流れ込んだ税金のほんの一部です。
 歩合制の労働者だっているけれど、とりあえず、こういう算定の仕方でこの支給率で助成金を払おう!とドタバタで臨時改正を続けた結果・・・ちょっと業界ピックアップして調査しただけで、ほんとは発生してなかった従業員の休業手当に17億円も上乗せ支給したことが一部判明しましたってハナシ。

 途方もねぇぇぇぇぇ。
 こんなじゃぶじゃぶ税金垂れ流すために私らあんな残業しまくってたのかと思うと、虚無るぅぅぅぅぅ。
 いやまぁこれでね、日本は失業率も悪くならずにね、ある程度の雇用は守られましたから。(但しブラック企業や本来自然淘汰されるべき会社も守って人材の囲い込みも生じてることも意味する)
 でもさ。ちょい調べて17億節約できたとかさぁ、もう、なんか細々こまごま税金搾り取られて日々節約してる毎日がほとほと悲しくなりません?(そんで政治家は裏金ウハウハですかぁいいですねぇ)

 そう、何度も言うけど「休業手当への助成」の枠内でやるからこう思っちゃうんだって。
 果たして雇調金の名前と仕組みを借りてコロナ対策したのが良かったのかって論点。
 日本国民として、国の予算運用がこれでいいのか。まずは意識を、アンテナを、広く向けていたいものです。

 とにもかくにも、解説コメントの〆「危機対応下だったとはいえ制度設計が甘い」 この言葉に尽きますね。

<コロナ支援金 31局1億6000万の重複支給や、架空請求により6事業主が1億3000万の不正受給など、相次ぐ>
⇒えーと、自主的な不正調査で令和2・3年度で全国716件/約66億円すでに確定したところ、さらに新たに約3億円も判明したってゆー事例。
 エグイ。
 わかってたけど。こうして一部の数字を見ただけでもエっグ。
 あくまでも調査終了しただけの分で当時確定したものだけなので、潜在的な総額はお察し下さいwww(察せられるか!この莫大な金額!)

 解説コメントを意訳引用しますと 「厚労省は支給を迅速化するため申請書類や審査の簡素化を行う一方、事後確認に取り組むことで適正な支給を確保するとしていたが、甘さが露呈した」「不正受給対策チームの職員は、窓口の受付や申請書類の審査も兼務していて、膨大な書類チェックに追われ、事後確認まで手が回らないというのが実情ではなかろうか?」 もう、マジでおっしゃる通りなんです!!ほんにそれが実情。もっと言って!!!
(でもぶっちゃけ、あんたら?検査院の相手とお手伝いも我々が合間でやらなきゃいかんからそこでも時間奪われるんよー(笑顔))

 投稿済みの『コキ使われてもぉキレた!退職決意からの大収穫』に書いてますが大事なことなのでハイもう一度。
 私の所属局では、平時なら1で10件くらい申請がある程度の助成金でした。それが、コロナ下では1で400~600件の申請になりました。正規職員に関しては一人たりとも増員されてません。10人未満のままでした。調査官があとの年度になって二人増えたくらい?
 終・わ・る・か!!!!!!!!
(手続きに来た事業主の奥様が「あなた達、こんなに沢山の書類の中でがんばって・・・」と声を掛けて下さったエピソード思い出しただけで、今でも泣ける)

 重要な解説コメントを〆に引用させていただきます。「支給後のチェック強化で不正抑制する方針なら、ペナルティーとして罰金を科し企業名を公表するとともに刑事告発すべきである」
(不正受給処分を科したら記者発表してるよ。ただ、やはり制度上、その土俵にまで持ち上げるのがめちゃくちゃ困難!!! 性善説の立法なのかな、我が国は。不正の定義を追加する必要があるんだ・・・) 

<コロナ病床確保交付金、55億円過大受給>
⇒こちらもコロナ関連として。助成金のプロフェッショナルな我々?!?の部署でも上記のように何十憶と誤払い発生してるのに・・・。急遽出来た制度をいきなり運用させられる場合のお金の流れなんて、まぁこんなもんなんでしょうねぇ。
 解説コメントも「この補助金を受けながら患者を断り黒字化した病院もあると言われており、これほど大量の過大受給を見せられると病院に対する不審が膨らむ」と、苦い顔してるのが浮かぶよう。

 医療関係費に関しては、働く世代を圧迫してるイメージも強いですしね。使わない湿布や薬を貯めこんでる老人たちのイメージも強烈。(痴呆や病気で管理できない場合も含めて)
 どうせ国のお金だと思っても、それって我々国民=自分自身の血税だと思うんだけど。
 キリがないから気にしたら負け、のような気がしてきました・・・。

<公的統計の整備に関して:令和3年3月時点でいわゆる失業保険等の追加給付費合計のべ170,334件で11億2491万円>
<外国人の留学生・実習生の状況把握不十分:半年で行方不明事案が3,639件>

 ⇒これも自分の業務で多少なりとも噛んでたので・・・記載の数字そのまま引用してみました。なんか、なんかね、もう笑うしかないよねー。

 一つ目のは、統計調査が正しくなかった→統計を根拠に定めてた計算は間違ってんじゃね?→再計算したら不足じゃん、1円だろうと誠心誠意払わな!現場やっといてー事案ですね。(これは完全に下っ端として末端の事務処理した自分目線の説明www)

 二つ目のは、読んでて私がゾッとしたのは「件」表記だったこと。
 これって一件で複数名行方不明になるから「人」ではないのだと思うんですよ。
 ってなると、留学や実習の名の元に入国して日本のどこかに散ってった外国人が少なく見積もってもたった半年で3639人以上いるって意味ですよねぇ。言っちゃ悪いですけど、治安が心配になります。いや、出国してないオチな可能性も含むと思うけど。
 そしてこれは各省共通項目なので<法務省・文科省・厚労省・外国人技能実習機構等>への指摘事例なのです。
 確かに、分野が違うので多岐の部署を跨ぎます。
 さぁしかし果たして、こういう縦割りで何をどう解決しましょうか。
 外国人関連は、入管と機構と連携してたのでその時点で限界を感じてましたけどね。あと事業主さんから「技能実習生が行方不明になったんですけど手続きとかどうしたらいいんですか」なんて相談は定期で受けていましたから・・・担当業務上すべき事務処理だけの案内を行うしかありません。あと付け加えるとして警察に言って下さい程度?

感想まとめ

 他にも国交省や防衛省の事例をいくつか読んで「へぇーこんな業務にこんな予算の使われ方があるんだ」と大変勉強になりました。普通に国の運営が見えてくる本として面白いのでオススメです。(全部読んだら眠くなる予感するし非売品だけどwww)
 なにせ検査院OB(←憶測)気質コメントもちょっと面白いwww

 検査院は癒着禁止・第三者目線のためにも独立組織。
 所掌してる職員でも本質を掴むの大変だったりするのに、普段やってない公務の内容の裏までわからなきゃいけないから大変だろうなぁと思います。
 どうせ期限付きで異動するのが公務員の常。何人かでも、院と各省庁の職員が双方人事交流異動したら・・・もっといい予算の使い方・チェックの仕方っていうのが洗練されたりしないかなぁ。あと受検準備するこっちの身にもなってくれ的なwww(結局、自分とこの帳簿じゃなくて会社さんとかの帳簿を借り上げることになりますからねー。管理も含まれて余計、大変なんです・・・)

 とまぁ公務から離れた今なので。
 思い入れのある項目中心に、相当、好き勝手書きました。。。
 改めて検査院のHPとか見たらちゃんと全報告書が掲載されているので、なんならマスコミもスキャンダルとかよりこういう部分を啓蒙報道してくれてもいいのになーなんて思ったりも。。。
(そして私が所属してたとこがぶっちぎり堂々一位の指摘額ぅ。「だから、こんだけ金を動かす忙しい部署なのにこんな脆弱組織体制なの、なんなん!」と声を大にして叫びたい)

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