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ポストカードと掌編と

ここ数日はずっと、サヴィニャックに愛を込めて、オマージュのような文章を書いていますが、

本日は、サヴィニャックのポストカードと、それに捧げる物語を、お披露目させていただきます。

と言っても、お披露目するには、推敲が足りず、未熟で、粗削りで、まだまだ拙い掌編ですが…。

まずはじめに、少年とチョコレートのポストカードから産声を上げた、一作目が☟こちらです。

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「ショコラティエ」

彼は、仕事をクビになり、彼女にも振られ、暗闇の中にいました。先も見えず、光も見えず、未来も見えない暗闇の中で、たった一人で泣いていました。そして今では涙も枯れて、心の中の葉っぱも枯れて、唯一あった一枚の希望さえ、いつしか風に飛ばされて、絶望の淵に立っていたのです。絶望の淵と言っても、逆巻く波が打ち寄せる断崖絶壁の岬ではなく、冷たい風が吹き抜ける、都会という名の見えない淵のことですが。そんなある日のことでした。ある女性から、可愛いリボンで包まれた、チョコレートをもらったのは。捨てる神あれば、拾う神あり。彼は早速、部屋に戻って、慎重にリボンを解(ほど)き、紙のパッケージを開いて、そのチョコレートを口に入れた瞬間、彼の中にビビビッと、青い稲妻が走ったのです。なんて美味しいチョコなんだ!僕もいつか、こういうチョコを作って、誰かを幸せにしたいなと。それからというもの、彼の心は見る見るうちに葉っぱで覆われ、春のような光に溢れ、絶望の淵も、美しい都会の街に変わりました。しかも、彼の隣りには、あの時彼を救ってくれた、優しい彼女までいるのです。もちろん彼が、ショコラティエを目指して、毎日努力を重ねているのは、今更言うまでもありません。

そして、牝牛と牛乳石鹸のポストカードから産み落とされた、二作目の短い物語が☟こちらです。

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「レーゾンデートル」

彼女は、陽のあたらない倉庫の中で、ずっと誰かを待っていました。だけど、待てど暮らせど、誰も自分には気づいてくれず、泣きたいどころか、いっそ死にたいほどでした。だから彼女は、最後に自分の証しとして、自分の全てを注いだ、ある作品を作っていました。自分が死んだら、誰かがこの作品を見て、自分を思い出したり、感じてくれたらそれでいい。それが、彼女の遺書であり、彼女が生きた存在証明(レーゾンデートル)なのでした。彼女は、最後の力を振り絞り、その作品をやっとの思いで作り上げ、深い眠りにつこうとした、その時でした。錆びた音を軋(きし)ませながら、倉庫の重い鉄の扉が開いたのは。真っ暗な倉庫の中には、春のように眩しい陽射しが降りそそぎ、その陽差しの中に、聖者の如く立っていたのが、貧しいポスター画家でした。その後、彼女は、彼と一緒に展覧会の会場へ。やがて、彼等は認められ、花の都の街角で、遅咲きの花として、華々しくデビューをするのです。心身ともに元気になった彼女はこうして、彼が描いたポスターの中で、人々の熱い視線を浴びながら、首を傾(かし)げているのです。

と言うわけで今回は、サヴィニャックのポストカードに、僕が書いた短い物語を添えてみました。

実際のエピソードに、僕の空想を織り交ぜて、もちろん、サヴィニャックの想いも込めながら。

願わくば、この物語が、逆境にいる誰かにとって、心を照らす微かな光になりますように。

書き綴(つづ)る絵葉書(ポストカード)の物語サヴィニャックその想ひを胸に  星川孝

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実はまだ、サヴィニャックのポストカードはたくさんあるので、この続編はいずれまた^_^


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