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記事集・K

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川端康成関連の連載記事、および緩やかにつながる記事を集めました。
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2023年11月の記事一覧

織物のような文章

織物のような文章

【※この記事には川端康成作『雪国』の結末についての記述があります。いわゆるネタバレになりますので、ご注意ください。】

縮む時間の流れる文章

 川端康成作『雪国』の終章の前半である、縮(ちぢみ)について書かれた部分には――「縮」だから「縮む」というわけではありませんが――縮む時間が流れています。

 この小説では、縮織は縮(ちぢみ)と書かれていますが、縮は産物であり製品です。

 たとえば、ある

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伸び縮みする小説

伸び縮みする小説

【※この記事には川端康成作『雪国』の結末について触れています。いわゆるネタバレになりますので、ご注意ください。】

観光案内としても読める小説
 川端康成作『雪国』の最後の章では――章といっても一行空けて区切ってあるだけですが――、冒頭で縮織(ちぢみおり)についての話が語られ、最後は火事の話で終わります。

 この小説では、縮織は一貫して「縮(ちぢみ」」と表記され、『雪国』の舞台となる地方の縮をめ

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相手の幻想に付きあう快感

相手の幻想に付きあう快感

【注意:この記事にはネタバレがあります。】

人見知りの人違い

 人の顔を覚えるのが苦手な私は人違いをよくするようです。たまにされることもありますが、するほうが多い気がします。

 いま「ようです」、「気がします」と書いたのは、確かめようがない場合がほとんどだからです。

 自分が人違いをしているらしいと思っても、本当にそれが人違いなのかを確認するためには、そして自分が人違いをされているらしいと

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