中納言は唐名を黄門と言う。権中納言だった水戸藩主・徳川光圀が水戸黄門と呼ばれる所以である。

早朝からすこぶる晴天のシドニー。
俺は横断歩道で信号待ちしていた。
いや俺だって信号待ちくらいする。

信号待ちと言えば、チャツウッドにいる中国人は信号待ちをきちんとしている。

日本人が、車が来ていなくてもきちんと信号待ちをするのは(多少の嘲笑も含めて)知られていることだとは思うが、俺にとってはちょっと意外だったことに中国人がきちんと信号待ちをしているのだ。

何だかとてもいい光景で、俺はいつもとても好ましくそれを見ている。
が、それはそれとして、ここからはきちんと信号待ちをする日本人の悪口になる。

不本意ながら…と言うのか言わないのか、いや言うだろう。言ってもいいだろう。言っても誰も文句を言わぬだろうことに、なんと朝から、
「肛門がグロかった」
と信号待ちの人間が話すのを耳にすることになった。そう日本語だ。

どうやら前の晩にその手のエロ動画を見たらしく、その出演者のそれがどうのこうの、という話だ。なんというか、朝からの話題のチョイスがみっと…もない(こうもんだけに…)。

おいおい、勘弁してくれよ、俺は日本語わかるよ、日本人だよ、と伝えるわけにもいかずに黙ってそれを聞いていた。全然全くこれっぽっちの1mmも1ミクロンも興味がないか、と言われるとそんに断固として強く否定もできない。

一体どんな奴が朝っぱらからこんなところで下ネタ話をしているのかとも思ったが、信号が変わるのを割とみんな横一列で待っていたから、俺が首をぐるっとそっちに向けると聞いていたことがばれてしまう。

その場でどんな奴かを確認することは諦め、信号が変わって一斉に歩き始めたときにスタートをちょっと遅らせて、斜め後ろから観察してみる。

特に特徴的な髪形も服装もしていない、めちゃめちゃ普通のワーホリ風の男女のカップルだった。幸い、かどうかは分からないが暫く目的地への方向が同じだったため、つかず離れずで歩く。

日本語なら分かるまいと高をくくっているのか、歩きながらでも騒音に負けないように大きめの声で話すのでこっちまでどっぷり彼らの話に浸かってしまった。

日本語が分かる人も存在するから、話題には注意をするに越したことはないですね。

せっかく爽やかな晴天のスタートだったのになんだかなあ、とかなんとか思いつつ職場に着いて、特に混乱もなくいつものように順番に仕事をこなしていく。

と、お昼はなんと、とんかつ弁当の差し入れをいただいた。
でんぐり返りをしたくなるほど嬉しい。ご飯の差し入れと言うのはいついかなるときでも嬉しいものである。そうではない、と言う人は大層なひねくれ者だと思う。

ランチを平らげ午後の仕事に元気に勤しんでいると、今度は夜の分のお弁当(からあげ弁当)の差し入れをいただいた。ボリューム満点。小躍りするほど嬉しいではないか。大切に冷蔵庫にしまう。

でんぐり返りと小躍りが両方出る日なんて滅多にない。ある、と言う方はご一報願おう。

さてさて、いいこと続きだなあ…とかなんとか思っていたら、
「これどうぞーっ」となんと今度は手作り和菓子の差し入れまでいただいた。

えーっ?!今日は一体何の日だ???
いや、まじで、今日はちょっとおかしい。

あまりに次々に差し入れをいただくので
不審に思ってちょっと考えてみたが思い当たる節は一つしかない。

今日はどっぷり朝から「うん」がついちゃっていたんだろう。
(こうもんだけに…)


あ、食事中の方からそうでない方まで、
汚い話ですみませんでした。

読んでいただいてありがとうございました。

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