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旅先で出会った器に”儚さと力強さ”を感じた。

食材から器を育て、
食材で器を彩る。

大学時代の夏休みに友達と函館に行った時の話です。なぜ目的地が函館になったかは忘れました。しかし、2大目的と言えば”函館朝市での海鮮丼”と”函館山からの夜景”であったことは間違いありません。

しかし、ですね。どう思い出を振り返っても寝ていた記憶しかないんですよ。

膝用枕完備。

朝5:00にすっぴんで向かった朝市。海鮮丼も驚きですよ。それからはるか12時間以上先の夜7:00の函館山からの夜景。いやあ、眠りました。一緒にいた友達も驚きだったと思います。あ、海鮮も夜景も素晴らしかったです。
(当時は外食出来ました)

そんな眠りこけていた函館旅行から3年後。今度のれいちゃんは香川県のとある離島を一人で訪れていました。

あまりにも余韻に残る旅先で、器に”生”を感じる素敵な体験に出会えた話を本日はしていきたいと思います。

目次
〇普段のお料理と器。
〇器って『お試し』が出来ないからなかなか難しい話。
〇旅先で出会った器に”儚さと力強さ”を感じた。
〇陶芸家の松下さんと松原さん。
ぼっち飯のぼっち皿にだって
ぼっちなりにこだわりはあります。

〇普段のお料理と器

似合わないドーナツの箸置きは
兄ちゃんがくれた宝物

普段から駅前出店のうつわ市や、食器屋さんはもちろんのこと。”ご自由にどうぞ”なんて書かれて食器が置かれている場所まで“いいのないかな”と覗き込んでしまうれいちゃん。購入するしないに関わらず、食器は見るのも選ぶのもその時間自体が好きです。

出来れば一人で。真剣に。

とうもろこし飯

こんなお料理と合うかな?”とか”この大きさはきっとれいちゃんの普段のお料理を乗せるのに丁度いいな”なんて自問自答しながら眺めたり、手に取ったり。

ここだけの話、1人暮らしをする時に1番こだわったのはお皿かもしれません。可愛い豆皿をうんと購入して。これからの自炊を楽しむためには最高の投資なんだからいいじゃん、と言い聞かせるくらいにはかなりの金額を投じたように思います(笑)。

〇器って『お試し』が出来ないからなかなか難しい話。

出張料理人れいちゃんさん。

ただ、お皿が持つ特徴として”お試しが出来ない”という難点があります。洋服や香水なら『試着』とか、『TESTER』といった購入前に自分に合うかどうかの採寸が可能です。だけどお皿はそれが難しい。手触りは分かるけれど、口当たりや料理を盛った時の状態は想像するしかありません。

実際に料理を作って、お皿に盛ってみて初めて全体像が見えたり。あるいは、料理を持ったお皿から頂いて初めてお皿の性格を感じ取ることが出来ます。だから、使い続ける中で愛着がだんだんと湧くことが多いんですよね。

「この料理君に盛ってもいい?凄く似合うと思うんだ」とか。

逆にお料理側から
「あのお皿に盛ってほしいな」
とご指名をを受けていたり。

テーマは“秋と夏のまんなか”

食材や料理、お皿と対話をしながら毎回お料理をするれいちゃんはそんな風に購入時より、購入後に使い続けるうちに器への愛着が湧くことの方が多いように思います。

けれど。先日訪れた香川の離島で出会った器の数々。彼らには使う前から器の持つ”息遣い”というか。息吹というか。””を感じました。

〇旅先で出会った器に”儚さと力強さ”を感じた。

写真からでも息遣いを感じます。
本当に。

香川の離島にある『ほとり』というお宿に泊まった時の事。共同調理であった夕食の準備をするために台所へ向かいました。まずはお米を研ぐ…となった時にお米の入っている器に釘付けになりました。

アリエッティみたいな台所

え。と声を漏らすほどに見た目から吸い込まれそうになるようなフォルム。

腕まくりまでして準備万端だったれいちゃんの腕はお米を研ぐという任務を忘れ、思わず器を持ち上げていました。まだお米も研いでいない、調理もしていない。けれど器が生きていて、その中でヒノヒカリ(お米品種)が喜んでいるなと伝わってきました。

少しザラつきがあって、けれどフォルムの柔らかさが食材を包み込んでくれている。このお皿、多分生きてる。

研いだお米は美味しい鯛飯に。
れいちゃんのお料理も盛り付けてみることに。
『長芋と刺身こんにゃくのワサビ醤油和え』

『ほとり』さんでは他にも、同じ陶芸家の方の湯呑みが2つありました。同じようで。似ているようで決して同じ性格ではない湯呑み。観た瞬間、その唯一無二な存在に”全く同じものはきっと二度と出来ない”と儚さを強く感じました。

静寂

温かいほうじ茶を早速湯呑でいただいてみることに。沈んでいく太陽を見ながらのひと時は最高でした。湯呑の口当たりもすごく柔らかかったです。

なんだかもうすべてが最高。

〇陶芸家の松下さんと松原さん。

並べ方にもこれ以上ない
センスを感じます。

島旅農園『ほとり』さんには2泊したのですが、実は当初は1泊の予定でした。しかし、オーナーの唐崎さんのご厚意で『もし器がお好きであれば、2泊目に陶芸家の方が来る予定があるのでもしよければもう1泊していきませんか?』とおっしゃっていただきました。

運よく2泊目+素敵な器を作る陶芸家の方にお会いできる、という特典てんこ盛りをゲットするに至りました。相変わらず運だけは抜群にいい。

2泊目にごろごろソファや縁側で本のつまみ読みをしていた頃、陶芸家の松下さんと松原さんがほとりにやってきました。

島内での展示期間ということで器が次々に運び込まれ、微調整を加えながら展示していく御二人。器同士の距離感や魅せ方の細部にまでこだわりを感じます。”この方たちが、あの器を育ててきたんだな”。

儚さと、力強さも感じます
野菜達も嬉しそう。

展示設置が少し落ち着いた頃、ほとりのオーナー唐崎さん。松原さん、松下さんの御食事時間に交えていただきお茶を飲みながら少しお話をしました。

普段、自分が家で使っている器は”使っているうちに愛着が湧いてくる”のに。どうしてお二人の器は使う前から息遣いを感じるのか。唯一無二なフォルムを儚いと感じるのか、それでいて力強さも伝わってくるのか。不思議で仕方なくて色々聞いてしまいました。

僕達は釉薬(ゆうやく)の原料に島で育つそら豆や唐辛子・ひまわりを使っています

全て“てしま”と呼ばれる今住んでいる島の素材を使いたくて

あぁ、だからだ。とすごく腑に落ちた感覚になりました。使っている素材が元々生きていたから、器になっても生きているんだ。と思いました。

普段、八百屋で働き自炊やお料理を振る舞う中で食材とは一期一会です。消費してしまったら味や思い出としては残っても、存在は消えてしまいます。けれど、お二人の器にはまだ食材の”生”が残っていて。れいちゃんのお料理を乗せた時に、食材同士が支え合っている感覚に似たものを感じ取ったのでしょう。

私の手料理も笑ってる。

ありきたりな表現ですが、素敵な方たちだな。良いご縁を頂けたなと思いました。お話をする中で他にも、陶芸窯には電気・灯油・ガス・薪の4種類があることを教えてくれたお二人。

素材本来を生かしていきたいので薪窯を手作りしているんです

その言葉通り、SNSでは日々薪窯づくりに励む姿が度々投稿されています。島本来の素材を生かし、器に映し出していく。料理では食べ終えるまでの”食材を生かす”ことだけ考えていたけれど、器として”食材を生かし続ける”と持続性も感じる。そんな素敵な経験でした。

君たちはどんな味付けになりたい?と
毎回対話します。

購入前から試すことは難しい。それでいてすごく器自体の存在に惹かれる、不思議な気持ちでした。次に島にお伺いした際は絶対に購入したい、それも待ちきれないから11月の益子市に行こう。静かに誓ったれいちゃんでした。

本日もお読みいただきありがとうございました。

れいちゃんのinstagram

てしま島苑さんinstagram

なお、現在さぬき広島において展示イベントを行っている模様です。気になった方は是非覗いてみてくださいね。

瀬戸内HOT広島プロジェクト

瀬戸内国際芸術祭2022の秋会期中、広島では、島在住の画家や陶芸家と連携したアートイベントをはじめ、島の自然や文化、住民との交流を体験していただきながら、讃岐広島・小手島・手島の魅力をお伝えします。

日時:9月29日(木)~11月6日(日)のうち土・日曜日、祝日の14日間

場所:広島コミュニティセンター、尾上邸、江の浦港周辺 など

内容:島に移住した若手画家や陶芸家による作品展示、島内外の児童・生徒の作品展示、記念品がもらえるスタンプラリー、体験ツアー、特産品の販売など
どこでもドアで行きたい。

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