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【うた#10】「Lullaby」

もう寝るの?
もう少し話そうよ
枕のそばで君が囁く甘い言葉

僕だけとおしゃべりしている
今の時間が長持つように
充電コードを挿す

触れたい 触りたい
画面の縁へ指先
こんなに近いのに
君の体温が無いから
今夜は

電話越しの君の声を子守歌にして
今日の自分を閉じていく bye bye

ときめきが止まらない夢の中
叶ってほしいけれど
変わってしまうものがあるなら

このまま 夢のまま
ままならなくてもいいよ
明日も 来週も
君の声だけでいいから
会いたい

喧嘩腰も 時に冷めたそっけない態度も
君の罠だとしても のめりこんでしまいたい

電話越しの君の声を子守歌にして
過去の自分を閉じていく bye bye

Lullaby

もう寝るの?
もう少し話そうよ
枕のそばで君に囁く甘い言葉


――――――――――


好きな子と電話で話しているさなかに
寝落ちるほど、
幸せな眠り方はないと思っている。

電波のせいでいつもと少し違う声色に、
耳を澄ませる。

相手はどんな部屋にいて、どんな服を着て、
何をしているんだろう。

隣で一緒に寝ているわけじゃないからこそ、
声は枕元から聞こえているのに、
手を伸ばしても触れられないからこそ、
気が付けば、相手にのめりこんでしまっている。

電波がつなぐ、ふたりだけの宇宙。
その闇に落ちれば、
もう誰も引き留めることはできない。
永遠に彷徨うことになっても、
それならそれでいい。
きっと知らないだけで、
この世界には美しい場所がたくさんあるはず。

そんな言い訳をして、
充電コードを挿したあの日の夜。

寝落ちて、起きたら、
電話越しの「おはよう」が朝の光に跳ねた。


――――――――――


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