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忘れ得ぬ人がいる。

――誰にだって忘れ得ぬ人がいる。ふとした瞬間に思い出してしまう人がいる。そんな幽霊のような存在を忘れたいと思っても、なかなか忘れられるものではありません。この『花火の幽霊』という物語の最後には、その方法が示されます。


人生は物語。
どうも横山黎です。

作家として本を書いたり、木の家ゲストハウスのマネージャーをしたり、「Dream Dream Dream」という番組でラジオパーソナリティーとして活動したりしています。

今回は「忘れ得ぬ人がいる。」というテーマで話していこうと思います。


この4カ月間、泊まれる謎解き『花火の幽霊~木の家ゲストハウスからの脱出~』というイベントの準備を続けてきました。僕の職場の木の家ゲストハウスを舞台に、「謎解き体験」と「物語体験」が味わえるコンテンツ。シナリオを書いたのは僕で、今回のテーマを「未練」にしたのも、他の誰でもない僕です。

これまでにも「未練」を描くことはあったけれど、こんなにも真っ直ぐに純粋に向き合うことは今までにありませんでした。現時点で自分の人生に横たわる大きなテーマのひとつは「未練」なんだろうなと予感しているくらい、僕にとっては永遠のテーマだし、むやみやたらに触れたくないテーマです。

今回はそいつを撫でるように、抱きしめるように手懐けながら、物語をつくっていきました。

ひとりで花火をすると幽霊が現れる。

この設定を思い付いてしまってから、たとえこの先どんな物語になろうとも、これだけは揺るぎないものにしたいという思いがありました。

ここでいう「幽霊」とは、記憶のなかの忘れ得ぬ人のこと。ふと思い出してしまうあの人のことです。もう会えなくても、どこにいるのか、何をしているのか分からなくても、記憶のなかで生き続ける。その実体のない存在が、幽霊と重なったんです。

ひとりきりで線香花火をすると、そんな幽霊のことを思い出してしまうものです。妖しく弾ける光に、時間が歪んで、あの頃の思い出が蘇ってくる。そのうちどこからかあの人の声がする。やけに鮮明に聴こえたけれど、振り返っても、あたりを見渡しても、その声の持ち主はいない。自分の心のなかだけに響き渡っていることに気付かされます。

『花火の幽霊』という物語では、「花火の幽霊」と名乗る声だけの幽霊が登場します。その幽霊からいろいろ謎が出されて、それを解いていくという流れなんですが、その果てには、言うまでもなく、「未練」が待っているんです。それについて嫌でも考えてしまう展開になっているのです。

誰にだって忘れ得ぬ人がいる。

ふとした瞬間に思い出してしまう人がいる。

そんな幽霊のような存在を忘れたいと思っても、なかなか忘れられるものではありません。この『花火の幽霊』という物語の最後には、その方法が示されます。

忘れ得ぬ人を忘れる術。

個人的には、これを掘り下げることができて良かったなと思うし、ここに謎解きの要素を絡めることができて良かったなと思っています。

僕にも忘れ得ぬ人がたくさんいます。今頃何をしているのかなと気になってしまう人、いつかまた逢えたらなと期待してしまう人、もう一度巡り合ってまた一緒に何かをやりたい人……数知れません。

そんな未練をどう解くのか。

青二才ながら、僕なりに答えを見つけて、それを『花火の幽霊』では描いています。伝えたいことを、作品を通して伝えることができる喜びをかみしめながら、最後の瞬間まで『花火の幽霊』という物語を楽しみ切りたいと思います。最後まで読んで下さり、ありがとうございました。

20240927 横山黎




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