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映画『オフィシャル・シークレット』感想

予告編
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 本日、10月21日は「国際反戦デー」

 そんなわけで、今日はイラク戦争を止めようとした女性の実話を基にした映画『オフィシャル・シークレット』の感想文を投稿しようかと。


……でも編集し終えてから気付きましたが、「国際」って付いてはいるけど日本だけの記念日なんですって。

 まぁ何にせよ、戦争反対。


 よければどうぞー。


誰のための正義 何のための政府


 イラク戦争を止めようとした女性の実話を基にした映画。当時、僕はまだ小学生で、イラクがどこにあるのかすらよくわかってはいませんでしたけど、学校に行く前、朝のニュースで「イラク戦争」というワードを目にしていたような気はします。その裏でまさかこんな物語があったとは露ぞ知らなんだ。

 要約すると、国家の悪巧みを知った諜報機関の人間が、国家機密と知りながらも情報をリークしたという話。「国家機密の情報を漏らす」という、自国に対する明らかな反旗を先に示してから、なぜそうなったかという経緯を少しずつ紐解いていくという点では、既に公開されている『ジョーンの秘密』(感想文リンク)と近い描かれ方をしている本作。共に同様のテーマの下で本来の正義を問うかのような内容、終わり方となっており、それと比較しながら観るのも面白いかもしれません。



 本作で一番驚いたのはクライマックスなんです。まず、物語の冒頭で法廷に立つ主人公・キャサリン(キーラ・ナイトレイ)が描かれ、そして時を遡り、そこに至るまでの経緯を描き出すという展開の本作。ド頭で終盤シーンの導入部分だけを描く、要するにクライマックスのチラ見せをして煽ってくるのです。近年で言えば、例えば『ボヘミアン・ラプソディ』(感想文リンク)でも同様の描かれ方がされていましたけど、この手法は否が応にも「このシーン(チラ見せされたシーン)に本作の見どころがあるに違いない」と思わせる力を持っている。本作で言えば「後半で熾烈な法廷バトルが巻き起こるのでは?」といった期待をさせる。しかも法廷に向かう階段が若干薄暗く、ちょっとばかし角度が急なために「ここから先で描かれる戦いの過酷さを示しているのでは?」とすら思わせてくるんです。

 だからこそ、ラストの展開には驚かされた。裁判に臨むまでに、主人公キャサリンは弁護士と何度も作戦を練っていた。相手方の主張を予想し、自分達の主張の正当性、逆に相手方の主張の矛盾や不当性を指摘できるよう話し合いを重ねてきた。そこでの内容は「おいおい、ここでこんなに白熱しちゃって、この後の法廷シーンはどうなっちゃうんだ?」と感じるほどに面白い議論だった。

 繰り返しになりますが、だからこそ、冒頭のシーンに戻ってきた時に驚かされる。期待を裏切る。是非そこを楽しんで貰いたい。
……煽りすぎかな笑? ネタバレになってたいたりするかな? すみません。やっぱりそんなに期待しないでください。観終えた直後の興奮の勢いのままに感想書いているんで、多少オーバーになっている気がします。



 本作の主人公キャサリンは勇敢だと思います。同じ境遇に立った時に彼女のような行動ができるのか。善悪に関わらず政府に逆らうことを想像すると、恐怖しかない。その勇敢さの源とも受け取れる、彼女の諜報員としての姿勢を表したセリフ——「私は政府ではなく、国民に仕えた」——は本当に素晴らしい。劇中で彼女の同僚が言っていた、キャサリンに対する賛辞と懺悔はよくわかります。キャサリンに対する尊敬の念、そして黙って見過ごすことしかできなかった自分自身の情けなさ、或いは彼女一人に担わせてしまっている気がしてならない罪悪感など。特に前者に関しては、劇中の会話として描くことで、作り手が人々の想いを代弁しようとしたんじゃないかとも思えてくる。


 まぁ取り敢えず僕に言えるのは、僕には政府に逆らう度胸は無いということ。日本ではどうだかわかりませんが、彼女が政府にされた仕打ち(どこまで脚色されているかはわからないけど、あくまで本作で描かれていた内容)を見る限りは微塵もね。

 そして本作は、その仕打ちの描き方も面白い。飛行機が飛び立つんじゃないか、止められないんじゃないかという緊迫感を生み出している中、一転、その場に駆け付ける彼女を映すシーンへと変わり、それを引きのアングルで捉える。この引きの画で彼女が小さく映ることによって、政府に抗う彼女の一人間としての無力感というか力の小ささを浮き彫りにさせるのと同時に、引きのアングルによって広くなった視界の奥に、飛び立つ飛行機を映すことで「飛び立ってしまった」というショックをも同時に描いている。もっと言えば、小さく映された彼女の存在が、逆説的に政府という見えない脅威の大きさを観客に想起させているとも受け取れる。



 「誰かに見られているかも」と思わせるようなドキッとさせる仕掛け、全体的に暗めな調光の画面、窓が無く(←機密情報を扱う施設なので窓が無いのは当然かもしれませんが)照明が少ない職場など、ポリティカル・サスペンスの緊張感を磨き上げるディテールの数々に、観終わった者に疑問というか議論の種を植え付ける締め括り。色んな魅力が詰まった一本です。


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