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映画『ブレット・トレイン』感想

予告編
 ↓

R-15+指定


 昨日、映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』の感想文を投稿しました。いやホント、ブラッド・ピットがかっこよくてねー♡笑

 ということで本日は、ブラピ繋がりで思い出した本作『ブレット・トレイン』の感想文を投稿しようかと。


 原作は、作家・伊坂幸太郎氏の『マリアビートル』という小説なのですが、それは未読……。そんな男の感想だと思って、気軽に読んで頂けたら嬉しいです。



ネオ東京感


 どことなく漂う古めかしさ。「何が」って言われると上手く言えないんだけど、“海外の方がイメージするであろう日本像” っていう感じ。

最先端なのにオリエンタルで、ハードウェアは小綺麗なものが多いのに、ふと視点をずらせばどこか下町情緒というか雑居感も残っていて……、日本の認識がどこかの時代で止まったままアップデートされていないような、はたまた、老いも若きも混在している感じ……。

近年で言うと『アベンジャーズ/エンドゲーム』(感想文リンク)での若干古臭い日本の描写を目にした際に、「マーベルスタジオですら日本の描写ってこんな感じなのか」と小さな落胆を覚えたのは記憶に新しいですが、殊、本作においては、現代の日本とは幾許か異なる世界観との相性は非常に好かったと思います。パラレルワールド感というかさ。僕はこういうのを〈ネオ東京感〉って喩えたりするんだけど、この独特な雰囲気だけで楽しくなってきちゃうんです。そこで繰り広げられるのが殺し屋同士のいざこざというね。もうこれだけで既に〈最高〉の気配しか感じられない笑。

(まぁ、こういう日本描写を良しとするのかどうか、というのもわかります。苦手な方もいらっしゃるでしょうし、僕自身、一概に是とするのもどうなんだろうかと思うこともあります……。)



  物語を彩るポップミュージックもすごくイイ。『Stayin’ Alive』が流れる予告編を観た時に、「わぁ、なんかメチャクチャ面白そう! でも『スースク』一作目の予告編の時のQueenと 一緒で、この選曲は予告編だけの仕様なんだろうなぁ……」と思い込んでいただけに、冒頭から流れ出した時は興奮してしまいました。何よりシーンとピッタリ合っているのが良い。しかもアヴちゃんが歌ってたんだね。全然気付かなかった。他にもあれもこれもと感想を言いたいところなのですが、「ここでこの曲が流れるのか!」という驚き(喜び?笑)も一緒に味わった方が楽しいと思うので、ここでは割愛。気になる方は是非ご鑑賞を。



 本作の各所に散らばる「そんなわけない」感。或いは日本人だからこそ気付く、「日本のドコにこんなのがあるんだ笑」とツッコミたくなるようなおかしな不思議な日本の描写。それを “ナシ” から “アリ” に変えてくれるのが先述の〈ネオ東京感〉。  その異質さは、暴力・残酷シーンを極めてポップな様相へと錯覚させる。若干説明的だったり、フリや仕掛けの見せ方がこれ見よがしだったりした序盤のシーンを少しトロく感じてしまいましたが、そこでの丁寧なフリが活きるのもネオ東京だからこそ。あからさまなフリがバチッとハマった瞬間「キター!」「待ってました!」という気分になれるんです。


 そんな本作のアクションシーンも凄く楽しい。クサい程に雰囲気たっぷりの殺し屋たちとの戦いが、幾つもの〈運命〉によって泥臭くなる。決して綺麗には収まらない。主人公が飛び抜けて強いわけでもないというのも相俟って、お互いに必死で殺し合う。そこにスマートな要素など皆無に等しいのだ。本作で描かれる〈運命〉の数々が、殺し屋たちにカッコつけさせない。どこか偶然のフリをしながらも、何もかもが因果応報的に描かれていく数々の〈運命〉こそ、本作の一番面白いところなのかもしれません。



 作風で言えばシニカルな表現やキザな言い回しが似合う雰囲気なのにも関わらず、たとえば死にそうな相手に「水いる?」などと、皮肉ではなく素直に聞いちゃう感じとか、騒ぎにならないように死体を誤魔化そうとする姿のマヌケ感とか、日本のハイテクなトイレ事情に興味津々な感じなどなど。何かとツイていない主人公・レディバグ(ブラッド・ピット)は、要所要所で可愛げや愛嬌みたいなものが勝る。まぁこれもまた魅力ではあるんだけど、それ故にカッコよさが薄まって見えてしまうこともある。しかし、そんな男 “だからこそ”、最期の最後にはカッコよく見える(気がする)のだ。この魅力は観てみないことにはわからない。


 作中で幾度も語られた〈運命〉についての話。偶然など無く、全ては繋がっていて、それは運命であるのだと。本作で描かれる巡り合わせの全てをフィクション特有のご都合主義と片付けることも可能だけど、万物にはそれぞれに歩んできた道があるもの。偶然その場に転がっていたかのように見えるペットボトルを、まるでそのペットボトル目線で捉えたかのように映すシーンも然り、どんなモノにもそこに至るまでの道程がある。一概に語り切ることは出来やしない。重要なのは〈運命〉の捉え方。フリの一つ一つがご丁寧に説明的だったのも、全てが “偶然ではない” からこそ、それぞれを軽んじていないことの表れなのではないか……。


 我ながら何を言っているのかよくわからなくなってきたけど笑、一つのブリーフケースに振り回され、タイムラインが錯綜する本作から感じられた独特な後味に、どこか『パルプ・フィクション』(感想文リンク)のような味わいを覚えたり、或いは泥臭アクションやキャラクターの色味とポップミュージックの取り合わせに『ガンパウダー・ミルクシェイク』(感想文リンク)のような雰囲気を感じてみたり……。普通に楽しいエンタメ映画なんだけど、気取ったようなカッコよさも滲んでくる、そんな一本でした。


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