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映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』感想

予告編
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PG-12指定


過去の感想文を投稿する記事【46】


 先日投稿した映画『パルプ・フィクション』感想文の中で、クエンティン・タランティーノ監督の生誕60周年を記念して、映画『パルプ・フィクション』が3/24(金)から一週間限定で全国上映されるという話をしましたが……、観に行った方はいたのかな?

今日は、同じくクエンティン・タランティーノ作品から『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』の感想文を投稿しますー。


もう4年くらい前の感想文になるのかな? 過去の見解にはなってしまいますが、もしよろしければ読んでくださいな。


悪友


 とにかくもうブラピのかっこよさよ! もちろんメイクや演技のせいもあるかとは思いますが、序盤のうちは正直「老けてきたなぁ」と思っていたのに、結局「やっぱかっこいい……」となってしまう。若手イケメンの追随なんて何のそのってやつです。ちょっとした振る舞いの一つ、例えばステアリングに手をかけたままピースするだけなのに何故こんなにもかっこいいのか……。この感想だけを切り取られ てしまっては個人的嗜好に思われてしまうかもしれないけれど、映画全体を通してブラピ演じるクリフが素敵に見えるように構築されているし、クリフがかっこいい程に面白く感じられるのが本作


 これまでのタランティーノ作品に比べて物語自体の起伏は少ないのかもしれません。でもメインの2人——リック(レオナルド・ディカプリオ)とクリフ――が色濃く、しかも対照的なために、それだけで充分な面白さがあります。むしろ控えめな起伏だからこそ2人の個性や魅力が存分に活かされていた印象です。



 物語の舞台は1969年——僕にとってはネットに流れる活字から想像することしかできないような、知る由もない時代。監督のインタビューでの発言からするに、この時代はおそらくハリウッドにとっての大きな変遷期。この潮流の変化に対応しきれず、結果的に “マックィーンやイーストウッドのようになれなかった” リック・ダルトンは、自身の俳優としての展望が見えないために、恵まれた機会や幸運にすら斜に構えてしまう捻くれ者に見えてくる。

一方で、そんな彼とタッグを組むクリフは、ハリウッドで働きハリウッドに暮らすリックとは対照的に、高速を乗り継いだ遠いところに居を構えていながらも、リック以上に自身の現状に満足しているように見て取れる。俳優とスタントマンという、ある種、光と影のような関係でありながらも心の在り様だけで言えばクリフの方が燦然と輝いている。それも圧倒的に。本来は日の目を見ない2人との比較としても登場していたであろう、当時活躍していたロマン・ポランスキー(ラファエル・ザビエルチャ)や前途洋々なシャロン・テート(マーゴット・ロビー)などにも引けを取らないほどだ。栄光から転落しつつあるリックとは違い、戦争から生き残ったクリフにしてみれば何事も十二分に満足するべき事象なのかもしれません。ブルース・リー(マイク・モー)に喧嘩を売られようが、スパーン牧場でヒッピーに囲まれようが動じないのは当然のこと。そしてブレないからこそ彼はかっこいい。なんだかどんどんリックが切なく見えてしまう(ここからの巻き返しも魅力のひとつではあるんだけどね)。無論、リックを噛ませ犬扱いしたいわけじゃないんだけどさ。



 実際にあったシャロン・テート殺害事件を基に作られた本作は、それ故に、最終的にはその恐ろしいシーンに向かって行くことを予測しながら観てしまわざるを得ない。盲目の牧場主に会いに行くだけのシーンでドキドキさせられたのは、そんな理由もあったのかな? でも、先述のブルース・リーやシャロン・テートをはじめ、マックィーンやロマン・ポランスキー など実在した人物が多数登場していく中、オリジナルキャラクターである主人公2人の存在が、「もしかしたら何かを変えてくれるかも」と思わせてくれる。そして迎える最高にスカッとする爽快、痛快すぎるクライマックスは是非とも実際に観て欲しい。直前のセリフが直後のシーンの状況を暗示していたり揶揄していたり、はたまた行為や画角を反復することで意味を持たせたり等のストーリーが入り乱れる感じや、キャラに色気を持たせるような独特のセリフ感、その他バイオレンス描写などなど、タランティーノ作品らしさと目新しさが見事に融合していたと思います。


 日本には良い言葉があるな、と思ったんです。言葉そのまんまの意味としても捉えられるけど、日本語においてのそれは、時に逆の意味としても用いられることもある。含みを持たせる粋な言い回し……いや或いは、あまのじゃくとか照れ隠しというヤツかも。

その言葉は、対象とするその人に向かって直接言うと不自然に聞こえてしまうから、日本語字幕も実際にはセリフの直訳だったけど、ラストシーンでリックが口にした「いい友達だ」とはつまりそういう事なんじゃないかな。初共演とは思えぬ最高のバディ感。でも初だったからこそ心の底からその言葉が沁みてくる。


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