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映画『SING/シング:ネクストステージ』感想

予告編
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U-NEXTとかアマプラでも観られるので、字幕版と吹き替え版を見比べてみるのも一興かと。

日本語吹き替え版ならB’zの稲葉さんの、原語版ならU2のボノの歌声が味わえます。


歌とは


 めっちゃくちゃ迷ったよ!  ……字幕で観るか吹き替えで観るかを笑。
いやまぁ、結局のところ両方観るんだけども、“どっちから観るか” って重要じゃないかと。基本的には字幕派だし、ほとんどの場合「DVDリリースされるか配信開始したら吹き替えをチェックしよう」ぐらいなんだけど、今回はB’zの稲葉さんが出るって聞いたからさ。何より、前作の『SING/シング』を劇場で観ていないことを酷く後悔していたのよ。だから今回は絶対に字幕版も日本語吹替版も両方観に行くって決めていたんです。もう映画を観に行くというか ”コンサートを観に行きたい” みたいな感じかもしれません。


 こういうタイプの作品って、好きな曲、或いは知っている曲が流れるだけでちょっと嬉しくなるものですが、前作同様、単に良い曲ってだけじゃなくて、使い方も素敵だからより楽しい。使用されることを事前に知っていた曲も、そうでない曲も、共に。

お馴染みのメンバーがプリンスの『Let’s Go Crazy』を歌うオープニングアクトも、ジョニーを演じるタロン・エジャトンあってこその選曲なんじゃないかとすら思えてしまいます。彼の出世作の一つである映画『キングスマン』シリーズの二作目『キングスマン:ゴールデン・サークル』(感想文リンク)でも、ド頭に同曲が用いられていて、”シリーズの二作目の冒頭””(前作同様に)イカれていくぜ!という、作品の姿勢を示しているかのような内容の歌詞” といった本作とリンクする要素が、ついつい想像を膨らませてくれる笑。

また、同じくジョニーの歌唱シーンで言えば、舞台本番の一発目がコールドプレイの『A Sky Full of Stars』ってのも良い。歌詞としては言葉にされていないんだけど、この曲のMV内で、「I have a dream」って書かれた壁が映る瞬間があってさ、物語の展開とかも相俟って、めちゃくちゃエモさを感じるのです。『Let’s Go Crazy』も『A Sky Full of Stars』も、それどころか他の曲も全て偶然かもしれないけど、作品の、或いはキャラクター達の(はたまたイルミネーションスタジオの?)明るい雰囲気のおかげで、前向きなイマジネーションがどんどんと湧いてくる

(ちょっと独りよがりな気もするけど笑)こういう楽しみ方もあるから、使用される楽曲は事前に全部調べときたかったんだけど、何も知らない状態で観に行って新鮮な気持ちで楽しみたいという想いもあって……う~ん、ここも悩ましいところ。そういう点で言えば本項は既にネタバレになっている。

 というわけで、この後もネタバレ注意です、悪しからず。



 まぁ一番の見どころはやっぱりU2の『終わりなき旅』じゃないかと。ボノが歌うってこと自体にも価値はあるんだけど、そこに到達するまでの流れがとても素敵。アニメーションだからこそ可能な色とりどりの舞台演出、煌びやかな衣装、録音だから可能な音とアクションのシンクロ等々……。様々な形で歌を魅力的に描いてきた本作でありながら、この『終わりなき旅』だけは ”アカペラ” という歌唱一本槍から始まる。キャロウェイに出演を交渉しに行った時と同様に、引っ張り出すというよりは、無理強いせず、寄り添って、歌に気持ちを込めることで真摯に想いを伝えようとする姿勢が、とても美しく感じられます。そして観客を巻き込んでの大合唱、その直後に流れ出すあのイントロ……。映画館だから大人しく静かに観ていたけどさ、心の中では、物語内のお客さんたち同様に立ち上がって歓声を上げていた。


 15年間も隠遁生活を続け、自身の楽曲を歌うどころか聴くことも無かったというキャロ ウェイ。当初は出演に対して「歌えるわけない」と断り、いざ出演を承諾しても直前になって「やはり無理だ」と言っていた彼だったが、見事な歌唱を披露してくれた。

……正直な話、15年ぶりの歌唱で上手く歌えるかどうかなんてわからない。けれど、これは決してフィク ションによるご都合主義だけじゃないとも思う。というのも、過去のあるインタビューでボノが答えていた内容――何年か前に公開された『パヴァロッティ 太陽のテノール』(感想文リンク)というドキュメンタリー映画でボノが語っていた “歌” についての話――が思い起こされるから。世界的なテノール歌手であるパヴァロッティについて「全盛期の方が上手かった」「昔の方が高い音が出ていた」というオペラ批評家の意見に対し、ボノが「こいつら、歌を何もわかっちゃいねえ」と一蹴していたんです

上手く言葉にできないんだけど、この言葉には歌の真髄が詰まっている気がしてなりません。そんなボノが歌っているという事実が、このクライマックスでの歌唱に説得力を持たせ、このシーンをより力強いものにしてくれていたんじゃないかな。歌を主題にした作品で、“歌”、そして “SING/シング”——“歌う”——ということの真の魅力を表現してくれた印象です。


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