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映画『キツツキと雨』感想

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過去の感想文を投稿する記事【60】

 明後日、5月23日(火)にWOWOWにて放送予定の本作。

 ……感想文の最後に、ラストシーンについて「僕の駄文なんかではなく実際に御覧になって感じて頂きたい」だなんて生意気なことを書いていますが……、正直どんなラストだったかあんまり覚えてない💦笑

いや、なんとなく素敵なラストシーンだったなぁ、ぐらいには覚えているのですが、果たしてこの感想文を書いた学生当時の自分が指していた見どころと合致しているのかどうか……。

 まぁ今更ですが、そんな想い出を確認するきっかけにもなるから、感想文を読み返すのは面白い。


構図の妙


 沖田修一監督の前作『南極料理人』(感想文リンク)は、反復する中で変化を浮彫りにさせるような演出が活きていた印象があります。人によっては作品内で幾度も見受けられたそれを、物語の舞台がかなり特殊というか限定的だったために、意図した以上に必然的に生まれただけ、と思われちゃうかも……。けど、個人的にはそんなことはないと思っていまして。それは本作を観ればよくわかる。本作では変化の上での反復、或いは反復の中にある変化といった二つの要素をこれでもかと有効活用しているんです。

ちょっとわかりにくいというか、建前上こういったカッコつけた物言いをしてしまいましたけど、大して小難しい話ではなく、誰もが気付けるような素敵な見せ方。温泉に浸かるシーン1つで、言葉や表情以上に2人の距離感の変化が窺い知れたり、将棋を打つシーンでも、相手が違うだけなのに2人の心情の変化とかが感じ取れる。そんな感じ。



 今回特に好きなのが、以上の内容にも同時に存在しているけど、画面に映る2人の関係性や姿勢・心情とリンクした構図。本作は岸(役所広司)と幸一(小栗旬)、そして岸と浩一(高良健吾)に象徴されるように「2人」という関係性が重要になる。

例えば物理的に近づくことで、心情としても幸一にベクトルが向いていることを教えてくれる温泉のシーンなどは、「2人」を印象付ける構図がとても多い本作だからこそ活きてくるし、意味があると思います。


 中でも!  個人的に割れんばかりの拍手を送りたいのが、「帰っていいか?」のシーンと、弁当を食べるシーン(文章だけで伝わるかなぁ……。自信無いけど頑張って書いてみよう!)。前者のシーンで岸が幸一に詰め寄った際に「帰って良いですよ」と何となく上から目線で言われるのと同時に、実際にちょっと高い位置から言われていたのが、まさに当初の2人の関係性。

けれどその後の弁当を食べるシーンではそれ(立ち位置。高いところにいるか低いところにいるか)が逆転し、幸一が地べたに座り、岸が監督の椅子に座っている……。事実、幸一は「今ので良かったのか」などと撮影シーンの確認をしたり、クライマックスでも岸が心の拠り所に近い存在になっていたように映っています。2人の間に生じたこの絆にも似た不思議な関係性を構図だけで物語る見せ方がとても素晴らしい。決して派手とは呼べない地味なポイントだけど、作品の落ち着いた雰囲気にもマッチしている大好きなシーンです。


 そんな本作はラストシーンでも構図の妙による素敵な瞬間が描かれるんですが、それは是非とも僕の駄文なんかではなく実際に御覧になって感じて頂きたいです。


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