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鼠径部痛と大腿直筋–大腿直筋の走行理解と形態特性–

患者さんが鼠径部痛を訴えられた場合、まず何を考えますか?

今回も筋肉についてまとめていこうと思いますが、みなさんは上記のことを聞かれたらなんと答えますか?

答えは様々あって良いと思いますが、私の場合は大腿直筋反回頭のインピンジメントを疑います。

大腿直筋反回頭って何?って方もいらっしゃると思うので、解剖学から解説していこうと思います😊

大腿直筋反回頭の解剖学

大腿直筋の解剖学

【大腿直筋】起始:下前腸骨棘、寛骨臼上縁
      停止:脛骨粗面
      神経支配:大腿神経L2,3
      作用:股関節屈曲、膝関節伸展

大腿直筋の解剖学は上記の通りになります。

今回のタイトルにもあります、大腿直筋反回頭は?と言いますと、

大腿直筋の2つある起始の内、寛骨臼上縁から走行している線維が大腿直筋反回頭とされています。

因みに、下前腸骨棘から走行している線維を直頭といいます。


大腿直筋の起始は3つ存在する

上記で述べた大腿直筋の起始は、下前腸骨棘と寛骨臼上縁でしたが、実はこの2つ以外にもう一つ起始が存在しています。

それは、third headと呼ばれる線維になります。

このthird headは、小殿筋腱と腸骨大腿靭帯を起始に持つ線維とされています。

つまり、小殿筋の緊張によって大腿直筋(third head)の緊張も助長されることが予想されます。

出典:TUBBS, R. S., et al:Does a third head of the rectus femoris muscle exist?.Folia morphologica,65(4),377-380,2006.

となると、この3つの線維それぞれ分けてアプローチすることができると治療の幅がグンッと拡がるはず。


反回頭と股関節屈曲角度

上記で述べた直頭と反回頭は股関節屈曲角度によって線維の張力が変化します。

直頭の場合は、股関節屈曲0°において筋腹に対して直線上(大腿骨に対して平行)に走行するような位置をとります。

反回頭の場合はというと、股関節屈曲90°において筋腹に対して直線上(大腿骨に対して平行)に走行するような位置をとります。

出典:江玉睦明,他:大腿直筋の筋・腱膜構造の特徴 ―肉ばなれ発生部位との関連について―.厚生連医誌 第21巻 1号,34-37,2012.

つまり、立位のニュートラルポジションにおいて直頭は伸張位となり、しゃがみ込みや階段昇降などにおける股関節屈曲動作において反回頭が伸張位となります。


鼠径部痛と反回頭

鼠径部痛の訴えがみられた場合、可能性としては大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)や股関節前方組織の滑走性低下、メカニカルストレスが考えられます。

前方組織で多いものとして、腸腰筋、大腿直筋起始部、大腿筋膜張筋、小殿筋、外閉鎖筋、恥骨筋などが報告されています。

これらの中でも、今回紹介した大腿直筋反回頭で疼痛を訴えられることが多いです。

例えば、反回頭は寛骨臼上縁から起始しているため、骨頭の上縁を走行しています。

そのため、股関節内転位での荷重において反回頭は骨頭上で伸張されてしまうため、滑走障害を引き起こしやすいです。

内転位荷重というのが、トレンデレンブルグ歩行の状態になるので、トレンデレンブルグの患者さんが鼠径部痛を訴えられた場合は、反回頭の滑走障害を頭の片隅に置いておくと良いですね。

また、反回頭の特性上股関節屈曲位で伸長位となるので、股関節屈曲動作において反回頭の滑走不全や伸張性低下があると伸長時痛が起きやすいです。


反回頭と力学

力学と言われると身構えてしまう方も多いと思いますが、上記で述べた内容が分かればさほど難しくないです。

要は、疼痛原因組織を予測した時に、その組織にかかっているストレスが滑走障害なのか、圧縮ストレスなのか、伸張ストレスなのかというところの考察が力学的推論にあたります。

また、ストレスがどういった状況で加わっているのかをOKC、CKCそれぞれで確認することや、そもそも構造的にストレスが加わっていないかをレントゲンなどの画像検査から予測しておくことも大切ですね。

これらを踏まえて、先ほどのトレンデレンブルグで考えていくと、

  • 患側股関節外転可動域や対側股関節内転可動域は確保されているのか?

  • 大腿直筋の伸張性は確保されているのか?

  • 体幹は側屈していないのか?

  • 外転筋群の筋力は保たれているのか?

などなど評価するポイントが拡がっていくと思います。

まとめ

長くなりそうなので、今回はこの辺りで終わっておこうと思います😅

反回頭についてまとめてみましたが、どうでしたか?

少しでも参考になったと思っていただけたのなら幸いです♪

鼠径部痛は反回頭で多いと言っても、他の組織やFAIなどの評価も欠かしてはいけません。

画像からインピンジメントを予測したり、骨盤後傾可動性低下はないのか、股関節後方組織の柔軟性低下はないのかなど様々な方向から病態を評価・予測していくことが大切です。

因みに、FAIについてはInstagramの方でまとめているので気になった方はぜひ覗いてみてください😊

FAIの記事はこちらから👆👆

それでは、今回はこの辺りでおしまいです。

今後も皆様の役に立つ情報をお伝えできればと思います。

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