マガジンのカバー画像

【連載】日本文化のはなし

63
日本文化の色々を語る連載。とりあえず隔週月曜更新にします。現状、毎週月曜日は割とこういう系の話をしています。月曜日に知的になる人。
運営しているクリエイター

#コラム

【器のはなし】手持ちの中から食器以外の陶磁器をくりだす

気分的に「人気のなさそうな器シリーズをやるのは今日じゃねえ」と思ったので、別のをやる。いつも食器ばかり見せびらかしているが、当然のように食器以外の器もある。花器くらいしか食器以外が思いつかないが、多分他にもあるだろう。酒器と茶器は食器なのか?まあ良い、本記事での「食器」は「食べ物を乗せる器」くらいに定義しておこう。 ネットの海から画像を拾うのは無断転載になるので、私は礼儀正しく私物を写真撮って載せる。じゃないとニコニコ動画のテニミュみたいに消されてしまう。 ○ さて、ま

【季語のはなし】月と蛍が夏に登場することへの理解が深まるように思う

八月ももうすぐ終わりなので、いよいよ夏の季語をやっておかないと秋になってしまう。ビールはもう秋だし、アイスすら芋になっている。早いよ、まだこんなに暑いのに。 夏の季語を全部書くのは辞書なので、人間の私は気になったやつだけ言っていきます。出典は角川書店編『合本俳句歳事記』第五版。 暑い暑いで「炎昼」はいっぱい使っていきたい。真夏の灼け付くような暑い昼のことで、夏の間ずっと外に置いたままのサンダルを思ったら炎だよな〜ってなる。新しい季語で、初出は昭和十三(1938)年らしい。

【器のはなし】帰省中なので実家の器を紹介する

二週間前の時点では夏の季語をやろうと思ってたんだけど、普通に時間がなかったので実家の器を紹介する。実家の器と言っても、私がこれ買ってよと言って承諾して買ってもらったやつ。紹介するのは古い器だけだけど、食器棚は昭和とか平成の器のが多いです。私の趣味と母の趣味が偶然重なった、そういうラインナップです。 江戸中期青磁染付流水に菊図6寸皿中期の青磁はなんか良い。重みがあるというか、なんでしょうね。このタイプは、内側の絵付けがあまり可愛くないことが多くて、どちらかというと渋い柄のを見

【器のはなし】あえて人気なさそうな器を紹介する 猪口・向付編

最近ずっと器の話をしてなくて、私から器の影が薄くなっているので、今日はあまり他の人が好まなそうな私物の器をあえてゴリ押しする回とします。手持ちの猪口・向付より五選。 ところで、先日同居人に「その向付取って」と言ったら通じなかった。通じないだろうと分かっていたのだが、それ以外の呼び方を知らないのでそう言うしかなかったのだ。私の語彙力が無い。もっとこう「カップ」とか「〇〇が入ってたやつ」とか言えばいいのに。私の体感だが、令和人に「向付」は通じない。では向付のことを知らない場合、

【古本の話】昭和の裁縫の教科書、洋裁編。話すことがないので写真多め。

教科書を読む回最後にしよう。洋裁編はあんまり取り上げるべきことがない。いや、全くないわけではなく、面白く読んではいるので所々ピックアップしていく。 簡易尺簡易尺というのがある。これはすごい。自分の体にあった服を作るために、あらかじめ自分の体用の定規を作っておくというのだ。 この教科書に出てくる型紙は、自分の胸囲を基準とした数字を使うため、簡易尺があると便利というか、無いと無理な仕様になっている。画像の(3)袖口の数字を見ると、「四分の胸囲」と書いてある。これを計算していた

【観察記録4】すかいらーくの飲茶レストラン、桃菜の器を見てきた【伝統とモダン】

すかいらーくといえばサイゼリヤ、ガストなどのファミリーレストランが有名だが、一番新しいブランド「桃菜」を知っているだろうか。私は先日ガストで知った。注文を入れるタッチパネルで宣伝されていて、「うわ〜行きて〜」と思って最寄りの店舗を調べた。今回はそれとは別の店舗に行った。 桃菜の読み方は「トオサイ」で、本場の飲茶(ヤムチャ)を飲みつつ、点心を中心とした中華メニューを楽しめる場所になっている。すかいらーくの中華と言ったら、間違いなく「バーミヤン」なのだけど、あれよりはファミリー

【古本のはなし】昭和十年の裁縫の教科書、足踏みミシン編。

あ、昨日が更新日だったことを忘れて普通に日記を書いてしまった。一日遅れるくらいなら大丈夫大丈夫。 前回の宣言通り、裁縫の教科書を読んでいく。洋服の部が案外長いので、今回は「第一章ミシンについて」だけやろう。 一応目次を載せておくが、当時の持ち主がページの間で殺した虫の死骸らしきものがペシャンコになっているので気をつけてほしい。化石みたいなもんだと思えば大丈夫。 洋服の部で扱う題材を見ていくと、子供服やエプロンなど生活に密接した物が多い。四冊あるうちの二冊目だから、一冊目

【古本のはなし】昭和十年の裁縫の教科書を読む。和服編。

先日、東京蚤の市で裁縫の教科書を手に入れた。以前より『ソーイングの教科書』を頼りに裁縫をしてきた私だが、今度は本当に教科書だ。 古本屋で税込三百円。中を見ると、「昭和十年一月十一日文部省検定済」とある。続いて、「師範学校・高等女学校裁縫科用」「実業学校家事及裁縫科用」だそうで、義務教育や普通科では扱わない教科書のようだ。 中をめくって、前書きのようなものには「これは全部で四巻あって、各学年に一冊ずつ使用するものとして教材を配当」と書かれている。ギョッとして再度表紙を見たら

【浮世絵のはなし】山鳥が鳥界のナルキッソス扱いされている

何をするか決めかねているうちに今日がやってきた。てことで今日はこれです。 新聞錦絵。東京日日新聞第三号!これの文章の部分をやる。翻刻は、高橋克彦『新聞錦絵の世界』より引用。 先に錦絵を見ておく。画面右から原田きぬ(女性)、嵐璃鶴(男性)、窓の外に商人。原田きぬは網手模様の着物に乱れた帯をしている。嵐璃鶴は三つ橘亀甲文の着物。団扇を持っていることと網手模様から夏の暑い日のようだ。手前にたばこ盆があり、嵐璃鶴がキセルを吸っている。江戸時代の喫煙率めちゃたか。 ○ さて文章

【浮世絵のはなし】「新聞錦絵」「錦絵新聞」どっちなんだ問題

新聞錦絵の回。ちょっと調べたので雑談を。前回のをなんとなく見ておくと少し良いかもしれない。 絵と文字が一体化していると躍動感が出る前回は東京日日新聞を取り上げたが、東京ではこのあと郵便報知新聞など他の新聞紙も同様に新聞錦絵が作られる。東京日日新聞は絵の中に文章が溶け込んでいるが、郵便報知新聞は文章が絵と分かれている。 郵便報知新聞の絵を描いたのは大蘇芳年という人で、実は月岡芳年のことである。高橋克彦は著書『新聞錦絵の世界』で、東京日日新聞と郵便報知新聞の構成の違いについて

【浮世絵のはなし】小鳥かと思って外を見たら先日死んだ義弟だった

新聞錦絵の回をやろう。本を読んだらやろう。ちゃんと調べたらやろう。と思っていたが、ついに本は読み終わらず今日を迎えてしまった。なので今日は「絵を見る」方に振り切って鑑賞する程度の足の突っ込み方をする。 ところで「新聞錦絵」を呼んでいたが、一般的には「錦絵新聞」と呼ぶようだ。Wikipediaがそう言っているからきっとそうなんだろう。このWikipediaページがちゃんと調べられてそうだったから、大学のレポート提出で参考文献に挙げてもいいだろと思ってしまった。 初めて錦絵新

【浮世絵のはなし】首都圏で一時間に一本の電車て。

浮世絵第二弾。個人的に文明開化の浮世絵が好きなので、開化絵を。本当は新聞錦絵をやろうとしてたんだけど、そのことをすっかり忘れて本を読んでなかったから次回以降に回すことにした。 浮世絵って江戸時代のイメージが強いけど明治もまだまだ作られていて、題材が西洋化しているそのギャップがとても好きなのよねえ。西洋髪の婦人とかドレスの婦人とかとっても好き。あと赤の色が鮮やかになっているのも良い。明治っぽい。明治は赤で決まる。 今回の出典は国立国会図書館デジタルコレクションがほとんどです

【浮世絵のはなし】こんなのもう推しグッズじゃん。ファン心理を分かってる。

ようやく回ってきた浮世絵回。普通に趣味でデータベース見て回ってたら、載せたいのが多くてブックマークがごちゃごちゃになってしまった。それくらいデータでみれる作品が多い。実際にみた方がいいものもたくさんあるのだけど、取り寄せてみる〜みたいな気軽さで触れられるもんでもないので行ける時に行くしかない。 高橋克彦『大江戸浮世絵暮らし』では、「浮世絵は芸術ではなく日常のものである」と繰り返し書かれており、なるほど確かにそうである。今回は、その中でも特にワクワク感の強い「玩具絵(おもちゃ

【芸能のはなし】シルク・ドゥ・ソレイユと日本の芸能の共通点は意外と多い

シルク・ドゥ・ソレイユ『アレグリア』公演を観てきた。面白かった……これまで何度か観てきたが、今になってようやく自分の視点を獲得することができた。今回はその話をしていく。 大道芸に近いまず演目が大道芸っぽいことに気がついた。散楽に近い。 サーカスよりも大道芸って感じだ。サーカスは動物が出てくるイメージがあるせいでちょっと違うと思っているが、もしかしたら同じかもしれない。 >物真似や軽業・曲芸、奇術、幻術、人形まわし、踊り この部分を覚えておいてほしい。「軽業・曲芸」とは