UD(ユーディー)#物書き見習い

物書き見習い。 ふとした時に思いつくままキーボードを叩いてます。 文章を書くことは自分…

UD(ユーディー)#物書き見習い

物書き見習い。 ふとした時に思いつくままキーボードを叩いてます。 文章を書くことは自分のことをちょっと知ってもらうこと。 たまに自分の趣味の話とか、本や映画の感想を書くかも。 自分の好きを表現してみたいです。 登山、クライミング、写真、動画、人、自然、映画、音楽。

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サンバのリズムと七夕の風

「なにひとついいことなかったこの町に」 その曲はこの歌詞でAメロが始まっていく。 けれど、歌詞の中でネガティブな歌詞はこのワンフレーズしかない。 明るいサンバのリズムにラテンのグルーブを掛け合わせたこの曲は 終始ある一言に帰着する。 「風になりたい」 僕にとってのこの曲の思い出を少し語ってみたい。 父と母は趣味でジャズをやっていた。 どちらもサックス。 父はアルトサックス。 母はテナーサックス。 幼少期、二人の趣味に付き合わされていた僕は、 日曜日にはその練習会に連れて行か

    • Netflix版 「火花」 第8話

      ドラマ、映画をこれまでみてきて、こんなにも涙を流した作品はなかった。 なぜここまで泣いてしまったのか。 これを整理するために書き留める。 第1話から7話まで。 主人公の徳永。 徳永が慕う師匠の神谷。 これの周りの人間の物語。 漫才という世界において、自分の理想を追い求めていた徳永。その前に現れた神谷は徳永にとって自分の追い求める漫才そのものだった。 漫才の権化、理想像、憧れ、願望。 様々の感情の入り混じる羨望の眼差しで神谷をみた徳永は弟子入りを申し出る。 神谷の一

      • 眠りから覚めた街

        気がつくと、静まり返っていた国道には仕事へ向かう車で溢れていた。 眠りから覚めた生き物の血の流れのように、道路には多くの車が動き出している。 街が目を覚ました。 その流れの一台となって僕も進んでいる。 しかし、僕はまだ眠りから目覚めたわけではない。 眠る街を眠らずに進む。目を覚ました街で眠りにつく為に。 谷間を登っていく国道には、逃げ道を失い流れに身を任せるだけの車が遠く見えなくなるまで並んでいる。 薄暗く、日の光のが入らない道路はゆっくりと進む渋滞もろとも薄暗い陰鬱な

        • お月見と団子

          毎月のお月見の時期がきた。 月に1回の満月の夜。 月がよく見える外に出かけて団子を食べる。 その日の気分で団子を変えるけれど、大体お供はあん団子。 あん団子には心を安らかにする効果があるのだ。 僕はその月を振り返りながらお月様に報告をするのだ。 何かやらかしたら、お仕置きされそうな気がして。 10月の月、ハンタームーン。 冬に備えて、狩猟を始める季節に上がる満月をアメリカの先住民はこう呼んだという。 国や時代が違くとも、見上げるとそこにある月に思いを馳せるのは人間の性なのだ

          「つきあう」のかたち

          私は彼女に釘付けになった。 桜も散りかけた季節の高校の入学式、集合写真の時に私の隣に座っていた彼女は、とても可愛くて、大人びてて、中学からあがったばかりの私たちよりも遥かに垢抜けて見えたのだ。 出席番号がひとつ前の可憐という言葉がとてもよく似合う女の子。 そんな彼女と友達になりたいと、私は心に誓った。 どんなきっかけでもいいから、お近づきになるぞと。 しかし、肝心の彼女があまり学校に来ないのだ。 入学後に始まる各種イベントで、出席番号順という特権を使ってアプローチをかけよう

          自由“の”時間

          誰もいないしんとした時間。 皆が寝静まった時から始まる一人の時間。 この時間が僕にとっての自由の時間。 自由"の"時間が始まる。 電車の終電の後、暗く灯りの灯っていない駅前で自由の時間が始まった。 どこからとも無く集まってくる人々は、各々自由の時間を満喫している。 昼間に何かに追われていた彼らは、自由を求めてこの時間に出てくる。 駅前で大騒ぎする者もいれば、恋人への溢れんばかりの想いを伝えているカップル、暗くなったショーウインドウに向かってダンスの練習をする若者。 皆、自分

          月を追いかける。

          月。 地球から形がくっきりと見える地球以外のほし。 そして地球にはなくてはならない地球に寄り添い続けるほし。 生き物の関わりや、地球との関わりが深い月は話し出したらあまりにも壮大になってしまうので割愛するが、僕にとっての月はそんな壮大なものでも、心の拠り所でもなんでもない。 月に一回、満月をぼーっと眺めながらお団子を頬張ることが僕にとっての月の存在価値である。そしてそれは最高に無駄な時間を満喫できる至福の時間でもあった。 しかし、今月の月はそうはいかなかった。 毎月のお月

          夜のドライブ

          最近、仕事終わりに1日頑張った自分へのご褒美としてドライブに行く。 けれど行き先は事前に決めない。 その時見たい景色や、走ってみたい道が思い付いたらそこに行く。 でも、大体見たい景色は見れないし、走りたいと思う想像の道はそこにはない。そんな時でも僕はドライブに行く。 ある時、東京タワーが見たくなって走りに行った。 東京タワーをまじまじと見たのは初めてだったかもしれない。 60年以上前から東京の街並みに立ち続ける橙色の人工物は、僕のような素人には考えもつかない複雑な構造をして

          駅前の消火栓の看板。 ここには僕のお気に入りのラーメン屋の看板が入っていた。 自炊をする自分のご褒美として週末に必ず通っていたラーメン屋。 通うごとにメンマが増えたり卵一つ多く乗っていたりと、 寡黙な大将が常連たちへのサービスとして、小さいけれど幸せなトッピングをしてくれる、愛されるこじんまりとしたラーメン屋だった。 そのラーメン屋の看板がなくなってしまった。 空を切り取るだけの枠はそこにあったはずの「モノ」が無くなったことを強調し、そして看板の存在を知らなかった人にとって

          世界を切り取る理由

          カメラ。 それは自分の世界を切り取る魔法のアイテム。 切り取ったものを何に使うかは、人それぞれ。 誰かに共有する人、自分の思い出としてしまっておく人。 作品として発表する人、後世に残すべく世界を切り取り続ける人。 何に使うかは人それぞれ。 僕はちょっとだけ違った。 もちろん思い出として切り取ることはあるけれど、僕が世界を切り取る理由はファインダーを覗いた先にいる人にあることを伝えるためだ。 彼女は鏡が嫌いらしい。 昔から彼女の部屋には鏡がない。 洗面台にも、風呂場にも。

          まる

          大雨で電車が遅れてきた お昼には帰るはずだった今日の予定は、雷雨の勢いに流されてしまった 少しの間止んだ雨を縫うように駅まではなんとか辿り着けた 久々に傘をコンビニで買ったのだ 駅までは傘の列に流されて、雨を避けられる駅に入った 改札口では、慌てた風貌のサラリーマンが電話の先にずっと謝っている 電話をかけ終えて、項垂れた背中は哀愁が漂っていた ホームでは、学生たちが楽しそうに話をしている 自分達のカバンを中心に置き、まるで儀式でも始めるかの如く並んでいる 呪文のよう

          土砂降り

          「外出れないじゃん!」 そう叫ぶ彼女の開けたカーテンからは、重力を無視したように降る大粒の雨 時折聞こえて来る地鳴りのような音は家からそとへ出る気力を一気にかき消していく。 気力を削ぎ落とされた彼女は、ソファーにうなだれるように腰掛け今日の予定の終わりを憂いていた。 今日の二人の有休は全て自宅で消化されることになりそうだ。 僕はいつも自宅で消化しているけれど。 窓ガラスを眺めては百面相をしていた彼女は諦めがついたのか、本棚を漁り始めた。 一つ手にとってはペラペラと読み、戻

          彼女は時々寝言を言う。 はっきりと、けれど支離滅裂な単語の羅列を寝言で言うのだ。 彼女は夢を見ているのだろうか。 彼女はどんな夢を見ていたのだろうか。 彼女のみていた夢を見てみたい。 朝彼女にふと聞いてみた。 「今日の夢はどんな夢だった?」 彼女は言う。 「今日の夢はいい夢だった」 彼女は続ける。 「私は子供で、迷子になってた」 迷子とはあまりいい夢ではないだろう。 「迷子の時はまるで誰もいない世界に取り残されたようで、私は不安でずっと泣いてた」 「けれど、お巡りさんが見つ

          SEX for BreakFast 

          「今日なにしよっか」 トーストを貪る彼女が言う。 起き抜けに僕のシャツを奪い、髪の毛はボサボサのまま、微睡んでいる頭にカフェインを流し込む。 僕はといえばトーストを奪われたのでキッチンでトースター相手に勝ち目のない睨めっこを挑んでいる。 焼けたベルの音に合わせて飛び出した食パンは惚れ惚れするほど香ばしくも甘い匂いを振まいてきた。 思わずその香りにうっとりしてしまったので、今日も睨めっこは僕の負けだ。 「今日どうするの?」 トーストを食べきりコーヒーを啜る少し冴えてきた彼

          今敏を追って #3

          夢を見ている。 まだ夢を見ているのだ。 白昼夢のように監督の作品が頭のメモリを喰らい続ける。 監督の作品では「虚実」の色が収束した時、登場人物は新たな自分を形作りその先へ進んでいく。 これが「実」の自分なんだと、自らに言い聞かせるような一言で映画は収束する。 そしてその収束する台詞がトリガーとなり、僕はまた監督の「虚」の世界に引き戻される。 もう一度あの台詞に至るまでを追体験してみたくなるのだ。 こうしてまた僕は夢を見る。 監督は夢を見続けていたのではないか。 自

          今敏を追って #2

          今敏監督の作品にあるテーマ。 それは「虚実」の交錯。 「虚」は視点により「実」となり意味を成す。 「実」は視点により「虚」となり意味を成さない。 複雑に絡み合う「虚実」が作品の終わりに向かい交錯し調和しながら進んでいく。 「現実と虚構の交錯」を大きなテーマあげている作品が多くあり、これは監督の人生のテーマでもあったのではと今では感じている。 監督の人生という視点で一つ一つの作品を見ると、また今まで見てきた作品に新たな意味が見出せる。 夢を見ること。 監督の作品をを見