今敏を追って #3

夢を見ている。

まだ夢を見ているのだ。

白昼夢のように監督の作品が頭のメモリを喰らい続ける。
監督の作品では「虚実」の色が収束した時、登場人物は新たな自分を形作りその先へ進んでいく。

これが「実」の自分なんだと、自らに言い聞かせるような一言で映画は収束する。

そしてその収束する台詞がトリガーとなり、僕はまた監督の「虚」の世界に引き戻される。

もう一度あの台詞に至るまでを追体験してみたくなるのだ。
こうしてまた僕は夢を見る。

監督は夢を見続けていたのではないか。
自分のイメージを形作りたかったのではないか。
「虚」の世界を描くための方法としてアニメを作り、世に送り出してきた。
もちろんそれはどの監督も同じであろう。

しかし、今敏という監督は見せることだけではなかった。
世界を作り出し、「実」とし深みを作る。

その世界は深くまで潜れるモノとなり、ひとつひとつに意味を見出せる。
僕らの頭の中で夢となり生きて動き出す。
画面の向こう側の世界ではなく、見ている世界が一滴ずつ頭の中に落ちてくる。画面に映っていないはずの世界が頭の中で広がっていく。
水面に滲んでいく絵の具のように。

はっきりとした輪郭がぼやけ視界はその色に染まる。
そこに次の色が落ちる。
カオスな色の組み合わせは新しい色となり視界を染めていく。
そしてまた新しい色が落ちてくるのだ。

白昼夢から覚めると世界は形を取り戻している。
けれども認識の外はまだあの滲んだ色に染まっている。
滲んだ色を見つけるとまた僕は夢に引き戻されるのだ。

#4に続く?

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