画家某氏へのラブレター

【戯作オード】　

ode
西洋の詩の一形式
美や勇気など崇高な主題を叙情的に歌う
頌歌しょうかと訳される

古代ギリシャからある文芸の伝統

『モンマルトル大通り』 カミーユ・ピサロ (1897)

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あなたの描く絵　世紀末
モンマルトルの　濡れた午后ごご
パリの憂愁　ひと知れず
雨だれ歌う　ジムノペディ

あなたの描く絵　印象派
古きよき時　想わせる
マネモネピサロ　シスレーの
いろどりひそむ　筆づかい

あなたの描く絵　白のあや
光まぶしく　あざやかに
影きわだたせ　濃きいろに
天使の梯子　われ照らせ

あなたの描く絵　刹那いろ
動物静物　雪月花せつげっか
街灯さえも　切なくて
まほろば見しか　夢うつつ

あなたの描く手　魔法の手
あぶらカタブラ　色と線
この身いつしか　いざなわれ
画中のカフェで　カプチーノ

あなたの描く手　活写の手
うさぎぽつねん　そこにいる
ミネルヴァ離れ　ふくろうは
今その肩に　憩いしや

あなたの描く手　才ある手
絵と詩のこころ　うらはらに
メランコリック　リリカルに
うつく美しのわざ術　表して

あなたの描く手　王たる手
アート糜爛びらんす　当世は
伝統やどす　者をまつ
おもむけ画士よ　覇道へと

はじめ一幅　おぼろ月
雲間きりさく　サンテクスSaint-Ex
邂逅かいこうするや　ひとめぼれ
声も御髪みぐしも　知らねども

ただこいねがう　自愛あれ
鉛白いろ「ｼﾞｮｳﾞｧﾝﾆの白」に　留意あれ
カムパネルラと　消えぬよう
あなた彼方の空へ　消えぬよう

完

『モンマルトル大通り・夜』 カミーユ・ピサロ (1897)