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【片隅に生まれて】#865


私の住んでいる所は大変な田舎で
バス停までも歩いて40分ほどかかる
1番近い家でも100m近く離れている

同じ集落には家が5軒だけ

だから学校に通うにも1時間半ほどかかる

人が少な過ぎる


休みの日に街まで遊びに行くにも
自転車で20分
駅に1時間に一本の汽車にのり
三つ目の駅で急行に乗り換えて1時間50分ほどかかる

要するに2時間かかる
最終電車も早く19時迄には街を出ないといけない

その街と言っても一地方都市
大した物は無い
やたらパチンコ屋はあるのだが
さびれたデパートと大手ファストフード店が数店
それ以外はパッとしないジジババのお店が並ぶのみ

だから
遊ぶったって大してやる事もなく
ファストフード店で友達と何時間も入り浸りお喋りして
ボロボロのゲームセンターでUFOキャッチャーとプリクラする程度

洋服とかそんなのが欲しい時は
友達と泊まりがけで他県のもっと栄えた街まで行く
でもそんなの出来るのってゴールデンウィークと夏休みと冬休みと春休みの時だけ
それ以外はあのパッとしない街に繰り出すしか無い

街に出ても人が少ない
大体の顔ぶれは同じ

寂し過ぎる

だから若者は出て行くしかない



私も高校を卒業し介護系の専門学校に通う為に大阪に出た

大阪は修学旅行で一度行った事がある

その時よりまた更に派手になった気がする

ビックリするくらい人が居る
ギュウギュウだ
息が詰まりそうになる

でもワクワクする
キラキラなお洋服がいっぱいある

介護系の専門学校に入学したけど
実は進路先なんてどこでも良かった
頭がそんなに良くなかったから
大学は無理だったし
なんか手に職がついてた方が良いかなって思って
仲良かった友達が大阪の専門学校に行くって行ったから
それだったら私もって
そんな感じの軽い気持ちだったから
別に何の専門学校でも良かった

友達は美容師になりたいという
確固たる目標があったから
美容師の専門学校に進んだ
私はそんな彼女と同じ専門学校に行ったら劣等感感じそうだったし
手先が器用では無かったから
同じ専門学校には行かなかった

その代わりマンションは同じにした
階は違うけど
その方が親も安心だったみたいだし


私はお洋服を買ったりいっぱい遊びたかったから直ぐに居酒屋でアルバイトを始めた

最初はバイトと学校と一所懸命に通ってたんだけど
眠くて授業について行けなくなって
休みがちになった
休んでると学校から頻繁に電話やメールがきてたけど無視してた

バイトだけはちゃんと行った

1年が経って私は学校を辞めた
友達は学校の特待生になりイギリスへ1年間留学が決まったからマンションを解約した

私は田舎には帰りたく無かった
あんな何にも無い所に帰っても何もする事がない

だから私は親を説得してそのまま大阪にとどまった


バイトはそのまま続けている
同じバイト仲間の服飾系の専門学校に通うヤスと付き合い始めた

ヤスも地方出身で大阪に出てきている

私はヤスの影響でロック系のファッションにどんどん変わってきた
音楽もそれまで聴いていたR&Bからロックへと好みが変わった
完全にヤス色に染まった

ヤスはバンドもやっており
ライブには必ず行った
他のメンバーとも仲がいい

ただボーカルの男だけはちょっと苦手だった
ヤバめって言うのかな
いつも目が座ってるし
私にはあまり話しかけてこない

でもヤスはボーカルと一番仲がいい


バンドの打ち上げで居酒屋で飲んだ後
まだ騒ぎ足りないのか
他のメンバーは帰って行ったけど
ヤスとボーカルと私の3人でカラオケBOXに行った

そこで酒飲んでまた大騒ぎして
夜中の1時を過ぎた頃
ヤスは寝落ちしてしまった

気まずい空気が流れた

ボーカルは私にマイクを持たせた
そして自分もマイクを持ち話し始めた

「なぁ
ヤスと週に何回くらいセックスしてんだ?」

マイクをひざに置き

「なんでいきなりそんな事聞くの?」

するとマイクを指さした

何となく怖いから従った

「なんで聞くんですか?」

「別に良いじゃん
で週に何回くらいするんだ?」

「えっ
えっとぉ3回くらい」

「3回?
少ねぇなぁ
俺だったら毎日するぜ」

何も答えなかった

するとマイクをアレに見立てて

「これもするのか?」

「そりゃまぁ…」

なにこの尋問

「私ちょっとトイレ行ってくる」

そう言って部屋を出た
このまま帰ろうかしら
でもヤスが居るし

仕方なく私は部屋に戻ったら
新しいレモンサワーが来ていた

またマイクで

「おかえりぃ
景気づけにパッと飲んじゃえよ」

「ええっ!」

「マイクマイク」

「飲むの?」

「さっき迄飲んでたじゃねぇかぁ
飲めよ」

ヤスこんなにうるさいのによく寝てられるわね

私は諦めてレモンサワーを飲んだ

その後もボーカルは下の話ばかりしてくる
私は適当にかわしてたんだけど

急に睡魔が遅い意識が薄らいだ
完全に寝てる感じじゃないんだけど
思考も低下し身体の自由も効かなくなった

マイクが床に落ちる音がした


ボーカルは私の上に覆い被さり
キスをしてきた
私は理解するのにスゴく時間がかかった
キスをされたのを理解しやめてほしいと思ってもチカラが出ないし
そう思っている時にはもう上半身を捲り上げられ
胸を触られていた

思考が低下しているのに
何故か快楽だけはオンタイムでやってくる
感じたく無いのにもの凄く気持ちがいい

息が乱れている

不覚にも今日はスカートだったので
簡単にパンツをずり下ろされ
私の股間に手をやった

私は身体に電撃が走った

何この気持ち良さ
手でちょっと触れただけなのに

最後は生で入れられた

全然途中まで気が付いていなかったが
ボーカルが私の口に手を当てていた

私の喘ぎ声がうるさかったのだろう


誰かが横に立っている

あっヤスだ
ヤス助けて
ヤス

その声は何故か出なかった
代わりに喘ぎ声が出るばかりだ

ヤスは笑っていた

どうして?

グルだったの?

ヤスはそんな人じゃない

これは夢なんだ
そうだきっと夢に違いない


次に気が付いた時には
部屋にボーカルとヤスはおらず
代わりに救急隊員と警察官が居た
警察官に話しかけられたが
うまく答えられなかった

私は担架に乗せられ運び出された


ヤスとボーカルはその後警察に捕まった
警察からの話では2人はやはりグルで
ヤスが私から逃れる為にボーカルと一緒に犯行に及んだそうだ
最後に飲んだレモンサワーからは麻薬が検知され
私の尿からも陽性反応が出た

2人は私だけではなくバンドのファンにも同様の手口でクスリを飲ませて犯行に及んでいたそうだ


私はバイトを辞め
家も引っ越しして
実家には帰らず
東京に出た

東京は物価も高く中心部には住めず
府中という所のアパートに引っ越しした

あの事件で精神疾患を発症し
精神科にお世話になりながら
アルバイトをし
なんとか生活をしている

友達も居ない
1人の東京
夜はラジオを聴いて過ごす
テレビよりラジオの方が何故か寂しくないのだ




ほな!

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