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短歌№91-

17
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我々が
恋人である
証明は
どこにもなくて
皮膚の下にも

昼に見た
石榴の粒の
紅を
深夜ひとりで
身に纏う悦

あなたとは
拭いきれない
傷跡が
色褪せるくらい
傍にいたんだ

未熟さの
色はまだまだ
知らねども
悲しい青に
染まらぬように

午前4時
星空の中を
発車した
座ってるロング
シートはひとり

煩悩の
音は凍てつく
空に溶け
暗闇と混ざる
白く吐く息

文字を消す
透ける下敷き
空に向け
知れたらいいな
答えと進路

一階の
ピアノをぐるりと
囲んでは
螺旋を登る
エスカレーター

山の尾の
寺を繋いた
うねる道
青龍のごとく
船を見下ろす

降った手は
名残をそっと
掴んでた
遠く離れて
いかないように

宿屋にて
ちびりちびりと
やりながら
あしたの私へ
地図を書き込む

YOASOBIの
『夜に駆ける』を
高らかに
歌う子供ら
陽だまりの午後

まだひろく
知られてなかった
あの歌が
昨日歩いた
街を染めてた

足元を
さらう潮(うしお)が
跳ね返す
きらりきらりと
太陽の音