パブリアス

歴史・政治・法学がメインの読書子。イングランド、アメリカ、古代ギリシャ、ローマに関心が…

パブリアス

歴史・政治・法学がメインの読書子。イングランド、アメリカ、古代ギリシャ、ローマに関心があります。たぶんトクヴィル推し。noteは勉強メモですが、当面、木庭顕先生を扱う予定なので、内容には偏りがあるかもしれません。たぶん全25回くらいを予定。文章力のなさはご容赦ください。

最近の記事

#14 「大文字のクリティック」-ユダヤ・キリスト教との対抗①

0.はじめに『クリティック再建のために』を、第2章まで通読しました。第3章は斜め読みですが、問題意識をかなりの程度、汲み取ることができたように思います。 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000356080 本来は、繰り返し読み込みうえで、また文献案内(あとがき)でも言及されている、『政治の成立』『デモクラシーの古典的基礎』や『人文主義の系譜』にも照らし合わせ、検証を深めてから、何かを述べるのがベストかとは思います

    • #13 信託は二流の控え選手?

      今回のテーマは「信託」です。 代理、不法行為法に続く、「法」のトピックです。必然的に占有(法の原理)、そしてbona fides(契約法の原理)との関係が問題となることが予想されます。 当初は、ローマ法の「信託」類似の制度と現代の「信託」の比較を行うことを想定していました。 しかし、『新版ローマ法案内』では、信託に比せられるローマ法の制度(fiducia、等)の記載は短く、手掛かりが少ないことに気づきました。一般のローマ法に関する書籍の方が、具体的な制度内容については詳

      • #12 占有か過失か-不法行為法

        本日のテーマは、不法行為法となります。 ちなみに今回より、本ブログの「,.」という表記は「、。」に変更します。たまに「,.」の表記の本もあり、なんとなくそれで始めたのですが、先日、文化審議会が取りまとめ、文部科学大臣に建議した「公用文作成の考え方」の中では、読点は「、」を用いることが原則とされています(「。」はもともと「。」でしたが)。先日、ニュースにもなりました。 さて、前置きはこれくらいにして、まず木庭先生の言葉から、日本の不法行為法を概観し、またそれを批判する部分か

        • #11 誰のために代理は生まれた

          今日は「代理」という具体的なテーマを通じて,「ローマ法」と「英米法」を対比させてみたいと思います. これまで第6回で,ローマ法と英米法について取り扱いましたが,総論的な話だったので,もう少し具体的なトピックを考えてみるという主旨となります. ローマ法から英米法への影響は当然認められるとしても,発想やアプローチの仕方に無視できない差異がある,と言ってみても,は抽象的なので,例えば「代理」という制度を通じて比較してみた方が,その差異をより明らかにできると思った次第です. 事

        #14 「大文字のクリティック」-ユダヤ・キリスト教との対抗①

          #10 デモクラシー探訪序説

          二週間,記事を書けていませんでした.行事の秋は,土日に予定が入ってしまうと,すき間時間にパソコンに向かっても,なかなか文章がまとめられません. ただ,このままでは間が空いてしまいそうなので,今日は簡単に「デモクラシー」論について記事を上げてしまって,次につなげたいと思います. 最近『共和主義者モンテスキュー : 古代ローマをめぐるマキァヴェッリとの交錯』(定森亮著,慶應義塾大学出版会)を読んだので,少しそこからも引用します.やや我田引水というか,ちょっとアイデアを拝借する

          #10 デモクラシー探訪序説

          #9 カタバシスをカタバシスする(都市と公共編①)

          タイトルだけでは何を言っているのか,また何か続き物になるのか,よく分からない本日の投稿です(笑).検索には引っかからないと思うので,SEO的にはセンスがないですね. カタバシスと題した書籍は二つありますが,『憲法9条へのカタバシス』は第2回記事でも触れましたが,今日はもう一つの『現代日本法へのカタバシス【新版】』(みすず書房,2018年)を取り上げたいと思います. 『現代日本法へのカタバシス』の存在を知ってもらえれば,それで半分くらいの目的は達したかなと思います(?).同

          #9 カタバシスをカタバシスする(都市と公共編①)

          #8 第7回までを振り返って

          今日はこれまでの振り返りを行おうかなと思います. 木庭先生の著作の,言葉の分量と密度,そして分厚い教養の蓄積に戸惑ったにもかかわらず読み進めることで,逆に生まれてきた批判的,自律的な思考と省察ーー. なんていうほどのものではないですが,実はこれまでの記事については,公開してから,後悔している(?)というのが正直なところです.検討の至らなさや視野の狭さを痛感しています. さて,今日は,そうした公開(後悔)してしまった記事が,予定ではおよそ三分の一くらいに達した段階なので,

          #8 第7回までを振り返って

          #7 占有と人権の距離

          2018年「占有宣言」?皆さんは,高校の世界史などで,「人権宣言」について聞いたことがあると思います.広く人権を謳う文書を言うこともありますが,具体的な歴史上の文書である,フランス人権宣言,世界人権宣言,あるいは「バージニア権利章典」などを指すこともあります. その一つであるフランス人権宣言は,一般に次のように解説されています. フランス革命初期、1789年8月26日、国民議会で採択され、「1791年憲法」の前文となった宣言。正式には「人間および市民の権利宣言」。根本の思

          #7 占有と人権の距離

          #6 ローマ法と英米法の距離

          今週はお休みの予定でしたが,せっかく連続4週間書けたことから,今週もまた書けるかも,という思いから,筆をとっています(キーボードを叩いています). どれだけニーズがあるか分かりませんが,木庭顕先生の著作をもとに,「政治」「デモクラシー」「法」について考えるというコンセプトで,当分続けていきたいと思います. 木庭先生が現役の大学教授だった頃は,授業を受けている学生さんに,「こんな風に理解できるかも」といった,「ゆるふわ」(?)なアプローチを示す意味もあったかもしれませんが,

          #6 ローマ法と英米法の距離

          #5【番外編】スピノザとホッブズの対抗に見る「政治」概念の解体

          今日はちょっと趣向を変えて,福岡安都子先生の『国家・教会・自由 増補〔新装版〕スピノザとホッブズの旧約テクスト解釈を巡る対抗』を取り上げたいと思います. 福岡先生は今,「東京大学 大学院・総合文化研究科 准教授」を務めています.東大では憲法の授業なども担当されているようです. 『国家・教会・自由』は,かの木庭先生も「学問の一つの頂点」として紹介しており,ぜひ手に取ることを勧めている著作です(それもできれば英語版で!『誰のために法は生まれた』p.304). 今日はその内容

          #5【番外編】スピノザとホッブズの対抗に見る「政治」概念の解体

          #4 政治概念の「欠如と過剰」

          今回は引き続き「政治」のトピックです. Twitterでは,「ディアレクティカ」の〈脆さ〉とか,人文主義の〈偏り〉について語ります,なんて予告しましたが,そんな大それたことを言えるのでしょうか⁉ 政治の成立と密接な関係にある「ディアレクティカ」.そして背後に控える「人文主義」.そのような人類の知的遺産に立ち向かっても,ただのドン・キホーテに終わる可能性大です(笑). ただ,木庭先生の言っていることを鵜吞みにしていればよいかというと,そうではないでしょう. まずは理解す

          #4 政治概念の「欠如と過剰」

          #3 都市の成立と公共空間

          皆さんご存じの通り,木庭先生の業績の中では,「法(占有)」の探求は,三部作の一番最後に位置付けられています. これまで2回ほど,「占有」について扱いましたが,先行するトピックとしては,「政治の成立」「デモクラシーの基盤」に関する議論があります. 「政治の成立」に関わる論点は,多岐にわたります.ごく簡単に概要をつかむためには,『誰のために法は生まれた』(朝日出版社,2018年)の「種明かしのためのミニレクチャー」(p.290以下)が一番手軽だと思います. また『新版ローマ

          #3 都市の成立と公共空間

          #2 憲法9条と占有とホッブズ

          集団的自衛権を巡って今回の憲法9条に関する投稿を書きながら,集団的自衛権をめぐるあの騒ぎは,もう7年以上前の出来事なんだな,と感慨深く感じました. 政府は1日夕の臨時閣議で、集団的自衛権を使えるようにするため、憲法解釈の変更を決定した。行使を禁じてきた立場を転換し、関連法案成立後は日本が攻撃されていなくても国民に明白な危険があるときなどは、自衛隊が他国と一緒に反撃できるようになる。「専守防衛」の基本理念のもとで自衛隊の海外活動を制限してきた戦後の安全保障政策は転換点を迎えた

          #2 憲法9条と占有とホッブズ

          #1 占有でなければ保護されない?

          ある一つの判例木庭先生の『誰のために法は生まれた』(朝日出版社)では,第5回,日本社会を論じた最後の章で,ある一つの「判例」が紹介されています. それは「自衛官合祀訴訟」と言われる事件の判決です.概要は,「殉職した自衛官を山口県護国神社に合祀した行為が、信教の自由を侵害され、精神の自由を害されたとして遺族の女性が、合祀の取消し請求を求めた訴訟。」(Wikipedia)とされています. 訴えた側の「原告」である遺族の女性は,交通事故で亡くなった自衛官の奥さんです.それに対し

          #1 占有でなければ保護されない?

          #0 思索と収穫とー木庭顕を素材としてー

          一読書子として,感じたことー学び,発見,思索,そして疑問-を書き記しておくことには,一定の意味があると感じている今日この頃. 思いつきは思考となり,それは時間とともに変化し,そして忘れられ,あるいは蓄積されていく.その繰り返しが,日常だと思う. モレスキン(Moleskine)を使ったことはないけれど,ヘミングウェイやピカソは,肌身離さず持っていて,アイデアを書き留めていたといいます.霊感(インスピレーション)は,突然やってきて,また去っていくものなのでしょう. 前置き

          #0 思索と収穫とー木庭顕を素材としてー