2021年1月の記事一覧
「小説 名娼明月」 第47話:門演(かどづけ)の身
長屋の盲女(めくらおんな)から聞いたる三味線門演(かどづけ)のことを、その夜お秋は種々思案してみた。
「かくまで窮迫した身で、どうして贅沢が云えよう? 飢えたる者は食を撰ぶの隙はない。幸い自分は三味線ならば一通りは弾ける。三味線の門演でも仕事には相違ない。思い切って門演を行(や)ってみよう!」
と、雄々しくも心を極めたが、
「このことが母上に判っては許されまい。よし許されたとしても、却
長屋の盲女(めくらおんな)から聞いたる三味線門演(かどづけ)のことを、その夜お秋は種々思案してみた。
「かくまで窮迫した身で、どうして贅沢が云えよう? 飢えたる者は食を撰ぶの隙はない。幸い自分は三味線ならば一通りは弾ける。三味線の門演でも仕事には相違ない。思い切って門演を行(や)ってみよう!」
と、雄々しくも心を極めたが、
「このことが母上に判っては許されまい。よし許されたとしても、却